「ちょっとこれ……なにごと?」 「あぁ、夕飯……の下ごしらえをしていたつもりなんだけど」 リモートでの仕事を終え、階下に降りてみれば、切り刻んだ野菜らしきクズがスリッパの下で潰れる感触…… 「下ごしらえか、なるほど……」 キッチンから飛び出した野菜のヘタや皮が、リビングの床にも転がっている。 その種類から、サラダと煮物を作ろうとしていたのがわかった。 「そっか……手伝うよ。私も多少は料理できるから、一緒に作ろう」 どんなに失敗しても、面倒なことをされても、それすら愛しい毎日が始まった。 会えなかった日々、会えるかどうかもわからなかった日々を思えば、このくらい何でもない。 危なっかしい手つきで野菜の皮をむく蓮を、ヒヤヒヤした気持ちで見つめながら、凛花は蓮に聞こうとしたことを思い出した。 「そういえば蓮さん、私のT シャツ知らないかな?胸元にハートが描いてあるやつなんだけど」 明日は出勤する予定の日。 朝になってバタバタしたくないので、着るものを決めておこうと服を出しておこうとした。……が、お気に入りのTシャツが見つからない。 「着心地のいいTシャツでよく着てたんだけど、どこいっちゃったかな」 「あ、それなら……」 立ち上がった蓮は、今一緒に寝ている父の寝室に入っていく。 出てきた手に握られていたのは、捜していたTシャツ…… 「蓮さんが持ってたの?」 「あぁ、少しでも凛花を感じながら眠りたくて」 片手を口元にやり、少し照れた様子に心臓が跳ね上がる…… なんて可愛らしい……そしてピュアな愛情表現なんだろう。 「ありがとう……それならこれは、蓮さんが持ってて」 1度抱きしめてからTシャツを差し出すと、蓮は嬉しそうに受け取る。もちろんその頬はほんのりバラ色…… 「私も、蓮さんの服と一緒に寝たいな」 「あ、じゃあ……持ってくる」 もう一度寝室に引き取り、グレーのTシャツを持ってきてくれた蓮。 「今、1度着て、脱いだばっかり」 ほんのり人肌のTシャツを笑顔で受け取りながら、元は父親のTシャツだったと気づく凛花。 まだ人間に戻って日が浅く、彼自身の服はまったくないから仕方ないんだけど……少しだけ何をやってるんだか、と思う自分がいた。 やがて……サラダと煮物、だし巻き卵といった夕食が出来上がった。 勤務時間のこともあり、
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