香奈さんの目には、実の兄に対するはっきりとした軽蔑の色が浮かんでいた。「呆れて言葉も出ませんね。自分の家が壊されて、自分の娘が泣かされているのに、ゲームで徹夜したから寝ている。完全に父親としての責任放棄です」 香奈さんがそこまで言い切った時。 ソファの上で暴れていた甥っ子たちが、ようやくリビングの入り口に立っている人物の存在に気がついた。「あ……」 兄の方が、手に持っていたクッションを取り落とした。 弟も動きを止め、目を見開いて香奈を見つめている。「香奈おばちゃん……」「なんでここにいるんだよぉ」 それまで我が物顔で家の中を破壊し、暴言を吐いていた彼らの態度が、嘘のようにピタリと止まった。 彼らは知っている。 香奈は親戚の中でも、絶対に自分たちを甘やかさない。 パチンコ狂いの母親は怒らない。 祖母は何をしても褒めてくれる。 和也おじちゃんはゲームばかりで注意しない。 ……真由美おばちゃんは召使いだから、言うことを聞く必要なんかない。 しかし香奈さんだけは違う。 悪いことをすれば絶対に容赦しない。 一番怖い存在であることを、彼らは過去の経験から学習しているらしい。 香奈は彼らに一瞥もくれず、まっすぐにローテーブルへと歩み寄った。 録画状態のままになっている私のスマートフォンを覗き込んだ。 画面には、壁紙を剥がす彼らの姿から、陽菜が突き飛ばされた瞬間の映像まで、すべての音声とともに記録されているはずだ。「お義姉さん。これ、最初からずっと回していたんですか」「ええ。私が言葉で注意しても、彼らは『ばぁばが何してもいいと言った』と聞かなかったので。証拠を残すために録画ボタンを押しました」 香奈は短く頷いた。「素晴らしい判断です。お義姉さん、録画はもう止めて大丈夫ですよ。器物破損と暴行、それに管理責任の放棄を証明するには、十分すぎるほ
最終更新日 : 2026-05-02 続きを読む