「……お前が血の繋がった妹じゃないと分かった以上、本当の妹が見つかれば、当然その場所は返してもらう。だが、二十年間兄妹として暮らしてきた情もある。お前を警察に突き出すような真似はしない。その代わり、今日からカードも小遣いも全て止める。これからは自分の力で仕事を見つけて、自活しろ」そう冷たく言い放つと、凛はふらりと身を震わせた。そして、彼女の手が無意識のうちに、自分の下腹部へと優しく添えられたのだ。「お兄ちゃん……分かった。私、頑張って仕事を探す。お兄ちゃんの言う通りにするよ。でも……これからも、お兄ちゃんのこと、『お兄ちゃん』って呼んでもいい……?」高城家から放り出されて財産を失うことよりも、自分との絆が切れることを一番に恐れるその健気な姿に、駿大の冷え切っていた表情がほんのわずかに和らいだ。ふと彼女のお腹に視線を落とす。まだ目立たないが、そこには新しい命が宿っているのだ。駿大は深々と、痛ましげなため息を吐いた。「……もういい。妊娠している体で、ろくな仕事なんか見つかるはずがないだろう。とりあえず、郊外の別荘に移って出産に専念しろ。仕事を探すのは子供を産んでからでいい」---駿大の回想を聞き終え、和真は押し黙っていた。「とりあえず、今俺たちが最優先すべきは、本当の妹の行方を探し出すことだ」駿大はソファから身を起こし、真っ直ぐに和真を見た。「ただ……凛からは何の手掛かりも得られなかった。あいつもあの事故に巻き込まれて気を失っていた被害者の一人に過ぎないからな。結局、当時の事故の記録を洗い直すしかない。和真、お前の力も貸してほしい」和真は、その言葉を聞いても一切表情を崩さなかった。駿大の口ぶりから、彼が凛に対して『相応の罰』を与えるつもりなど毛頭なく、なあなあのまま事態を穏便に済ませようとしていることは明らかだったからだ。……ふざけるな。膝の上で、和真の拳がギリッと強く握り込まれた。僕のみぃちゃんは?みぃちゃんは、今どこでどうしている?まだ生きているのか?それすら分からないというのに、あの偽物の女だけがぬくぬくと保護されるというのか。「……随分と甘い処置ですね」和真は氷のように冷たい声で、チクリと刺した。「駿大さんからは、血の繋がった実の妹の安否を本気で心配しているようには見えませんが」
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