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第176話

مؤلف: 歓乃
凛はすぐに踵を返し、社長室の扉を閉めた。

自分がつい口を出してしまったことに、凛自身も驚いていた。

だが、凛は海斗なら自分の意図をきちんと理解してくれると信じていた。あとは竹内グループの実力と、研究所側の判断次第。入札の結果がどうなるかは、もう誰にもわからない。

海斗はじっと探るような目で凛の背中を見つめていた。

凛は理恵のもとへ向かった。

すでに準備していた理恵は退職の書類を受け取り、凛のシステム上のアクセス権限を、一つずつ削除していく。

全て片付いた頃には、ちょうど夕方の5時半になっていた。

ネームカードを返そうと差し出すと、理恵はそれを受け取らずに言った。「持ってたほうがいいと思いますよ。だって、1ヶ月も竹内グループのために働いたんですから。それと、これからはどうするんですか?いい仕事先を紹介してあげますよ。それも高待遇のやつを」

「ありがとうございます、中村さん。でも、今のところは大丈夫ですので」

「困ったらいつでも電話してくださいね」

「あの、中村さん」凛は携帯を取り出す。「ライン、交換してもらえませんか?今までお世話になりましたので」

「もちろん」理恵
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    もし策がここにいたら、海斗がこれほど礼儀正しく自分から挨拶をすることに、腰を抜かすに違いない。海斗といえば、誰もが知る御曹司だ。彼が現れれば誰もがすぐに立ち上がり、「竹内社長」そうでなくとも「海斗様」と向こうから挨拶してくるのが普通だった。だから、海斗自身が先に他人へと声をかけることなどまずないのに……今夜は異例中の異例だ。凛は以前、海斗と一緒に接待の席へ出たことがあった。その場では誰もが海斗を中心に動き、彼を立てていたし、海斗自身もどこか人を寄せつけないような傲然とした態度を取っていた。だからこそ、こんなにも紳士的で礼儀正しい彼を目にして、思わず面食らってしまった。杏や雅美は年上だからともかく、年下である梓にまでこの態度とは。「竹内社長、お世話になっております」梓はすぐさま立ち上がり、緊張した面持ちで挨拶をした。「高木梓です。凛さんの後輩です」海斗は頷いた。「凛さんの後輩か」座っている面々を一瞥すれば、全員が凛の先生や後輩といった、名だたる顔ぶればかりだった。さらに、克哉と梓に至っては、あの交流会にも参加していた。「竹内社長、どうぞ座って」「ありがとうございます、二宮教授」海斗が着席すると、仁がすかさず食器を差し出す。そして、杏はこう付け加えた。「今日は肩書きなど忘れて。みんな凛の友人として食事を楽しんでいるだけだからね」心中には疑念も憶測もあるだろうが、ここでそれを口にしてはならない、そういうことだと海斗は察した。互いに言葉を交わさずとも、意思は通じている。杏と克哉は満足げに視線を交わした。頭の切れる相手は話が早くて助かる。「先輩!先輩も早く座ってくださいよ。全然食べてないじゃないですか」梓が凛を促した。凛が椅子に腰を下ろすと、耳元で海斗が呟いた。「食事の邪魔をしてしまったみたいだな」しかし、謝罪の気持ちなど微塵も感じられない。凛は横目で海斗をちらりと見た。分かってるなら、それでいい……そう思いながらも、表情には一切出さず、何でもないような顔で言った。「竹内社長も、召し上がってください」食事の間中、梓はずっと二人の様子を窺うように視線を向けていた。彼女が海斗と凛の関係を知りたくてたまらないのは、誰の目にも明らかだった。たとえ退職していなかったとしても、社長が部下の家にくるのは普通

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