凛が用意したのは、イタリア風シーフードスープをはじめ、アボカドとガーリックシュリンプの和え物、オレンジ風味の手羽先、パイナップル入り酢豚、かぼちゃとトマトのミートソースパスタ。さらに、アスパラガスの牛肉巻き、厚切りサーロインステーキ、イカとパプリカの炒め物、マテ貝の塩胡椒炒めが並ぶ。そして最後の一品は、生ハムとブッラータチーズのサラダだった。薄切りにした生ハムを花のようにくるくると巻き、チーズの周りに丁寧に飾っていた凛だったが、ふとその手が止まった。このような盛り付けは、智也が好きだったから、以前彼のために学んだものだった。海斗が視線でどうしたのかと、問いかけてくる。凛は小さく首を横に振り、巻いたばかりの花を全て崩した。海斗は意味深な眼差しで凛を見つめたが、何も言わなかった。「終わったか?」「はい、できました」すると、海斗が最後の一皿を持って、キッチンを出て行った。その背中を見送る凛の胸には、形容しがたい違和感と、強い切なさが渦巻いていた。谷口家で過ごした4年間、智也は一度もキッチンに足を踏み入れたことはなかったし、ましてや皿を運ぶことなどあり得なかった。凛はゆっくりとエプロンを外し、ダイニングテーブルへと向かう。その時ふと、海斗が持ってきてくれたフルーツの籠が目に留まったので、凛が手を伸ばすと、海斗も同時に手を伸ばしたらしく、二人の指先が空中でかすかに触れ合った。凛は手を引いた。「俺がやる」海斗は籠を手に取り再びキッチンへ戻ると、戸棚から真っ白な磁器の皿を取り出し、洗ったばかりの果物をきれいに盛り付ける。予定されていた食事の時間よりも30分早く準備が終わった。まあ、ランチとしては悪くない時間だろう。海斗が最初に箸をつけたのは、ステーキだった。凛は思わず彼に視線を向ける。「日和さんからもらった資料だと、社長はミディアムが好みだと」「日和がわざわざ君に会いに来ていたのは、俺の好みを伝えるためだったのか」海斗はステーキを上品に咀嚼し、次々と口へ運んだ。彼が満足していることは、聞かなくても分かった。満足してもらえたのなら、借りを返せたと言えるだろう。二人が静かに食事を続け、料理が半分ほどになった頃、凛の携帯が震え、菜々子から午前の講座が終わったという通知が入った。ちょうどその頃
Read more