柚葉に理由は分かっていた。そんなの、凛が日和を送ったきり、未だに戻っていないからに決まっている。智也は凛のことで苛立っているのだ。だから自分に対しても、声を荒らげた。柚葉は危機感を感じた。だが、それ以上言葉を続ける勇気もなく、ただ智也の背中に回した腕に力を込める。「智也。私、寂しかったの。ぎゅってして?」智也は玄関の方に視線を向けた。凛が急に戻ってきたらどうしようと心配する反面、凛に帰ってきて欲しかったのだ。智也が自分を抱き締めてくれないことに焦りを感じた柚葉だったが、自分にはまだ価値があることを思い出した。「智也、あのマイクロチップ開発プロジェクトのデータがあるの。欲しい?お祝いのパーティーに参加できること、楽しみにしてるから」……翌日。凛はいつも通り早起きをし、日和に朝食を作って書き置きを残すと、竹内グループへ出勤した。拓海は海斗と共に出張に出ていたため、オフィスには凛と恵だけ。だから凛は、恵の分まで朝食を用意していた。恵が凛の作った朝食の写真をインスタに投稿する。【同僚からの差し入れ】その瞬間、【海斗さんがあなたの投稿に『いいね!』をしました】との通知が、恵の携帯に届いた。え?恵は自分の目を疑った。それは海斗からされた初めての【いいね!】だったから。恵がなんだか意味深な視線で自分を見ていることに気づいた凛は、不思議そうに尋ねた。「どうかしたの?」「何でもない」恵は首を振り、嬉しそうに朝食を頬張った。昼休み、凛は智也がいない隙を見計らって自宅へ戻り、荷物を取ってきて、とりあえずオフィスに置いておくことにした。それも、恵に迷惑がかからないよう、自分のデスクの下に置く。だが、昼休憩を終えオフィスに戻ってくるなり、何かに気づいた恵。「なんだかいい匂いがする。何だろう?なんていうか、甘辛いような匂い……谷口さんにはしない?」足元に目をやった凛は、恵に言った。「実は、ある所の特産品が届いて。もしよかったら、食べてみる?」「いいの?」恵の目が輝く。凛は、甘辛いお菓子が入った袋を取り出した。「そんなに辛くないと思う」恵はそれを受け取ると、すぐに口へと放り込んだ。瞬時に甘辛い旨味が口に広がる。またすぐに、新しい投稿をする。【同僚がくれた地方の特産品。またまた美味し
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