柚葉は海外で研究していた頃、研究費の獲得競争の厳しさに何度も頭を抱えた。実験データに問題が出れば、まず設備の不具合を疑い、そのたびに家へ資金援助を頼もうと考えていた。彼女の両親は大学教授で給料もいい。そのおかげで生活に不自由したことはなく、海外留学中も恵まれた環境で暮らしていた。だが、研究となれば話は別だった。研究費として必要になる金額は、一度に数千万円単位に及ぶことも珍しくない。いくら両親の収入が高くても、個人で支えられる額には限界がある。柚葉は、次に英樹へ電話をかけた。英樹も孫娘の研究は応援していた。だが、あまりに巨額の援助をすれば、他の親族たちの不満を買ってしまう。英樹はどちらかと言えば、理論面や技術面での支援をしていた。いずれ後継者になってほしいと願っているからこそ、研究に対しては非常に厳格だったのだ。だが、柚葉はそんなものは求めていなかった。そんな折、正人から智也が出世街道を突き進んでいると聞き、柚葉は智也に目を付けたのだった。柚葉を愛していた智也は即座に多額の金を研究費として送金し、それ以降も毎月決まって6000万円を振り込むようになった。そのおかげで、柚葉の留学生活は何一つ我慢することなく進められたのだ。その金で数々の設備や材料を買い揃えたが、研究所の会計記録にはすべての支出を記さねばならない。いつの間にか彼女は、研究所における出資者という扱いになっていた。金は湯水のように使った。明細書など気にしたこともなかったが、月に6000万、1年で7億超え。少なくとも4億は研究費に充てていたはずだが、実家にそんな大金があるわけがない。英樹を加えたとしても、毎年7億も用意できるはずはないため、もし勘のいい人物がこの資金の出所を追及してきたら、それは面倒なことになる。それが国内であれば、なおのこと。智也は既に結婚している。もし凛がこの事実に気づき、夫婦共有財産として返還を求めたら、勝てる見込みは薄いうえ、面目は丸潰れだ。だが、対策を練っていないわけではない。「智也からの個人的な投資」と主張すればいいのだ。それでも、柚葉はその明細を取り寄せた覚えはなく、メールボックスにも届いていなかった。立ち尽くしたまま愕然とする。受信箱を探ってみるが、自分で送ったメールの痕跡も、相手から送られてきた明細表も一切見当
Baca selengkapnya