柑奈から見れば、海斗にもいかにも経営者らしい一面はある。ただ、育ちのよさを感じさせる品格が、それを目立たなくしているだけだ。「どうして茂さんが政界を離れてビジネスの道に進んだのか、当時何があったのか、それは私にも分かりません」柑奈が知っているのは、すべて母から聞いた話だし、その母にしても、小さな施設の院長にすぎないため、知り得ることには限りがある。少し考えてから、柑奈は続けた。「そういえば母が、神谷さんは結婚したのは早かったのに、子供ができたのは遅かったって言ってました。確か、30歳近くになってからだったはず。もしかしたら家庭の事情があったんでしょうか。でも、それで政治家を辞めるというのも不思議ですね」海斗が頷く。「茂さんが29歳の時に息子の利明が生まれ、31歳の時に娘の美雪が誕生しているんです」「当時なら、確かに遅いほうですね」「ということは……」凛が口を挟んだ。以前会った、穏やかで物腰の柔らかな茂を思い浮かべる。「茂さん、もうすぐ60歳ですね」すると、海斗が言った。「今年、還暦祝いをする」凛は少し驚いて続けた。「50歳くらいだと思ってた」「奥さんの彰菜さんも今年54歳だけど、かなり若く見える。茂さんも身なりには気を遣ってるからな」海斗の母親である瑶子も今年49歳だが、驚くほど若々しい。日和と二人で出かければ、姉妹どころか双子に間違われることさえある。美雪と彰菜も同じだった。ただ、二人が似ていると言う者はいない。海斗はふと、何かが引っかかった。何かがおかしい。霧の向こうに答えがあるような気がする。あと少し手を伸ばせば、その正体が見えそうなのに、今はまだその糸口がつかめない。他人の家庭の事情のため、結局それ以上は話さなかった。憶測だけで踏み込む話ではない。凛が立てていた今日の予定では、午後は柑奈と康平を動植物園へ連れていくことになっていた。最初は遊園地も考えたが、康平は人が多く騒がしい場所が苦手なため、比較的落ち着いて過ごせる動植物園のほうがいいだろうと考えたのだった。チケットは凛が用意していたが、海斗の分までは手配していない。当日券が残っているか確認しようとしたところ、海斗が何食わぬ顔で自分のチケットを取り出した。凛から予定表を受け取った直後、恵たちがすべて手配していたのだ。昼食を済ま
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