だが、あの偽物はどうした?大破した車を見て、すぐに救急車を呼ぶこともせず……あろうことか、車内にいた『本物の妹』を引きずり出し、ゴミ捨て場に遺棄したのだ。そして自分自身が車に乗り込み、『奇跡的に助かった高城家の令嬢』として救助を待っていた。偽物がそんな工作に時間を費やしたせいで、両親は助かるはずの命を落とした。そして本物の妹は、ゴミ捨て場に捨てられ、二度と家に帰れなくなったのだ。――あの、女ァ……ッ!!全ての点と線が繋がった瞬間、駿大の奥底から噴き出したのは、常軌を逸したドス黒い殺意だった。三つの命を弄んだ悪魔。高城家を破滅に追いやった、全ての元凶。「駿大さん……」真実に気付き、同じように顔面を蒼白にさせている和真が声をかけた時、駿大はギリッと凄まじい音を立てて奥歯を噛み締めていた。怒りのあまり唇を噛み切ったのか、彼の端正な口角からは、一筋の赤い血がツーッと流れ落ちていた。二人は車を降りると、冷え切った夜気の中、周囲を見渡した。二十年の歳月は、この場所の景色をすっかり塗り替えていた。当時は街灯すらまばらな一本道だったはずだが、今では周辺に店舗や住宅が立ち並び、すっかり生活の匂いが根付いている。深夜でなければ、これほどの高級車と黒服の男たちがぞろぞろと集まっている光景は、間違いなく近隣の騒ぎになっていただろう。二人は無言のまま歩き回った。脳内で当時の現場写真を重ね合わせ、あの忌まわしい『ゴミ捨て場』がどのあたりにあったのかを必死に特定しようとする。だが、無駄だった。二十年という歳月は残酷なまでにすべての痕跡を消し去っている。妹が放り込まれたであろう冷たい暗闇の場所など、今は見る影もなかった。こうなることは、来る前から分かっていた。それでも、来ずにはいられなかったのだ。そうでもしなければ、駿大は狂ってしまいそうだったから。失意のまま車へと歩を戻す駿大の指先は、無意識のうちに首元のペンダントトップを強く、肉に食い込むほどに握りしめていた。それは、亡き両親が兄妹にお揃いで誂えてくれた、特注のアンティーク・ロケット。駿大のものは太陽を、妹のものは月をモチーフにした銀細工だ。『太陽と月のように、二人で高城家を照らしてほしい』――そんな両親の温かい願いが込められていたはずだったのに。まさか、こんな
Read more