半分ほど閉まっていた寝室のドアの隙間から、凛がまず目にしたのは、すっと伸びたあの蘭だった。一瞬、はっと息を呑んだが、そのまま続ける。「ここが、私の寝室です」柑奈は軽く部屋を見渡すと、微笑んだ。「あなたが子どもの頃に描いていた絵と、そっくりね」凛は小さく頷く。柑奈の前にいる時の凛は、いつもどこか素直でおとなしい子どものようになる。傍らで見ていた海斗には、今の彼女が妙に愛らしく映った。猫を抱きしめて、思いきり構いたくなるような感情に襲われる。柑奈と康平がソファに腰を下ろし、お茶を飲み始めたので、海斗は邪魔をしないよう帰ることにした。それでも、視線だけはずっと凛を追っている。ここまでしてもらった以上、凛としても海斗を見送らないわけにはいかない。海斗と一緒に外に出て、玄関のドアをしっかり閉めたその瞬間、海斗が振り返り、またしても狭い空間へ追い込まれた。この後の予定を直接聞くのではなく、海斗はこう尋ねた。「予定表は作ったのか?」そんな聞き方をされたら、凛に答えられるのは「作った」か「作ってない」のどちらかしかない。「作った」「俺にも送れ。君はまだ免許も車もないから、いちいちタクシーを呼ぶのも面倒だ。あのセンチュリーなら登録も済んでるし、俺が運転手をやる」教官の次は、運転手までやるつもりらしい。凛は海斗と目を合わせないよう顔を横へ背ける。「配車アプリですぐ呼べるから大丈夫」「大丈夫?」海斗が一歩近づき、二人の距離がまた一気に縮まった。大きな影と、男の温かな気配が迫ってきたが、凛は身体を強張らせながらも、譲らない。「本当、大丈夫だから」「俺が運転してやろうか?それでも、大丈夫って言うなら……今ここで君にキスするからな」凛の瞳が大きく見開かれた。この人、ほんとに……海斗が顔を伏せ、少しかすれた低い声で囁く。「俺が運転してやろうか?」今にも唇が触れそうになり、凛は慌てて答えた。「お、お願い!運転お願いするね!」「君が言ったんだからな」と、海斗が低く笑う。その笑い声には、人を惑わせるような妙な色気があった。「今送る。あとで気が変わったなんて言われたら困る」凛は内心むっとしながらも携帯を取り出し、予定表のスクリーンショットを送った。「送ったよ。海斗、少し下がって」熱い。海斗はじっと凛を見つ
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