宏一の差し伸べた揺るぎない想いを受け止めながらも、鈴華の瞳から溢れる雫は、いっこうに涸れる気配を見せなかった。理性がどれほど冷徹にその事実を納得しようとも、震えるばかりの心はその歩幅に追いつけず、ただ置いてけぼりにされた子供のように立ち尽くしている。「だけど……こんな、あまりにも突然の別れなんて……お兄ぃ……」しゃくり上げる息に遮られ、今にも消え入りそうなその拒絶。涙に濡れた横顔を見つめ、早緑は困ったような、それでいて深い慈しみを湛えた苦笑をその唇に浮かべた。「――大袈裟やなぁ、お嬢。なにもこれが、今生の別れっちゅうわけやあらへんのやから」宏一は手を伸ばすと、愛おしさをそっとぶつけるように、鈴華の柔らかな髪をくしゃりと撫でた。「藤四郎の言うとおりだ。それに……」ふっと目元を和らげ、悪戯めいた光をその瞳に宿す。「あの烏丸の野郎が嫌になったら、いつでもすぐに迎えに行ってやるからさ」哀しみを吹き飛ばそうとするかのような、軽やかな冗談。そう言って破顔した彼の笑顔は、どこまでも温かく、そしてどこか切ない。「お兄ぃ……」溢れる涙の向こう側で、鈴華はただ、その不器用な優しさに救いを見るように、小さく呟いた。---槇村と京司のあいだで交わされた親子盃の余韻も冷めやらぬ数日後、その契りを裏社会の隅々にまで告げる赤状が放たれた。九条組が正式に六穣の直参へと組み込まれたその報せは、波紋のように音もなく、しかし確実に闇の勢力図を塗り替えていく。急激なうねりの中で九条組が激しく揺れ動く中、京司は錨と山城という確かな両腕の支えを得て、ようやく足元を固めつつあった。多忙の濁流に身を置きながらも、京司の胸の奥底には、常に鈴華という消えない灯火があった。幾度となくスマートフォンを握りしめ、その画面を見つめる日々。しかし、張り詰めた糸のような指先が、最後の敷居を越えて動くことはついになかった。液晶の冷たい光が消えるたび、彼は自らの影に向かって、静かに問いかける。(一度裏切ったこの手が、どの面を下げて……。もう一度、あの温もりに触れることなど、許されるはずもないやろうに)自責という名の暗い感情が、彼の胸をどこまでも深く侵食していった。重たい疲労の泥に身を沈めるように、京司は深く椅子に身体を預けた。指先に挟んだ煙草から、青白い
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