あの最悪な夜から、智哉さんは私と一切の口を利かなくなってしまった。私が彼の逆鱗に触れるような、取り返しのつかない何かをしてしまったのは確実なのに。それが何なのかがどうしても分からない。智哉さんはご自身の父親を深く尊敬していて、親を侮辱するような私の態度がどうしても許せなかったのだろうか。それとも、他の言葉に彼だけの地雷が埋まっていたのだろうか。考えれば考えるほど思考は泥沼にハマり、冷え切った邸宅の重苦しい空気に耐えられなくなった私は、逃げるように家の近くの喫茶店へと足を運んでいた。冷めたコーヒーの表面を見つめながら、私は無意識のうちに独り言を呟いていた。「分からない…」「何が分からないの?」私の目の前、テーブルを挟んだ向かい側の席に、朝倉さんがゆったりと腰を下ろした。ここは智哉さんの家から歩いてこられる距離にある、ごく普通の静かな喫茶店だ。外の世界の空気を吸いたいと、私がほんの少しだけ羽を伸ばすために選んだこのささやかな逃避場所に、なぜ彼が現れるのか。「……っ、どうして、あなたがここにいるんですか」息を呑み、硬直する私の顔を面白そうに眺めながら、彼は勝手にメニュー表を引き寄せる。「いやぁ、本当に奇遇だね。こんなところで会えるなんて思わなかったよ」そんな都合のいい言葉で、この異常な事態を片付けられるはずがない。「本当に、ただの偶然なんですか」私の刺々しい追及を受け、朝倉さんは大袈裟に目を見開いてみせた。そして、まるで罪のない善人が理不尽な疑いをかけられて傷ついたかのように、わざとらしく眉尻を下げてみせる。「……嫌だなぁ。もしかして俺のこと疑ってる?」そう言うとテーブルの上に両肘を突き、両手で顎を支えるようにして私の顔を覗き込んでくる。智哉さんの警告がなくても、異常な接触の頻度を考えれば、誰だって疑念を抱くはずだ。「疑いたくもなります。私が外に出るたびに、まるで監視でもしているかのようにあなたに遭遇するんですか
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