凛が採血を受けていると、携帯が鳴った。海斗からだった。「海斗」と凛が名前を呼ぶと、電話越しの海斗だけでなく、凛の採血をしていた医師もハッとして彼女を見上げた。しかし、凛はそれに気づいていない。「美穂子さんから君が柊病院にいると聞いたんだけど、谷口の見舞いか?」海斗の声は低く、どこか冷たかった。凛は自分の肘の内側の静脈から、真空採血管へと、自分の血が次々と吸い込まれていくのを見つめた。「違う。今、採血してるの」「採血?」海斗の声に少しだけ緊張が走る。凛は淡々と答えた。「うん。さっき偶然にも凄いことを知っちゃって。安心するために、感染症の検査を受けてるの。あ、採血が終わって押さえないといけないから、電話切るね」電話越しに「わかった」と短い返事が届いた。電話を終えた凛は、携帯をコートのポケットにしまい込み、採血が終わった場所を、コットンで押さえた。凛が指先でコットンを押さえていると、医師が結果は一日か二日後にわかるので、また診察に来るようにと言った。「わかりました」と返事をし、待合席に腰を下ろして血が止まるのを待つ。凛が腰を下ろしてすぐに、一人の中年女性の医師が歩いてきて、すれ違うスタッフたちも彼女に「千石主任」と頭を下げていた。そしてその女医は白衣のポケットに手を突っ込み、優しい笑みを浮かべながら凛の前に立った。「凛さん?」凛は少し驚いて立ち上がる。「はい、そうですけど」「私は千石霞。竹内社長からあなたの様子を見てくるようにって頼まれてね」海斗の名前に、凛の瞳が揺れた。「はじめまして。千石先生」凛は女医の胸元にあるネームプレートに視線を向ける。千石霞(せんごく かすみ)皮膚科。主任。霞が採血窓口の方をちらりと見て言った。「感染症の検査を受けたの?」凛が頷くと、霞は採血担当の看護師と言葉を交わし、再び凛の元へ戻ってきた。「私の診察室へ行きましょう。竹内社長ももうすぐ来るはずだから」「海斗が来るんですか?」凛は驚きを隠せなかった。霞が優しく微笑む。「ええ」言われるがまま霞について行く凛に、霞が言った。「私の息子、策っていうんだけど、知ってるよね?」「策先生?」凛は確かに衝撃を受けた。霞が自分の診察室の扉を開けて、凛を中へと促す。「夫も私も仕事が忙しくて。それに、こ
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