部屋の明かりだけが、静かに唯を照らしていた。桜井唯はベッドへ腰掛けたまま、スマホを見つめている。櫂とのメッセージ画面。何か返したいのに、うまく言葉にならない。『無理に一人で抱え込まないでください』その一文が、胸の奥に残っていた。唯はゆっくり息を吐く。昔の自分なら、きっと誰にも言えなかった。苦しいとも。怖いとも。迷っているとも。全部、一人で抱え込んでいた。でも今は。櫂が「頼っていい」と言ってくれる。その優しさに、少しずつ甘えてしまっている自分がいた。唯は小さく目を伏せる。そして、ゆっくり文字を打ち始めた。『少しだけ、怖いです』打ち込んだ瞬間、胸が苦しくなる。こんな弱音を吐いていいんだろうか。唯は迷いながらも、そのまま送信ボタンを押した。数秒後。すぐに既読がつく。『怖くて当然です』短い返事だった。けれど、その言葉だけで肩の力が抜けそうになる。櫂は続ける。『だから、一人で抱えなくていいんです』唯は画面を見つめたまま、唇を噛んだ。どうしてこの人は、こんなにも優しいんだろう。責めない。急かさない。それなのに、ちゃんと隣にいてくれる。唯の胸が静かに熱を帯びる。そのとき。また別の通知が表示された。『黒崎涼』唯の表情が固まる。『返事はいらない』メッセージは、それだけだった。唯は小さく目を見開く。『ただ、最後までちゃんと向き合いたかった』胸が、ぎゅっと締め付けられる。昔、唯が何度も欲しかった言葉。ちゃんと向き合ってほしかった。一人にしないでほしかった。でも
Last Updated : 2026-05-26 Read more