凛が松ぼっくりの風鈴を鳴らしていると、インターホンが鳴った。モニターに映っていたのは、腕を組んでカメラを見つめる少し不機嫌そうな日和の姿だった。凛は少し驚いた。昨日から今日まで、日和からのメッセージが一つも届いていなかったからだ。ドアを開ける。目の前に立った日和は、怒っているのか呆れているのか分からないような目で凛を睨んでいたが、漆黒の瞳をくるりと回すと、驚きと喜びが混じった笑みをぱっと咲かせた。「凛さん!もう、本当に最高じゃないですか!」日和は喜びのあまりその場で地団駄を踏み、大きく手を広げて凛を抱きしめた。少し強く抱きしめられて凛は息が詰まりそうになったが、日和が本気で怒っているわけではないと分かり、そっと笑みを浮かべる。「連絡もなかったから、怒ってるのかと思ったよ」日和はため息をひとつついてから凛の手を離すと、ソファーの方へ歩き出した。「教授のせいなんです。凛さんに関する報道をチェックしてたのに、急に呼び出されたと思ったら、さっきまでずっと研究室に閉じ込められてたんですから」凛は彼女の隣に腰掛け、パックジュースを差し出す。日和はそれを一気に飲み干すと、キラキラした瞳で凛を見つめた。「凛さんと最初に出会ったとき、論文を見てもらったじゃないですか。その時から『タダ者じゃない』って思ってたんですけど、まさかこんなに凄かったなんて思いませんでしたよ。昨日はうちの家族全員がひっくり返るほど驚いたんですからね!それも家族のみんな、お兄ちゃんを褒めるどころか、凛さんのことしか話題にならなかったんですよ」大げさすぎる気がして、凛は静かに笑った。「あ、そうだ。凛さんの元旦那さんと愛人さんが捕まったって噂、本当ですか?もしそうなら、景山グループが情報操作して外には全く漏れないようにしてるってことですよね?」「本当」と凛は頷く。「でも、智也は嫌疑が晴れて出てきたわ。柚葉はまだ出られないみたいだけど」マイクロチップ開発プロジェクトに関わっているため、少しでも動きがあればすぐに関係者から、凛のところへと連絡が入っていた。そしてちょうど今、柚葉が弁護士と面会しているという知らせが届いた。神谷利明(かみや としあき)が鞄を手に警察署に入り、柚葉と面会していた。10時間以上拘束されていた柚葉はもう疲労困憊で、昨日
続きを読む