凛の心に、一瞬だけ異様な感情が生まれたが、すぐに冷静さを取り戻し、優雅に軽く会釈をした。海斗は喉を鳴らした。体を曲げた際にも、視線の端でずっと彼女を追い続けていた。音楽が止む。盛大な拍手が沸き起こった。智也は人だかりの中で呆然と立ち尽くしていた。周りの皆が、海斗の横にいる女性は誰かと噂をしている。相手が誰であれ、海斗がダンスの相手に選んだということは、この女性が海斗にとって大切な存在であることには変わりがない。柚葉は智也の背中を見つめた。智也が嫉妬しているのがわかる。智也の心の中には、やはり凛がいるらしい。柚葉は奥歯を食いしばった。正人も拍手をせず、顔をしかめてその様子を眺めていた。智也は今回、二人の女の間で大変なことになるだろう。どちらが選ばれるかは、結局どっちがより彼を夢中にさせられるか次第だな。それにしても、自分が一番割を食う気がする。これから先、もし二人が同じ場に揃ったら……いったいどんな対応をすればいいんだ?そんなことを考えていると、同伴していた女性に正人は怒られた。「まだ見てるの?竹内社長の女まで気になるなんて」「誰が竹内社長の女だって?」と正人は諭す。「こんなことは、智也の前で言うなよ。ほら、俺らも行こう。主役がもう踊り終えたんだから、次は俺たちの番だろ?」凛と海斗がダンスフロアを去ると、止まっていた音楽がまた流れ始めた。人々は思い思いにダンスをしたり、会話を交わしたりして、パーティーは和やかな雰囲気で進んでいる。智也がこちらに歩いてこなければ、全てが問題ないのに、と凛は思った。「小林さんは足を怪我しているんでしょう?見てあげなくていいの?」凛は智也に先制攻撃をかける。赤ワインを飲んでいた海斗の指が止まった。グラスに触れる唇の端が、にやりと弧を描く。隣に座る日和も、笑いそうになるのを必死にこらえていた。「それってどういう意味だ?」智也の眼差しが鋭くなった。「友達思いのあなたなら、もっと彼女を大切にしてあげるべきじゃないかなって思って」凛の目は濁りがなく、智也もそこから一切の疑いを感じ取れなかった。「わかってる」智也はジャケットを脱ぎ、凛の肩にかけた。「凛、あまり肌を見せない方がいい」凛はようやく気づいた。彼はまさに、やった本人が被害者ぶるタイプ。つまりは、モラハラ気
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