固く拳を握った仁哉が、入り口に立っていたのだ。その表情は深く沈み、全身からは怒気が立ち上っている。仁哉は瞬きひとつせず美紀を見据えた。その視線に美紀は思わず身をすくませ、震え出す。彼女は慌てて充の背後へ隠れると、その腰に両腕を回し、さらに強くしがみついた。反射的に彼女を引き離そうとした充だったが、美紀の震えを感じ取り、その手をそっと下ろすと、冷たい目で仁哉を睨みつけた。「よく俺の前に顔を出せたな。とっとと消えろ」仁哉は表情を変えないまま、美紀を指差す。「あの動画を見せたのか?」充の表情がさらに険しくなった。「まさか……お前たちがあんなことをしていたとはな……」仁哉は怒りを押し殺し、暗く沈んだ瞳で充を静かに見つめた。「僕たちがハメられたっていう可能性は考えないのか?」そう言うや否や、仁哉は充の背後に隠れていた美紀の腕を勢いよく掴んで、強引に引きずり出した。「美紀、本当にやってくれたな!君はただ愚かなだけなんだって思っていたけど、それは違ったみたいだな。愚かなだけじゃない……根っから腐ってる」美紀はよろめきながらも、充の服を離さないように必死に掴む。仁哉の怒りに燃える視線を見た充は、すぐに美紀の前へ立ちはだかり、声を荒げた。「悪いのはお前と奈緒だろ!なのに、なんで美紀に当たり散らすんだよ!仁哉、まさか美紀がお前を押さえつけて、奈緒の上に覆いかぶさらせたとでも言うつもりか?」仁哉は真っ直ぐ充を見返した。その目は怒りで赤く染まっている。「美紀が奈緒さんの飲み物に薬を入れたせいで、奈緒さんは意識まで失ったんだ。なあ、充……本当に君は簡単に騙されるんだな。君は僕と奈緒さんがそんな愚かな人間だって思ってるのか?」しかし、充は鼻で笑った。「そんなこと俺が信じるとでも?お前たちの酒に美紀が薬を盛るなんて、こいつがそんなことできると思うか?怒りで仁哉のこめかみに青筋が立つ。「……」この瞬間、仁哉は奈緒が感じていた疲労を、初めて心から理解した。充という男は、もう完全に思考が凝り固まっている。たとえそれが真実であろうとも、自分が信じたくないものは何一つ受け入れず、自分の思い込みの中に閉じこもり続けているのだ。内心ほくそ笑んでいた美紀は、ここぞとばかりに泣き崩れる。「仁哉…
Read more