Todos los capítulos de 元夫の目は節穴?名門令嬢が電撃再婚!: Capítulo 371 - Capítulo 380

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第371話

湊は驚いた顔をした。「え、は?お前、いつからそんなに他人の恋愛事情を詮索するようになったんだ?」景は平然と答えた。「彼は、絃葉が仕事で深く関わっているパートナーだからだ」湊は片方の眉を上げ、意味ありげに笑った。「なるほどな。それなら、気をつけたほうがいいな」彼は景の肩を軽くたたいた。「彼は今も独身だし、人柄も能力も申し分ない。絃葉が毎日一緒に仕事をしていたら、いつ心を動かされてもおかしくないからな」景の胸は重く沈んだが、表情には少しも出さなかった。「そんなことはない。俺は絃葉を信じてる」口ではそう言いながら、湊に背を向けると、すぐに佳樹へ電話をかけた。「細谷グループへ一人送り込んでくれ。会社での絃葉の動向はすべて把握しておきたい。特に細谷蒼生とのやり取りは、細かいことまで報告させろ」電話の向こうで、佳樹が眉をひそめた。「社長、恋敵でも現れたんですか?」景は眉間にしわを寄せた。「......」――絃葉はしばらく多磨城に滞在した。一方、景は4日前には京城へ向かっていた。京城で進めていたプロジェクトに緊急の問題が発生し、直接対応する必要があったからだ。何年も多磨城へ帰っていなかった絃葉は、悠と二人で多磨城周辺の街を巡り、各地の名物料理をほとんど食べ尽くした。さらに近くの古い町並みへ出かけ、着物姿で写真を撮り、そこでもさまざまな郷土料理を楽しんだ。ある日の夜。夕食を終えると、祐一郎は絃葉だけを書斎へ呼んだ。祐一郎は大きな執務机の前に座り、深い眼差しの奥に心配をにじませていた。絃葉は何かを察し、背筋を伸ばして立った。「おじいちゃん、何かお話があるの?」祐一郎は言いにくそうに口を開いた。「2日後に株主と経営幹部を全員集め、会議を開く予定だ。慎重に考えた末、いくつか決断したことがある。お前にも受け入れてもらいたいと思っている」絃葉の鼓動が速くなった。「決断って?」祐一郎は一度言葉を切り、ゆっくりと告げた。「西尾グループの事業を、大きく二つに分けることにした。一つは多磨城の伝統的な自動車部品事業を中心とする部門、もう一つは海城の新興産業を中心とする部門だ。それぞれを、お前と健二に任せるつもりだ」絃葉の胸に緊張が走った。「おじいちゃん――」祐一郎は手
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第372話

祐一郎は、ひどく意外そうな顔をした。幼い頃から穏やかで優しく、それでいて何事にも自分の考えを持っていた孫娘を見つめていると、まるで若い頃の自分を見ているようだった。長い間考え込んだ末、彼はゆっくりと口を開いた。「絃葉......」絃葉は身を乗り出した。その眼差しには、無意識のうちに人を圧倒するような強さが宿っていた。「おじいちゃん、私はこの挑戦を受け入れます。でも本来、これは私が背負うべき責任ではなかった。そのことは、おじいちゃんも分かっているでしょう?血のつながった家族を大切にしたいという、おじいちゃんの気持ちはわかってるわ。でも、突然現れた家族を私が警戒してしまうことも、分かってほしいの。おじいちゃんが私のために、これほど大きな事業基盤を築いてくれたことには感謝している。ただ、そこには父の心血も注がれている。それに......母の持参金も」祐一郎は驚愕し、孫娘を見つめた。「当時のことをすべて知っているのか?」絃葉は大きく息を吸い、苦い笑みを浮かべた。「6年前、母方の叔父が私を訪ねてきて、真相を話してくれたの。当時、メイヨ自動車部品工場が借りていたのは、母方の祖母の実家が所有していた土地だったのよね。母が結婚したあと、その土地は持参金の一部として、格安の値段でおじいちゃんに譲られた。まさか、その後これほど地価が高騰するとは、誰も思っていなかった。母方の祖父母が相次いで亡くなると、叔父の家は没落してしまった。そして叔父は、私を脅してきたの......」絃葉の声が、わずかに詰まった。「現在の相場に見合う金額を補償しなければ、私たちをいつまでも苦しめてやると言われたの。おじいちゃんの生活を邪魔されたくなくて、私はもうおじいちゃんとは縁を切ったと嘘をつくしかなかった」祐一郎は信じられない様子で立ち上がった。「では、あのとき家を出たのは、腹を立てていたからではなかったのか?」絃葉の瞳に涙が浮かんだ。「意地になっていた部分もあった......でも、それ以上に、おじいちゃんを巻き込みたくなかったの。私がいなくなれば、叔父がおじいちゃんにつきまとう理由もなくなると思ったから」祐一郎は足早に執務机を回り込み、震える孫娘の肩を支えた。「なんという馬鹿なことを......お前の叔父のような人間なら、私にはい
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第373話

祐一郎はわずかに眉を寄せた。「私とお前は父と息子だ。上司と部下ではないのだから、そこまでかしこまる必要はない。いずれ一人で事業を担うつもりなら、西尾家の人間にふさわしい堂々とした振る舞いを身につけなさい」健二は慌てて背筋を伸ばした。「はい、肝に銘じます」祐一郎は少し表情を和らげ、先ほど絃葉と決めた内容を伝えた。メイヨの経営を任されると聞いた途端、健二は喜びを隠しきれず、無意識に両手をこすり合わせた。「父さん、私をそこまで信頼して、メイヨを任せてくださるとは――」「勘違いするな」祐一郎は彼の言葉を遮った。「お前に任せるのは、あくまで暫定的なものだ。メイヨは西尾グループの礎であり、私が生涯をかけて育ててきた企業だ。お前が立派に経営できると証明すれば、将来は正式に任せることになるだろう。お前も絃葉も、私と血を分けた家族だ。経営権を握りたければ、本当の実力を見せなければならない」健二はそこでようやく我に返り、何度もうなずいた。祐一郎は引き出しから、手書きの「西尾家家訓」を二冊取り出し、二人へ一冊ずつ手渡した。「これは、私が生涯をかけて得た教訓を記したものだ。西尾家が今日まで発展できたのは、時代に恵まれたからだけではない。何より、創業の志を決して忘れなかったからだ。二人ともよく読み、その精神を次の世代へ受け継いでほしい」二人は家訓を受け取り、書斎をあとにした。絃葉がそのまま立ち去ろうとすると、健二が背後から呼び止めた。その声には、不満が隠しきれずににじんでいた。「父さんは、お前に200億円を?全部損失にしてしまうとは思わないのか?」絃葉は振り返り、冷めた目で彼を見た。「私の心配をするより、自分の心配をしたら?最後に勝つのがどちらかは、まだ分からないわ」――西尾グループの株主総会が閉会したその日のうちに、グループ内の勢力図が大きく塗り替えられたという知らせがひそかに広まり、財界各方面から注目を集めた。その夜、祐一郎は多磨城国際ホテルで親族披露の宴を開き、婚外子である健二の存在を正式に公表した。ほぼ同じ頃、海城にも別の大きな知らせが広がった。西尾家の令嬢である絃葉が、西尾グループ傘下にある海城の全子会社を一任されることになったのだ。絃葉は宴席に短時間だけ姿を見せると、人知れず会場を
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第374話

あまりにも勢いよく立ち上がったため、背後の椅子が倒れ、耳をつんざくような大きな音が響いた。凪杜は反射的にニュースを巻き戻そうとしたが、生放送であることを思い出した。録画していないため、見返すことはできない。動揺を抑えきれず、すぐにスマホを取り出すと、「西尾グループ」に関する情報を必死に検索した。やはり関連記事には、「西尾絃葉」という名前が次々と出てきた。凪杜は、体中の空気が少しずつ抜き取られていくように感じた。内臓までもが縮み上がり、全身の細胞が信じられないと叫んでいる。――西尾絃葉。本当に、あの絃葉だ。そんな......どうして?自分と苦労をともにすることをいとわず、金を使うのを惜しみ、高級ブランドには興味がなく、贈り物は気持ちのほうが大切だといつも話していた女性。そんな彼女が、多磨城を代表する西尾グループの令嬢だったというのか。西尾グループがどれほど巨大な存在か、凪杜にもよく分かっていた。澤木グループが最も繁栄していた頃でさえ、西尾グループの百分の一にも及ばない。絃葉が本当に西尾家の令嬢なら、その資産はとっくに千億円を超えているはずだ。凪杜は椅子へ崩れ落ちた。頭がずきずきと痛み、過去の光景が次々と脳裏によみがえってくる。5年間、朝から晩まで一緒に暮らした絃葉と、本物の令嬢を、どうしても同一人物だとは思えなかった。彼女はあまりにも控えめだった。大学時代の4年間、家族について尋ねられるたび、両親は早くに亡くなり、祖父に育てられたと淡々と答えるだけだった。それ以上のことは、決して口にしなかった。一緒に過ごした5年間も、わがままを言うことはなく、彼と一緒に安食堂や屋台の料理を食べ、狭い賃貸住宅で暮らした。契約を取るために酒を飲み続け、胃から出血したことさえある。それでも普段は細かく家計をやりくりし、切り詰めた生活を送っていた。あれほど飾り気がなく、純粋な女性が、どうして大富豪の令嬢なのだろう。考えれば考えるほど信じられず、あり得ないという思いが強くなった。もしかすると、ただ姓名が同じだけで、報道されている絃葉は自分の知る絃葉とは別人なのではないか。そう考えるほど頭痛はひどくなり、不安で胸が落ち着かなくなった。凪杜は真相を確かめようと、絃葉へ何度も電話をかけた。だが、彼
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第375話

自分は自らの手で、彼女を逃げ場のないところまで追い詰めたのだから。凪杜の顔を、音もなく涙が伝っていった。声を詰まらせ、まともに言葉を発することさえできない。「景の言うとおりかもしれない......俺を罵ってくれ。そのほうが、少しは気が楽になる」景は襟元のボタンを外し、わずかに感情を抑えたが、表情は依然として冷え切っていた。「残念だが、俺の受けた教育が、それを許さない。ただ、君のような人間は、地獄に落ちるべきだと思っている。今の境遇は、すべて君の自業自得だ。少なくとも俺は、君を許すつもりはない。自分のしたことをよく考えろ。それから警告しておく。二度と絃葉に近づくな。もし近づけば......どうなるか、その身で思い知らせてやる」景は冷たく電話を切った。それでも胸は激しく上下し、刃物で切り裂かれたような鈍い痛みが消えなかった。絃葉は、彼が何よりも大切にしている女性だ。彼女をわずかでも傷つけた者には、百倍にして償わせる。だが、自分の手が届かなかった過去の中で、絃葉はあれほど裏切られ、深く傷つけられていた。普段はどこまでも理性的な景でさえ、今は考えずにはいられなかった。もし、あの頃の自分が仕事だけに没頭していなければ。もっと早く絃葉の人生に関わっていたなら、何もかも起きずに済んだのではないか。考えれば考えるほど、心を静められなくなった。家の中は静まり返っていた。絃葉は海城へ戻るなり、アトリエに閉じこもっていた。おそらく新しい着想が浮かんだのだろう。景は邪魔をしたくなかったが、それでも気になり、足音を忍ばせてアトリエの前へ行った。ドアをほんの少しだけ開け、そっと中をのぞく。白いナイトドレスをまとった、すらりとした後ろ姿が見えた。絃葉は彼に背を向け、絵筆を握っている。今回描いていたのは、空と海だった。抽象的な線と、どこまでも澄んだ青。彼女の描く世界には、ほかの誰にも表現できない鮮やかさと想像力があった。絃葉は、生まれながらの芸術家なのだ。このような女性は、生涯をかけて大切に守られるべきだった。恐怖も苦しみも知らず、流転することも、寄る辺を失うこともないように。景の胸は今も痛んでいた。それでも、静かに絵を描く彼女の姿は穏やかで美しく、まるで絵を眺めているようだった
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第376話

絃葉は顔を上げ、景を見つめた。「どうしたの?」景の瞳に一瞬、暗い影がよぎった。それでも、声は優しかった。「何でもない。君は、自分の好きなことをすればいい」絃葉は彼の胸にもたれ、いたずらっぽく笑った。「愛する人と......愛し合うこと?」景は数秒間、意味が分からずに固まった。やがて彼女が自分をからかっているのだと気づくと、沈んでいた気持ちが一気に揺れ動いた。「したい?」絃葉は顔を上げ、彼の首へ腕を回した。彼女の位置から見える景の唇は、赤みを帯びて柔らかそうで、思わず触れたくなる。絃葉はわずかに背伸びをし、その唇へ軽く口づけた。「うん」景は満足そうに口元を上げると、彼女の体を抱き上げて寝室へ向かい、ベッドの上へ優しく下ろした。両手を絃葉の左右につき、肩を落として顔を近づける。「......いいのか?」絃葉は笑いをこらえながら、期待を胸に目を閉じた。「うん」景は部屋の照明を消し、ドアのそばにある小さな明かりだけを残した。顔を伏せ、白く滑らかな肌と、枕の上へ自然に広がる長い髪をじっと見つめる。喉仏が小さく上下した。先ほどまで胸に残っていた暗い感情は、たちまち頭から消え去った。体内を巡る血が、少しずつ熱を帯びていく。景の長い指が、彼女のナイトウェアをそっと開き、ゆっくり腰へ滑って、結ばれていたリボンをほどいた。表情は相変わらず真剣なままだった。だが、何度も上下する喉仏からは、抑えきれない欲望がにじんでいた。「絃葉......」景は彼女の名前を呼ぶのが好きだ。そう呼ぶことで、自分たちは親密な夫婦になれるような気がした。「ん......」絃葉は長い間待っていたが、彼の口づけはなかなか降りてこなかった。目を開けると、景がじっと自分を見つめていた。整った凛々しい顔は、ほの暗い明かりの中で、欲望を必死に抑えているように見えた。絃葉は、胸の奥が無性に熱くなるのを感じた。今までずっと抑えていた欲求が、一気に押し寄せてくる。彼女は思いきって景をベッドへ押し倒すと、自分からその唇をふさいだ。「遅すぎ」景は言葉を失った。「......」しばらくして、景は暗闇の中で大きく目を見開いた。「......!」これまで誰かに主導権を握られ
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第377話

「進捗は?」「すべて計画どおりです。ただ......」佳樹は一度言葉を切った。「海城経営者年次総会が明日の夜に開かれます。奥様は今年、東地域統括社長に就任されたばかりですから、間違いなく出席されるでしょう。海城へ戻る航空券を手配しましょうか?」景はわずかに眉を寄せた。「仕事の話をしているときに、いちいち絃葉の名前を出すな」「いえ、私ではなく社長のほうが」佳樹は言いにくそうに口ごもった。「......恋煩いをしているようなので」「俺が?恋煩い?」景は眉を上げた。「以前の社長は、会議中にスマホを見ることなど一度もありませんでした。ですが今日の2時間の会議では、少なくとも10回は確認していましたよ」佳樹は真剣な顔で、さらに例を挙げた。「それだけではありません。今では新しいレストランや場所へ行くたび、奥様も連れてきたいから記録しておくよう、私に指示しますよね。スマホのロック画面まで、奥様の写真に変えているじゃないですか」景は黙ったまま、パソコンの画面へ目を向けた。そこにも、絃葉がアトリエで絵を描いているところを、彼がひそかに撮影した写真が表示されていた。細く美しい後ろ姿は優雅で、垂れた髪の一筋一筋にまで、独特の色気が漂っている。見つめているうちに、景はあの夜、彼女に主導権を握られたときのことを思い出した。あれほど大胆で奔放な絃葉を見たのは初めてだった。まるで手綱を振り切った気性の激しい野生の馬のように、彼の心の中を自由に駆け回っていた。胸は今も高鳴り、どうしても忘れられない。だが、彼女はどうなのだろう。景は自嘲するように口元を上げた。「確かに俺は彼女のことばかり考えている。だが彼女の場合は、俺を思い出す暇すらないんだろう」景はメッセージ画面を見つめた。自分が送った吹き出しばかりが延々と並び、相手側の吹き出しは数えるほどしかない。理由もなく苛立ちがこみ上げ、胸が張り裂けそうになった。佳樹が、ちょうどよく1冊の資料を差し出した。「こちらが、今月の奥様の予定表です。出席される行事や会議の多さを見る限り、確かに......社長のことを考える時間はほとんどなさそうです」彼は真顔で付け加えた。「長年社長のそばで働いてきた秘書として、断言できます。社長は間違いなく恋煩い
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第378話

景は豪華な会席料理を頼み、ラフィットを二本開けて、湊と向かい合って座った。顔を上げ、一杯の赤ワインを一気に飲み干す。喉仏を上下させながら湊へ向ける眼差しは深く、何を考えているのか読み取れなかった。何か言いたそうにしていたものの、なかなか口を開こうとしない。まだ、酒の力が足りないのかもしれない。景は自分でもう一杯注ぎ、再びグラスを持ち上げようとした。湊が慌てて止めた。「お前は昔から節度を守って酒を飲む男だっただろ。いったい、どんな病気でそこまで取り乱しているんだ?」取り乱す――実に的確な表現だった。最近の景は、確かに普段の自分を失っていた。まるで何かに取りつかれてしまったようだった。これまで絶対の規範として守ってきた自制心も理性も、「絃葉」という名前を前にすると、まったく役に立たない。景は、湊を深い眼差しで見つめ続けた。その異様な視線に、湊は背筋が寒くなり、声まで無意識に震え始めた。「いったい、どれほど深刻な病気なんだ?俺たちの仲だろ。何でも率直に話してくれ」景は何度か唇を動かしたが、結局、言葉にすることができなかった。その様子を見た湊は、すでにおおよその事情を察した。「もしかして、口にしづらい症状なのか?」景はうなずいた。湊の表情が、さらに深刻なものになった。「絃葉と関係があるのか?」景は小さく肯定した。湊はますます確信を深め、少しずつ聞き出そうとした。「体中が何となく落ち着かなくて、どこが悪いのかはっきりしないのに、じっとしていられない感じか?」「実に正確な表現だ」景は力強くうなずいた。最近はまさに、そのような状態だった。体内を正体不明の熱が駆け巡り、抑えようとしても、次々とよからぬ想像をしてしまう。京城の仕事がこれほど重要でなければ、今すぐにでも海城へ飛んで帰りたいほどだった。絃葉と離れて暮らすことに、半身をもぎ取られるような苦しさを感じていた。「分かったぞ!」湊は深刻な顔で、彼の肩をたたいた。「初めて女性と関係を持ったばかりで、節度や衛生管理がよく分かっていなかったんだろう」景は、何を言われているのか分からない顔をした。湊は声を潜めた。「こういうことは、もっと気をつけないと駄目だ。女性は婦人科系のトラブルを抱えやすいことが
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第379話

「ああ。かなりの病気だ。以前のお前とはまるで別人だ。信じられない......」景は憂鬱そうな表情を浮かべた。「ここまで自分を制御できないなんて、今まで一度もなかった。薬を出してくれ、湊。どうにかして、この状態から抜け出さないと」湊はどうしようもないという顔で、両手を広げた。「悪い。ほかのことなら何でも力になれる。だが、これだけは......治す薬はないよ」景は固まった。「ないのか?」湊はうなずいた。「薬があるとすれば、絃葉そのものが特効薬だ。彼女を腕の中に抱き締めれば、今の症状はすべて消える」景は彼をにらんだ。「当たり前のことを言うな」湊は肩をすくめた。「なら少し頑張って、毎日飛行機で往復すれば解決するだろ?」景は首を横に振った。「絃葉はようやく仕事の足場を築き始めたところだ。邪魔をしたくない」湊は眉をひそめた。「だったら自分を抑えて、ほかのことに意識を向けろ」景は恨めしそうな目で彼を見た。「だから、この恋しさを断ち切る薬はないのかと聞いているんだ」湊は呆れたように答えた。「そんな薬を発明できたら、世界中で飛ぶように売れるだろうな。でも残念......俺には作れないよ」「結局、何の役にも立たない話ばかりだな」景はゆっくりとグラスにワインを注いだ。「だから俺は、昔から恋愛などしたくなかったんだ」立ち上がり、窓の外に広がる静かな竹林へ目を向ける。「誰かに心を乱されるのが、俺は嫌いなんだ。幸い、人生で恋をするのは今回の一度きりでいい。これ以上、余計な面倒が起きる心配もない」金庫の中に大切に保管している婚姻届受理証明書を思い浮かべると、ざわついていた心が、ようやくわずかに落ち着いた。景には、もう一つ口にしづらいことがあった。毎日飛行機で往復しないのは、絃葉の前で、あまりにも彼女へ依存しているように見られたくなかったからだ。骨身に染みるほど恋しくても、彼女には気づかれたくない。まして、その気持ちを過度に表へ出したくはなかった。そんな姿は男らしくないと、彼は考えていた。そのとき、湊はワインを飲み干し、息を吐いた。「まあ、俺はお前とは違うけどな。これまで何度も恋愛してきたし、付き合った女も少なくない」そこで言葉を切り、話題を変えた。「だが、悠
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第380話

景は「赤銅」という名を聞いた瞬間、眉をひそめた。そこは京城でも有名な、会員制高級クラブだ。景は、この何年もの間、一度も足を踏み入れたことがない。もともと品行方正な彼は、取引先からそこでの接待を持ちかけられただけでも、すぐに相手との取引を打ち切っていた。派手な照明と酒にまみれ、人々が享楽に溺れる場所だと知っていたからだ。あまりにも品がなく、受け入れ難い。景は眉を寄せたまま、湊の手を払いのけた。「俺はいい。帰る――」湊はすぐに言葉を遮った。「誰もいない家に帰るのか?それで、30をとうに過ぎた男が女の写真を眺めてぼんやりしたあと、一人寂しく夜を明かすつもりか?景、よく考えろ。お前は京城財界の御曹司、あの築山景だぞ。望めばどんな女だって手に入るし、どんな暮らしだってできる。どうして一生独身の男より、惨めな思いをしなければならないんだ?」景はわずかにまぶたを上げた。「うるさい。とにかく俺は、あんな場所へは行かない」湊は彼の肩に腕を回した。「いや、あそこはお前が思っているほどひどい場所じゃないよ?せいぜい、美人が少し多い程度だ。俺に処方箋を出してほしいと言っただろ?これが俺の処方箋だ。毒をもって毒を制す。大勢の女性に囲まれれば、少しの間くらいは絃葉への恋しさを忘れられる。何も後ろめたいことをしろと言っているわけじゃない。ただ店の雰囲気を味わって、気分転換をするだけだ」景の心はわずかに揺らいだ。それでも、自らの信条を曲げることはできなかった。「いや。これは俺の信念に関わる問題だ」湊は、恨めしそうな目で彼を見た。「今日は俺の誕生日だぞ。俺の顔を立ててくれないのか?」景は眉を寄せた。「誕生日?お前の?」「そうだよ。俺の誕生日が毎年一月なのを忘れたのか?今日くらい、俺のために一度だけ例外を認めても罰は当たらないだろ?」景はしばらく迷った末、ようやくうなずいた。「......分かったよ。ただし、女性を誰一人として俺には近づけるな」湊は喜んで承知した。「それなら簡単だ。店には俺から言っておく。それに、ちょうど正真も妻と子どもを連れて、京城へ旅行に来ている。あいつも呼ぼう」「妻と子ども」という言葉を聞いた景の胸に、理由もなく羨ましさが湧いた。「正真には、もう妻も子どももいる
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