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第89話

Auteur: 歓乃
柚葉の笑顔が引きつる。

しかし、拓海は目を細めて笑った。「先ほど、妹さんは小林さんのことを、未来の義姉だと仰っていた気がするのですが。本日の交流会が終わる頃には、お二人がお似合いのカップルだと、多くの人が噂していましたよ」

「谷口社長と松田英樹の孫娘が恋人同士?」翼が眉をひそめた。「なら……」凛はなんだというのか?

「茅野先生」克哉が被せるように言った。「夜も遅いですし、お疲れでしょうから、そろそろお戻りになった方がよろしいかと」

翼は頷く。「ああ、そろそろ行くとするよ」

智也と柚葉は道を空けた。

翼を護衛するように皆で出口まで送り、車に乗り込むのを見送った。

涼太は車に乗るとすぐに聞いた。「爺ちゃん、なんで松田先生の名前が出ただけで怒ったの?それに、孫娘にまで冷たい態度を取るなんてさ。今夜、小林さんに媚を売ろうとする人が、いっぱいいたのに」

「奴らに関わるのはよせ。松田の腕は確かだが、人を育てる才能はいまいちだ。下の奴らのほとんどが半人前ばかりなのに、プライドだけは一丁前に高い。だから、人の手柄を横取りして自分たちのものにしてばっかりなんだよ。

以前から自分の子供を
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    裁判官は厳かな表情のまま、裁判員と合議に入った。その間も、柚葉の視線は何度も凛の顔を突き刺すように向けられていた。しかし、凛はまるで気にも留めない。背筋を伸ばし、わずかに顎を上げ、ただ静かに裁判官と裁判員を見つめている。光を受けて輝いている正面に掲げられた裁判所の徽章。傍聴席にいる人々もまた、緊張した面持ちで判決を待っていた。合議が終わり、裁判官が判決を告げる。「審理の結果、被告谷口智也は、婚姻期間中に被告小林柚葉と不貞関係にあり、夫婦共有財産である多額の財産を一方的に無償で譲渡していたことが認められる。かかる財産処分行為は、夫婦共有財産に対する一方的な処分であり、また公序良俗に反するものであることから、その効力を認めることはできない。また、被告小林柚葉が提出した投資契約書については、実際の投資活動や資金使用状況を裏付ける証拠がなく、同契約に基づく正当な取得であるとの主張には、事実上および法律上の根拠が認められないため、採用しない。被告谷口智也は、婚姻期間中の不貞行為に加え、長期間にわたり夫婦共有財産を隠匿・移転しており、財産分与において重大な責任を負う有責配偶者であると認定する。主文。第一、被告谷口智也が被告小林柚葉に対して行った財産の贈与行為は、すべて無効とする。第二、被告小林柚葉は、本判決確定の日から15日以内に、被告谷口智也から受領した24億円、ならびに不動産、車両、宝飾品その他一切の財産を返還せよ。第三、被告谷口智也は、婚姻関係における重大な有責配偶者であり、かつ夫婦共有財産を不当に移転した者であるため、財産分与において取得分を認めず、対象財産は原告の取得分とする。第四、本件訴訟費用は、被告らの負担とする」法廷に静寂が広がった。崩れ落ちるように椅子へ座り込んだ柚葉。その顔はもう真っ青だ。当初は23億6000万円の返還請求だったのが、家や車、宝石まで返すことになった。車や不動産、宝飾品を売れば23億6000万円を何とか用意できると思っていたのに。今では、24億円に加えて車や家の返還まで……これまで何かが起こるたびに、柚葉は自分を守ってくれる祖父や両親に頼ってきた。しかし今、震える体で傍聴席を見渡しても、誰もいない。祖父はいない。両親もいない。柚葉は絶望したように座り込

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