4月に入ったばかりの土曜日、午前10時。 雲1つないよく晴れた休日の朝だった。 リビングの大きな窓からは明るい日差しが差し込み、磨き上げられたフローリングを四角く照らしている。「ママ、みてー! たかーい!」「わあ、すごいね。陽菜ちゃん、上手に積めたね。一番上に赤いブロックを乗せてみる?」「うん!」 私はプレイマットの上に座り、3歳になる娘の陽菜と一緒にブロックを積んで遊んでいた。 陽菜は小さな両手で一生懸命に赤いブロックを掴み、背伸びをするようにしてタワーの一番上にそっと乗せる。 無事にブロックが乗ると、彼女はぱあっと花が咲いたような笑顔を見せ、短い手を叩いて喜んだ。 その愛らしい様子に目を細めながら、私は手元にあるスマートフォンへと視線を落とした。 画面には、インターネットのブラウザアプリが開かれたままになっている。 検索履歴に並んでいるのは、「共有財産の分割」「ペアローン 解消方法 揉める」「モラハラ 証拠の集め方 録音」といった言葉の数々だ。 あの醤油まみれの皿が割れ、黒い塩の雨が降った食卓の夜。 あの日を境に、私の頭の中は自分でも恐ろしいほどクリアになっていた。 彼らを理解しよう、理解してもらおうという甘い期待を完全に捨て去ったことで、思考のピントがぴたりと合ったのだ。 今の私にとって、和也は生涯を共にするパートナーではない。 いずれ法的な手続きを経て決別し、慰謝料と財産をきっちり回収すべき「相手方」でしかなかった。「……ふう」 息を吐き出しながら、ブラウザのタブを切り替える。 休日の朝だというのに、夫である和也はまだ2階の寝室から降りてこない。 平日は「仕事で疲れている」と文句を言い、休日は「せっかくの休みなんだから寝かせろ」と昼近くまでベッドにへばりついているのが彼の日常だった。 私は天井を見上げて、冷ややかな視線を送る。 今日も順調に、育児放棄という名の証拠を積み上げているわね。 そう心の中でつ
Last Updated : 2026-04-22 Read more