Semua Bab 魔女ドーラの孫(仮): Bab 71 - Bab 80

115 Bab

花散る夜のふたりごと Ⅳ

 もう閉じるだけの力のない膝が浮き上がった腰のせいでより一層開いてしまう。「挿れるぞ」「ん……」 覆い被さる公爵の背に、オルタナは腕を回してしがみ付いた。 メリッと裂かれるような痛みを感じて息を詰まらせる。 あんなに解して貰ったのに、公爵の滾る肉棒は掻き分けるようにして中へと入って来る。「うぅっ……んぁっ……」「息をしろ、オーリィ」「はっ……はぁっ……はぁ……ふぅ……」「いいぞ、上手だ。ゆっくり息を吐いて力を抜いて」 公爵は慈しむ様な優しい声で耳朶に囁きかける。 甘い痺れと耳朶を震わすその声に、オルタナは安堵して少し力が抜けた。 くちゅくちゅと入り口を揺さぶられて胸の辺りで擦れる肌の感触に、這い上がる掻痒感を感じてうっすらと瞼を開く。「こっちを見ろ、オーリィ」 オルタナはゆっくりと腰を動かしながら煽情的な眸をこちらに向ける公爵に、惚れ惚れしてしまう。 色香漂う艶めかしいこの人が、今自分の中に入ろうとしている。 愛しい。好きだ。この人が欲しい。「来て、ヴィーさま……もっと奥まで、来て……」「優しくしたいのに、そんなに煽るな……」 片眉を上げて困ったような表情を見せた公爵は、また鎖骨の辺りに花弁を散らす。 負けじとオルタナも公爵の首筋に吸い付いて、小さな愛の証を咲かせた。 公爵がしてくれたように、咲いた花弁をチロチロと舌で舐めて愛でる。「煽るなと言っているのに……」 入り口でゆるゆると動いていた公爵の肉棒が、ぐぐっと奥まで挿し込まれ、その圧迫感にオルタナは「あっ!」と声を上げる。 下腹部いっぱいに感じる圧迫感と、縦に貫かれた肉棒から伝わる熱が脈を打つ。
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ナタリス・サリバンと言う男

 あれから一度も部屋を出ることなく睦合い、疲れたら落ちる様に寝て、起きたらまた交わって時間の経過すら分からなくなって来ていた。 オブライアンが扉の外に用意してくれる食事を寝台の上で取り、満たされたらまた抱き合ってを繰り返す。 貧弱な体を抱き潰されて心地よい疲労感を通り越し、息が上がる程の激しい行為に意識を失った気もする。「これが兄様のお気に入りかぁ……」「ナタリス様、勝手に入っては旦那様に叱られます」「良いの良いの。分かってて籠ってんだろ、そろそろ出て来て貰わないと」 ……誰の声だろう? ふと瞼を開くと、至近距離でジッとこちらを見ている男が「あ」と声を上げた。 深いナイトブルーの丸い眸が、パチパチと瞼を瞬かせる。「っ⁉ だ、誰っ……?」「オーリィ……? どうし……」 そう言いかけた公爵がオルタナの顔にシーツを掛け、枕を鷲掴みにしてその男に投げる。「うわっ、ちょっ……ひどっ……」「何しに来た、ナタリー」「機嫌悪いなぁ、もぅ……」「勝手に部屋に入って来るな」「みんな揃う頃だって分かってる癖に、出てこない兄様が悪いでしょ。ノエルやミレーがこの部屋に突撃できるわけないんだから」「いや、お前もな」「兄様をこんな為体にするなんて、ドーラの孫は傾国の気があるね」「喧しい。そもそも今回の件、どう責任取るつもりだ? まさか、知りませんでしたとは言わせんぞ」「あー……いや、知らないってことは無かったんだけど、まさかスーランがあんな事するとは流石に予想外だったというか……お仕置きする?」「誰がお前に仕置きなどするか。喜ばせるだけだろ……」 シーツの中で会話を聞いていたオルタナは、その言葉に首を傾げた。 お仕置きで喜ぶってどういう状況だろう? って言うかこんなみっとも
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お茶の報復

 オルタナは少々息苦しくなって来て、シーツからひょっこり顔を出す。 公爵の義理の兄弟であるナタリスは、元サリバン公爵の長男であり、家督を横から奪われた立場にある人だが、そう言う確執はこの家にはないらしい。 オルタナはぶつぶつと独り言の様に呟きながら部屋を出て行くナタリスを、視線だけで追い掛ける。 強烈なギャップを持ったナタリスが、何だか珍獣の様に見えてしまう。「すまないな、甘やかしすぎたらあんな男になってしまった」 甘やかしたら、変態になるとかある?「義弟になられるのですよね? ナタリス様は」「あぁ、まぁ……誕生日は二ヶ月ほどしか変わらないがな」 元々、十分な薬を得られず実母を病で亡くしていたナタリスは医者になるのが夢だったらしい。  なので、家督相続を放棄出来る事は願ったり叶ったりだったそうだ。 だが、まだ若かった公爵は横から入った自分が、大人しく小心者だったナタリスを傷つけたのではないかと懸念していたらしい。 元々、前サリバン公爵、つまりナタリスの実父が長兄に対して厳しい人で、仕置きや懲罰を強いる人だったそうだ。 だが愛のない人ではなく、息子を愛するが故の行動が時に厳し過ぎる人だったと公爵は言う。 αなのに大人しく引っ込み思案だったナタリスは父の責めに幼い頃から耐えており、その甲斐あって今では加虐趣味のある立派な変態に成長したらしい。「な、何だか……不思議な方ですね……?」「正直に言って良いぞ。あれは変態だ」「あはは……」 王陛下の事も変態だと言っていた様な気がする。 高位貴族は変態しかいないのか……。 そんな事を思いながら、オルタナには会話の中で気になっている事があった。「あの、ヴィー様。スーランをオブライアンさんに任せるって言うのは?」「あぁ……安心しろ。オブライアンに躾け直して貰うだけだ」
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プロパガンダ

「うーわ、所有欲爆発……」「……すみません」「三日も籠って出て来ないと聞いた時には、こんな事だろうと思ってはいたけど……加減ってものがあるでしょうよ」「ごめんなさい……」「ふふ、オルタナが謝る必要ないわ」 赤面して顔が上げられない。「やっと想いが通じたのね、オルタナ」「想い……」 お互いに好きだとか愛してるとかは言ってない。 する事はしたけど、言葉で確認してない。 と言う事に、オルタナは今更気付いた。「え、言ってないの? 好きって」「あ、や……はぃ……何か、それ所じゃなかったと言いますか……」「でもそれは、ヴィー様が悪いわね。ヴィー様が先に言うべきだもの」「いやそれは……」 ずっと一緒に居られるわけじゃない契約番に、好きなんて言えないだろう。 公爵にとってこれが一時の気の迷いだとしても、それでも良いと思ったから体を重ねた。「僕が覚悟を決められたのはミレー中尉のお陰です。僕は今、幸せです」「そう? それなら良いけど……。じゃあ、今度の夜会も張り切ってお披露目しなきゃね」「夜会?」 オルタナは鏡の中のミレーにキョトンと問う。「毎年、国王陛下のお誕生日に夜会があるの。その時にヴィー様とオルタナを番として公表するって聞いてるわ」「へぇ……え? 夜会って、何か踊ったりするあの夜会ですよね? 僕そんなの踊れませんけど……?」「練習しないとだね」「いつあるんですか? その夜会」「二週間後よ」 ミレーは真剣な顔で首筋に白粉を塗りながらそう答える。 オルタナは王陛下の言葉を思い出していた。 確かに陛下は審議会が終わった後の方が都合が良い、と言っていた。 でも、二週間でそんなの無理が
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顔のない猫

 一斉にこちらに向けられた視線にオルタナは少し緊張を覚えた。 だが、その空気を全く読まない人が一人居た。「おぉ、オル坊! 何かちょっと見ない間に綺麗になったなぁ」「お、親父さん……僕、男だよ……」「おう、男でも綺麗なヤツはいるもんさ。倅が迷惑かけて悪かったな」 スーランの父親アラベルは、そう言ってオルタナの頭にぽんと片手を置いた。 アラベルは退役軍人と言えど兎の様な細くしなやかな体で、αの割には小柄な方だ。  スーランと同じ様な赤毛で、左目尻の下に泣き黒子があって、中性的な顔立ちをしている。「ううん、僕は何ともないから」「ほんっと、あの愚息がっ! 猪みたいに突っ走りやがる」「でも何でスーランは……」 そう言いかけた時、ウケイが思いつめた表情でこちらへと近づいて来た。「オルタナ……」「先生……ご心配おかけしてすみません」「いいえ、お前を一人にした私の落ち度です。もう具合は良いのですか?」 そう言ったウケイは両膝をつき下から見上げる様にして、こちらの両手を取った。「はい。ヴィー様からお薬を貰って、それが効いたみたいです」「良かった。間に合ったのですね」「間に合った?」「お前がこちらへ向かっているとレンスター少尉に聞いて、鴉に薬を持たせました。お前にはこの国の薬はあまり効かないでしょうから」「そうだったんですね。ありがとうございます」「他に怪我などありませんか?」「大丈夫です。スーランは僕を傷つけたりしない。先生もそう思っていたから、目を離したんでしょう?」「えぇ、ですがオルタナ。病人を勝手に連れ出すという行為は、暴力に他なりません。簡単に彼を許してはいけません」「……はい」 そう言ったオルタナに、ウケイはようやく安堵したような顔を見せる。
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変態と痴れ者

「公爵様っ! 私は公爵様の為なら何でも致す所存です! だからそのΩを厳罰に処してくだ……」 ダリスが言い終わる前に、バチーンと派手な音がした。 オルタナはその音にビクッと肩を竦ませる。  公爵の右手がダリスの頬を叩いたのだと、少し間を置いて理解した。 驚きすぎて言葉を失ったダリスが、俯いたまま固まっている。「お前、誰に指図している? 俺の番がどうしたって?」「いや……あの……」「俺はお前が生きていてくれて嬉しいぞ。クスニューの森で死んでおけば良かったと後悔させてやろう」「そっ……そんなっ……うそだっ。こうしゃ……くさ……ま」「煩い、喚くな」 ナタリスがそう言って、興奮したダリスを取り押さえた。「何故ですっ⁉ 何故、そんな愚民を優遇されるのですかっ……」「ダリス、覚えておけ。俺は俺の身内に手を出す阿呆と、お前の様な頭の悪い子供が一番嫌いだ」「王国の公爵ともあろうお方が娼婦まがいの番など侍らせて、恥ずかしくはないのですかっ⁉」 その言葉を聞いて、オルタナは血が騒ぐような感覚を覚えた。 自分の事はどう思われようと構わないが、公爵を蔑むなんて許せない。 オルタナはツカツカとダリスの前に出て行き、床に転がるダリスの頬をパシッと平手で叩いた。「は……?」「ヴィンス・サリバン公爵を貶める発言は許さない。恥を知れ、痴れ者が!」「へ、平民の癖にっ、貴族に手を上げるなどっ……」 そう言ったダリスの足を、今度はナタリスが遠慮なく踏みつけた。「いぐぁあぁっ……!!」 怪我している所を容赦なく踵で踏みつけるナタリスは、嬉しそうに笑っている。「オーリィ、おいで」「ヴィー様……」「お前の美しい手が汚れてしまう」
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物言わぬ獅子

「はい、じゃあまず姿勢から」 張り切っているミレーに手取り足取り姿勢を直されて、ノエルには触れる程の距離で手を取り腰に手を回された。 何か、これ恥ずかしい……。 ノエルとこんな至近距離で相対する事が無くて、少し戸惑いを感じる。「じゃあ基礎から。タン、タン、タンの拍子でノエルについてって、オルタナ」「は、はぃっ……」「オルタナ、俺の足の上に足を乗せろ」「え? そんなっ……それじゃ、ノエル少佐がいた……」「痛くはない。その方が足運びをすぐ覚えられるだろう?」 教えて貰っている身でアレコレ言うのも気が引けて、オルタナはそっとノエルの足の上に乗っかる。 いくら体が小さいと言っても、踏めば痛いだろう。「よし、良いぞ、ミレー」「じゃあ、行くわよ。タン、タン、タン」「これを繰り返していくぞ、オルタナ」「は、はいっ……」 もう殆どノエルに支えられてただ回っているだけになっている。 タン、タン、タン。タン、タン、タン。 でも繰り返しで良いのなら、なんとか覚えられる気がする。「そしてここでターンよ!」「うわっ!」 体の大きいノエルの動きに振り回されて、外へと放り出されるかと思った。「ちょっと、ノエル! 相手は私じゃないのよ! 加減しないとオルタナ振り回されてるじゃない!」「あぁ、そうか。すまん、オルタナ」「い、いえ……。あの、ノエル少佐」「何だ?」「ミレー中尉と、お手本を見せて貰ったりとか……」
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原初のΩ

 その公爵の言葉で、アラベルは姿勢を正しこちらを見た。「まずはオル坊に、ちゃんと謝罪を。うちの愚息が本当に申し訳なかった」 テーブルに額が付くほどに頭を下げたアラベルに、オルタナは慌てる。「いや、親父さん。僕はそんなっ……」「いいや、息子がした事は許されない事だ。だが、こちらにいらっしゃる方々は、今回目を瞑って下さると約束してくれた。だが、オル坊が許してくれなきゃ本末転倒だ」「いやだから、僕は何とも思ってないってば! 頭を上げて、親父さん」 そう言ったオルタナに、アラベルは頭を上げて「すまねぇ」と眉間に皺を寄せる。「これから話す事は、ドーラにも許可を得てある事だ。有事の際はオル坊に話して構わないと言われている」「婆ちゃんから……?」 そう言われてピンと来ないオルタナは、焦れる様な気持ちでアラベルの二の句を待った。「まず、倅が起こした件についてだが……」 そう切り出したアラベルは、ルアド・モリガンが起こした事件の証人として魔女ドーラが王都へ召喚された際、モリガンではある噂が流れたと言った。 それは北の時計塔から国軍の馬車に乗せられる魔女ドーラの姿を見た事情を知らない下級兵士達が、誤解した事に始まる。「誰が言い出したのか分からないが、魔女ドーラが教会で処刑される為に連れ出された、と村で噂になったんだ」 それを聞いたスーランは、タイミングよく持ち掛けられたナタリスの依頼を受ければ王都へ行けると踏んだ。 そして奇しくもドーラは、本当に教会へと連れて行かれてしまう。「俺達は商売しながら情報屋としての一面も持っている。王都へ辿り着いたスーランは、ドーラが教会へと連れて行かれたと聞いて、オルタナも危ないと思ったらしい」「あぁ、だから僕を連れ去ろうとしたんだね……」「あぁ、スーランがナタリス様の依頼を受けると言い出した時
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魔女ドーラの正体

「俺達はラカンに連れ去られたものだとばかり思っていたから、ずっとそっちの情報を集めていたが、何一つ有力な情報は得られなかった。だから見つけるまでに相当な時間がかかってしまった」 それはようやくモリガンへと辿り着く頃の話だった、とアラベルは言う。 母と祖母の目的はモリガンへ行く事だったから、祖母はモリガンへ向かうと譲らなかったそうだ。 だから危険を回避する為、アラベルは得意だった変装術を使って身を偽る事を提案した。  “顔のない猫”とはつまり、変装によって潜入する彼の本来の顔を誰も知らないと言う事に由来する。「ドーラは肝が据わっているから、化粧如きじゃ納得してくれなくてな……」 祖母は国内に敵がいると知って自分の素性を隠す為、薬草を使って顔を爛れさせ、喉を潰し、年齢すら偽る為に祖母として振舞う事にした――――。「つまり婆ちゃんは、婆ちゃんじゃない………?」「……そうだ。ドーラはオル坊の母君の侍女で、齢もまだ四十を超えたくらいだ。主である母君と、幼いオル坊を守る事。それが彼女の使命だった」「そぅ……ですか」 血が繋がっていない。祖母と。 そんなバカな。 似ていなくても、たった一人の家族なのに。 余りの衝撃に、思考回路は動き方を忘れた様だった。 オルタナは驚き過ぎて次の言葉すら出て来ない。 腰に回されている公爵の腕にグッと力が入った。 その感触に、オルタナは呆然と公爵の方へと視線を向ける。「大丈夫か? オーリィ」「……うん」 いや、大丈夫かどうかすら、ちょっとよく分からない。「すまねぇ、オル坊。すぐにでも母君を助けに行きたかったが、教会には手形のない者は入れねぇ上、間取りも分からねぇ。忍び込むには情報が足りなさ過ぎた。だから俺達は肉屋を立ち上げ教会に出入り出来る様になったんだが……間に合わなかった」「……間に合わなか
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オルタナの正体

「夜葡萄の研究が関係していると?」 ウケイの視線に、公爵は頷く。「義父は夫人が亡くなる少し前から、夜葡萄の研究をしていた。その原初のΩと呼ばれる者が夜葡萄と関係しているなら、前公爵に罪を着せる為の工作だったとも考えられる。ウケイ殿なら思い当たる節があるのでは?」「……そうですね。夜葡萄とは繊細かつ栽培に当たっての条件が非常に難しい植物です。まず環境が極寒でなければなりませんし、夜の国の様に陽の差さない森の中でなければ育ちません。そしてもう一つ、絶対に欠かせないのが原初のΩの血です」 ウケイは夜葡萄とは夜の国の女王の血筋、すなわち原初のΩの血がなければ育たない、と付け加えた。 だから修道院の植物が人体、正確に言えば原初のΩの血を媒介にして育った夜葡萄なのかを確める必要があったのだ。  だが遺体は白骨化しており、どこから芽吹いたかなんて明白にするには時間が経ち過ぎていた。「義父が夜葡萄の研究をしていると知って、エヴレカの死を前公爵に擦り付ける為にアウルム修道院へ運んだのだとしたら、辻褄が通る」「でもじゃあ、何故ケルメスは十五年も埋めたままにしておいたんだ?」 そう聞いたアラベルに、その場にいた全ての者が答える事が出来ない。 短い沈黙の後、その静寂を破ったのは、ウケイだ。「これは憶測でしかありませんが……ケルメスはバカではありません。強いカードをいつ切るのか慎重に時期を見ていたと言う事ではないでしょうか?」 ウケイは教会を裏切り現王に寝返ったサリバン家を窮地に陥れる為に、様子を見ていたケルメスにとって「予想しない出来事が起きた」と言った。「それが第二王子の王位継承権放棄と、臣籍降下です」 ウケイのその言葉に、全員が公爵へと視線を寄こす。 確かに、エヴレカが十五年前に死んだと仮定して、公爵が臣籍降下したのは十三年前。  その差は二年しかない。 公爵が王位継承権を手放した理
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