幸子は千歳の手を取って立たせた。「二人でよく話し合ってきなさい」そう言って、由樹に素直に謝るよう目配せする。千歳は背中を押されるように、由樹のそばへ歩み寄った。だが由樹は座ったまま正面を見つめ、千歳には一度も目を向けなかった。千歳はうつむき、由樹の短く整えられた髪を見つめながら、どう切り出せばいいのか分からず、なかなか言葉が出てこなかった。「摩美さん、千歳は小さい頃からうちによく泊まりに来てて、あなたも見守って育ててきたようなものでしょう。あの子は本当に素直なだけで、裏表のある子じゃないんですよ」幸子は摩美の隣に座り直し、その腕に自分の腕を絡めた。「やっぱり、今回のことって三久が……」「三久ちゃんが何だっていうの?」三久の名前が出た途端、潔子はあからさまに不機嫌になった。「あの子が誰と付き合おうが、恋をしようが、子供を産もうが、結婚しようが、あなたたちには関係ないでしょう?自分たちが勝手に気に入らないからって、三久ちゃんのせいにしないでちょうだい」幸子は一瞬言葉に詰まった。けれどその一言が、摩美の中でまた同情心を呼び起こしてしまった。何しろ、自分も幼い頃から見守ってきた子だ。千歳は確かに、素直すぎるだけなのだ。彼女は由樹の前に立つ千歳を見た。泣き出しそうなのを必死にこらえている様子が、何とも痛々しく映る。「由樹、何はともあれ、あなたも千歳ちゃんに冷たすぎるんじゃない?」その言葉に、潔子はあきれ果てて天を仰いだ。そのまま顔を背け、うんざりしたように目を閉じる。これ以上見ていたら、目が腐りそうだった。由樹は立ち上がってスーツの裾を軽く整え、「ついてこい」と言った。千歳にそれだけ言い残すと、彼はベランダへと歩いていった。千歳は唇を噛みしめ、由樹のあとを追った。「由樹とちゃんと話してくるのよ」幸子が小声で言い添えた。ベランダには日差しがたっぷり差し込んでいた。由樹は細身の長身を壁に預け、逆光に立つその表情は、はっきりとは見て取れない。千歳は彼のそばに立ち、ずっとその横顔を見つめていた。「由樹さん、ごめんなさい。これからはもう、絶対に迷惑かけないから」「お前が謝るべき相手は、俺じゃない」由樹は彼女に目を向けた。「三久はずっと、自分の立場をわきまえて行動してき
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