「冷水で抑えることはできるけど、彼女はあまりにも細すぎるし、それに女性だ。そんなことをすれば、体にかなりの負担がかかってしまうから、あまり勧められないな」と、策は首を振った。「薬を使わないんだったら、残る方法はただひとつ。鍼治療だ」そう言いながら、策はもうすでに携帯を取り出していた。「鍼は俺のばあちゃんが専門だ。でも、ばあちゃんは足が悪いから、俺らがばあちゃんの千石鍼灸院へいく必要がある」海斗は即座に命じた。「千石鍼灸院へ向かえ」掛け布団で凛を包み込み、頭だけを出した状態にすると、海斗は軽々と横抱きにした。「案内しろ」その姿を見ていた策は呆気にとられた。こいつは、女嫌いじゃなかったのか?小声で理央に聞く。「この女性は一体誰なんだ?」「凛さんです」理央は後を追いながら、拓海にメッセージを送った。【森田さん、社長と策先生が凛さんを千石鍼灸院へ連れて行きました】策はしつこく詮索する。「名前じゃなくて、社長との関係を聞いてるんだよ」「今は社長と秘書の関係です」理央が溜め息をついた。「いいから早く案内してくれませんか?」「気になるんだから、しょうがないだろ?ただの秘書に、社長がそこまでするなんてさ」理央はもう相手にしなかった。一行が専用エレベーターに乗り込んだ時、ちょうど智也たちも入れ違いで上へ上がっていった。凛は蚕の幼虫のように、布団の中で身をよじり、甘い吐息を漏らし続けている。海斗は思わず彼女の口を覆ったが、手のひらが凛の唇に触れた瞬間、抗いがたい情動が彼の中を駆け抜けた。まるで火傷をしたかのように、慌てて手を離し、代わりにハンカチでそっと彼女の口元を押さえた。これで少しはましになっただろう。そうしているうちに、凛の目隠しが外れた。潤んだ瞳と再び目が合い、海斗の心臓がどきりと跳ね、無意識のうちに唾を飲み込んだ。慌てて手を伸ばし、再び彼女の視界を塞ぐ。凛が瞬きをするたびに長い睫毛に手のひらをくすぐられ、何だか心が落ち着かない。隣に座っていた理央は、社長のただならぬ気配を察し、息を潜めていた。助手席に座っていた策は、ミラー越しにいつも冷静な海斗が、凛を落とすまいと必死に身を硬くしている様子に呆れて見ていた。海斗の表情は、見たこともないほど張り詰めている。策はにやりと意味あり
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