All Chapters of 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない : Chapter 221 - Chapter 230

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お館様は自ら夜襲に出かける

 作戦はこうだ。  まず、少数で敵陣営に潜入し、兵糧を見つける。  で、それを焼く。  あとは逃げ戻ってくるだけ。  実に簡単だ。「『簡単だろ?』って気楽にいってるけど、潜入がどれほど難しいか判ってんのかよ、お館様」 カイジョーがお手上げポーズをとる。  確かにね、いくら三流軍だって、野営の見張りがないなんてボンクラな体制なんて僕だって思っていないよ。「難しいのは判っているよ。でも、こちらから仕掛けなきゃジリ貧なのはこっちだろ?」「そりゃ、確かにそうかもしれないが……」「と言うことで、僕についてくる人選をお願いしたい」「お館様が自ら行かれるのですか?」 何?  何か問題でも?  なんて、僕が不思議そうな顔をしたらしい。  イラードは片手で顔を覆って言葉を失った。「だって、こんな決死隊、僕が率先してやらなきゃ誰が行動してくれるんだよ?」「確かにな。よし、ワシが付き合ってやろう」 と、最初に賛成したのはラバナルった。  なんか浮かべている笑みがマッドだよ。「お館様が出張るんなら、護衛につくのがあたいの仕事です」「じゃあ、オレもこの戦の近衛を仰せつかってるんだから同行しないわけにいかないな」 オギンとサビーも仲間になった。「じゃあ、四人で……」 と、言いかけたら「オレも行く」 と、手をあげたのがギランだ。  おっと?  反お館派の代表としては、僕の手柄は抑えたいってことかな?「じゃあ、この五人で行くことにしよう」 決行は四時間後、日本風に言えば「草木も眠る丑満時」ってやつだ。  イラードには門前に投石隊十人と弓兵としてサビー、ガーブラ、ザイーダ、シメイを配置してもらう。  カイジョーにはシメイを除くオーダイ、ペギー、アーシカのカシオペアメンバーとバンバ、カレン、ブンターの傭兵を白兵戦待機してもらう。 一時間
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あるはずのものがない

「暗闇を歩くのに灯りは必要だろ? だけど、闇夜に灯りは目立つ」「小さな光源で足元を照らし、必要に応じて握り隠そうと言うんだな」 ほぅ、さすがは一派閥のリーダー。  ギランくんもなかなかやるもんですなぁ。「そう言うこと」「フフフ……魔法の使わせ方が面白い」 ありがとう、ラバナル。「そうそう、魔法の特性上ワシから離れるほど音を完全に消せないから……」 おい、そう言う大事な情報は魔法を行使する前に言え!  他にも何か注意事項言ってただろ?  聞こえてないぞ!(リリム) 僕は、慌ててリリムを呼ぶ。(持続時間は三時間)(え?)(魔法の効果の持続時間は三時間って言ったのよ) そうか、ありがとう。 僕たちは、街道脇の林の中を粛々と進む。  音を消す魔法を使っていることをいいことに周囲を気にせず、かなりのペースで歩く。  とは言っても、雲に遮られた暗闇の下で林の中の雪中行軍だ。  道を歩くようなわけにはいかない。  はぐれたりしないように互いの腰を縄で繋ぎ、黙々と歩くこと三時間くらいだろうか?  ようやく野営の灯りが見えてきた。  なるほど、こんな近くに野営していたんだ。  街道脇の林が拓かれている。 音は消し、暗闇の林に紛れているとは言え、発見されないとは限らない。  僕たちはそこから慎重に移動して兵糧を探す。 陣のどのあたりにあるのか? 常識的に考えると陣の後方かとは思うけど、さてどうだろう?  注意深く林を進み、陣の後方まできたが、それらしい場所を確認できないまま四時間が過ぎようとしていた。  あれ?  ないぞ!?  僕は、全員に森の奥へと移動するように身振りで知らせる。  歩く音が少しずつ聞こえてきだしたところで立ち止まり、作戦会議を開くことになった。  同時に灯りの魔法も効果が切れた。「なにがあったんだ?」
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決断は素早く

 予定なら今頃は敵軍の兵糧に火をかけているはずだった。  それなのに、嗚呼それなのに、それなのに……。  軍の野営地には兵糧がない。  この作戦は失敗なのか?  僕はいくつかの決断を迫られる。  それも早急にだ。  まずは作戦を継続するか、撤退するか。  そのための判断材料はなんだ?  兵糧の保管場所のあてだ。  陣中にはなかった。  じゃあどこだ?「サビー」「はい」「兵糧が陣中になかった」「はい。この規模の軍ならば相当量の兵糧が必要だと思います」「教科書通りなら最低十日分」 その疑問にはラバナルが答える。「そうじゃ」「なら、どこにある?」「ずっと後方ということになるかと」 サビーがいう。  違いない。(この最奥の村への一本道で大量の兵糧を置いておける場所?)(じゃあ、あそこしかないわよね) だよね。  僕も見当はついていた。  旅人の野営地だ。  とすればここからさらに先、着く頃には夜が明けるんじゃないか?  作戦は失敗として帰陣すべきか?  でも、明日以降の戦闘は今までのように有利には進められないぞ。  早期決着のためには是が非でもこの作戦は成功せなきゃいけないんじゃないだろうか?  とはいえ僕は総大将だ。  明日の戦闘指揮を取る責務があるよな。  どうする?  長考なんてしてられないぞ。「お館、どうしますか?」 サビーが焦れて結論を急かす。  三択だろ?  まずは撤退。  これを選択すると戦略を根本から練り直さなきゃ大損害を蒙ることは必定だ。  いや、練り直したってどれだけ損害が抑えられるかって話だ。  次に継続。  兵糧を焼くのには成功するだろうが、今日の村の防衛戦でどれほどの損害が出るか判らない。  いやまぁ、僕が指揮を
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行動は迅速に

 町と村を結ぶ街道は徒歩で三日。  途中二箇所に野営用の空き地がある。  そこにいるとか、今回はあてにしていなかったとはいえ、ちょっと離れすぎなんじゃない?  いや、夜営の炊事や暖をとる火を熾せば煙が上がる。  それを考慮しての位置どりなのかもしれないな。  タイミング次第だけれど、効果的な奇襲が計画できるかもしれない。「オギン、そこまで行くのにどれほどの時間がかかる?」「明け方までには探し当てます」 いやいや、歩いて一日半の距離だぞ?  どんだけ無理するつもりでいるんだ?「ラバナル」「なんじゃ?」「人の動きを早くする魔法なんてないかな?」「あるぞ。ただし、副作用というか魔法が切れた時にどっと疲労が押し寄せるという欠点があるがの」 一種のドーピングなのか?「効果時間は?」「加速のつけ具合にもよるが……」「どれほど速く動けるようになるんです?」「陣の描き方次第じゃろうが、三倍くらいには」「では、それでお願いします!」 おいおい、いいのか?「その速度では一時間がいいところじゃ。それ以上は体が持たん」「……効力が半日は続くようにするとすれば、どれほどの加速がつけられるのでしょう?」「ふむ、半日……二割増し、いいとこ三割増しかの」「では、それでお願いします!」「オレにもお願いします!」「え?」「オギン一人では不測の事態に対処できないかもしれないじゃないですか」 いや、そうかもしれないけど……ええい、仕方ない。「判った。オギンとサビーで、作戦続行。兵糧を焼いてのち、キャラバン隊を探し出し、背後から敵陣を急襲せよ!」「はい」「ただし、急襲は町との戦闘中である場合のみ。一撃離脱ですぐに森へ逃げ込むことと。ジョーなら無理はしないと思うが、効果的な奇襲ができないようならする必要はないぞ」「かしこまりました」
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君はデストラーデを知ってるかい?

 寝坊した。  一応捕虜のルビンスの世話をしているクレタにもののついでに起こされた。  体がだるい。  加速の魔法による疲労が抜けていないのだ。  開戦三日目、今日は正念場だというのに大丈夫か? これで。  一階に降りると、僕の分の食事も用意してくれていた。  あれ?  いつもはめんどくさいとか言って用意してくれていないのに、何があった?  雨でも降るのか?  いや、今は冬だから降っても雪か。「ルビンスが一緒に食事がしたいからって」 おやおや?  ずいぶんとルビンスには甘いな。  まぁ、いいか。「話があるのかな?」 年齢的には彼の方が少し上だが、今は捕虜だし僕はこの町の長だ。  関係性で少しマウントをとらせてもらおう。「うむ、昨日今日とあなたの側で今回の戦を拝見させていただいた。その……正直、オルバック家への忠誠心というのも捨て難く思うのだが……確かにあなたの言う通り、各地で争乱が起こるとなればジュニア様では……」 はっきりダメとは言いにくいよね。「この戦で判ったのは、あなたが民の命を大事に考えていることとズラカルト男爵軍が兵の命を軽視していることだ」 さすがは僕が見込んだだけのことはある。  心の中ではデストラーデばりのガッツポーズをしているけれど、表面上はあくまでも平静にルビンスの発言を黙って聞く姿勢を崩さない。  交渉ごとで優位性を示すやり方はいろいろあるけど、今はこれが一番だと思うからだ。  できるだけ表情を柔和に(にやけちゃダメだと言い聞かせつつ)どんなことがあっても受け止めるぞという態度を表すことに努力する。「──などといろいろ考えた上で、ワタシはあなたの提案を受け入れ、ここに仕えることを誓わせていただく」 まだなかなかに葛藤があるのがおかしな表現に顕れているけど、そこはいいや。「ありがたい。こちらこそよろしく頼みます」 と、僕はルビンスの手をとる。  立場が上であることを利用して下手に出る。
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嬉しい申し出

「本来ならばあなたのような一騎当千の騎士には早速お働きいただきたいところだが、話によればお父上ルビレル殿が今回は従軍しているとか、さぞ戦いにくかろう」 一騎当千はお世辞だけれど、正騎士参戦は戦力としては魅力的だ。  けど、そこまで僕はお花畑じゃない。  戦場に出して裏切られることだって当然考慮する。  考慮するけど、それを言葉や態度にして本気で味方についてくれた人間の気分を害することも愚策だと判っている。  ここは前世の古典知識を最大限利用してやろうって話だ。  ここら辺は若い騎士には勝味のない交渉術だろうさ。  いやさ、現世の僕は彼より年下なんだけどね。「ご配慮ありがとうございます。つきましてはその父、ルビレルを引き抜いてご覧に入れましょう」 なぬ!?  僕は知らずに身を乗り出していた。「実は、父は前々からジュニア様の言動に危惧を抱いておられました。オルバック様の命でジュニア様のお付きになられたあとはことごとに諫言をなさっていたのですが、それを快く思っておられなかったようで、ここへの二度の出征にはいわれのない讒言によって従軍できず私が選ばれたしだいです」 うん、ヤッチシ、グッジョブ!「ジュニア殿とはうまく行っていなくても、現当主とは良好なのではないのですか?」 ルビンスの話によれば、流言讒言によって立場が危うくなっているのだという。  おお、効いてる効いてる。  でも、何かもう一押し足りない気がするなぁ。  多分そこをクリアできないと、せっかくのルビンスの説得工作も失敗する気がする。「話は判りました。説得工作は時期を見てお願いしましょう。今日は正念場です」 僕の表情が引き締まったのだろう。  ルビンスの表情も険しくなる。  僕は慌てて微笑みを作る。「まずは食事を取りましょうか? 腹が減っては戦はできぬと申します」 ルビンスがポカンとした表情になった。  あ、これは前世のことわざか。
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後手に回らざるを得ず

 やっぱり相手もバカばかりじゃないってことだ。  弓兵総出で火矢を放ってくる。  けどまぁ、こっちだって対策はしているわけで簡単に相手の術中にはまるわけがない。  ないんだけど、凍った柵は火矢であぶられ解けていく。  解けるだけなら湿った木材なわけでそれはそれで燃えにくいとはいえ、決して燃えないわけじゃないからギラン隊が水をかけたりして消火にあたる。  間断なく射かけられる火矢はなかなか消せないみたいだ。  そうこうしているうちにいつもの剣兵突撃が始まった。  いや、いつもとは様子が違うな。  慎重に進んでは置き盾を立てて帰っていく。  チッ、誰の献策だよ。  僕は弓隊と投石隊に置き盾の設置をできる限り邪魔するように指示を出す。  うちの飛び道具の手数じゃ邪魔をして設置を遅らせる以上のことは不可能だ。  その間にも火矢は柵を狙って撃ち込まれているから消火作業も続いている。  柵の周りが渋滞していて敵の邪魔も消火も思うような成果が出ていない。  やがて敵の弓隊が前進をして盾の陰から射込んでくるようになると、こちらの劣勢が鮮明になってくる。  何本もの火矢が突き刺さっている柵がぷすぷすと黒い煙を上げ始めた。「チャールズ」「はい」「前回みたいに雨を降らせてくれ」 雨が降れば火を抑えることができるはずだ。  この寒空で兵を雨に濡らすなんて良策とは言えないんだけど、あの柵にはもう少し保ってもらわないとならない。「はい」 チャールズは意図を飲み込んで魔法陣を描き黒雲を柵の上に作り上げた。  ところがだ、降ってきたのは雨じゃなく雪。  まいった!  気温のせいで雨が雪に変わっちまった。  雪じゃ意味がない。  意味がないどころか兵が凍えて味方にデメリットしかない。  ええい、早急に次善の策を立てなくちゃ。「チャールズ」「はい」「雪を敵弓兵の上に移動!」「は、はい!」 これで次善になるの
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ジャン、焦りすぎて余計なことを考える

 雪雲は敵弓兵の上に居続け、しんしんと雪を降らせる。  ところがだ。  敵は火矢を撃ってくる。  つまり手元に熱源があるってことだ。  多少は寒さでかじかむだろうが火元に手をかざせば強張りもほぐれるようで、目に見える効果は感じられない。  昼まであと半時間ほど。  昼になれば一度引き上げてくれるはず。  ……はず。  それまで柵を死守できるだろうか?  死守できたとして、午後はどうなる? どうする?  などとじりじりしているうちに昼になったらしく、ズラカルト軍は昼休憩に引き上げていった。  ……助かった。  これが日本だったらこんな一息つけなかっただろう。  異世界様様だ。  さて、午後の戦闘をどう凌ぐか。  この二日で戦力差はだいぶ縮まった。  とはいえいまだにこちらの数的不利が覆るところまでは来ていない。  剣兵こそ大きく減らしたけれど、弓兵の差は歴然で騎兵は脅威のままだ。  こっちのとりうる戦法って何が残ってる?  もともとできる選択肢は少なかった。  突撃なんてもってのほかだぞ。  町に籠城?  だめだだめだ、午前と同じ攻防になって詰んじゃう。  くそう、オギンたちの状況を知りたい。  それが判れば最善手が選べるだろうに……。  いや、それはいいっこなしだ。  現状での最善手を考える。  ハンニバルだってカエサルだってそんな状況下で勝ちを拾ってきたんだ。  この状況下なら孔明とか正成の方が例に出すなら適切か?  ──って、そんなことを悠長に吟味している場合じゃない!  考えろ。
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劣勢

「お館様」 イラードが前線から戻ってくる。  午後の作戦を確認しにきたんだろう。  判ってる、判ってるよ。「予備兵に当てている町人を総動員で置き盾を設置せよ」 まずは、徹底抗戦の構えだけはとっておかなきゃ。「柵の裏にはカイジョー隊を残し、弓隊はギラン隊に援護を頼んで盾の後ろに待機して敵に備える。カイジョーには柵が持たないと判断したら退却せよと伝えるんだ」「投石隊はいかが致しますか?」「カイジョー隊の援護だ」 弓隊より投石隊の方が人員が多いから柵を守ってギリギリまで応戦してもらおう。「弓隊にはできる限り犠牲者を出さずにカイジョー・ザイーダ両隊が撤退できるように援護を頼む」「かしこまりました」 僕はくすぶる柵を見ながら「いつまでもつか」と呟いたらしい。「もって二時間でしょう」 と答えたのはルビンスだ。「二時間か……」 これは一種の賭けになったぞ。  オギン達の兵糧焼討ちはきっと成功する。  ここだけは信じているけど、それがいつ、どのタイミングになるか。  ジョーのキャラバンとの接触は成功するのか? 接触できたとして、キャラバン隊はどう出る?「いずれにせよこちらの戦術は『専守防衛』。ここを凌げなくて何が独立かってんだ」「その意気ですぜ、お館様」 ガーブラがガハハと笑う。  胆が座ってんなぁ。  午後の戦闘が始まると、劣勢はいよいよ如何ともしがたく、一時間半もすると柵が火柱を上げ始めた。  カイジョー隊がザイーダ隊を守りながら退却を始める。  炎の向こうからそれを確認できたのだろう、矢が柵越しに降り注ぐ。「チャールズ、負傷者が来るぞ。ガブリエルと手分けして治療にあたってくれ」「判りました」 門を開いて手早く野戦病院を開設する。「ガーブラ、女兵は全員門の中へ入れろ。ザイーダ達弓が使えるものには物見櫓に登らせて弓を構えさせろ」
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乾坤一擲

「ルビンス」「なにか?」「ここの指揮を任せる。女子供を守ってくれ」「え?」「伝令に出せる人員がいないんだ。僕が行って撤退命令を出す間、ここを任せる」「心得た」 その返事を聞いて、僕もホルスを駆けさせる。  ガーブラに率いられて退却してくる女性達とすれ違う。「お館様」 ガーブラが僕についてくる。「撤退だ! イラード、弓兵を退げろ。ギラン、弓兵を援護! カイジョー、殿で退却戦!! ガーブラ、右を回って敵兵分断! 僕は左を行く」 指示を受けたそれぞれが返答とともに行動を開始する。  あれ?  ラバナルは?  僕は左を迂回し、迫る歩兵の列の横腹に突撃する。  敵の進撃が乱れて弱まる。  が、敵騎兵も突撃しようとしているようだ。「ラバナル!」「いるぞ!」 弓隊の中に姿を見つけた。  急いでホルスを駆る。「例の大きな音って、今出せる?」「おおよ」 さっと、魔法陣を描き始めるラバナルを同じく戻ってきたガーブラと守る。  魔法陣を描き上げたラバナルはおもむろに懐から金属の棒を取り出しガンガンと叩きながら魔法を発動させると、大音響が辺りを満たす。  うおっ!  ホルスが棹立ちになった。  僕はかろうじて堪えたけど、ガーブラが落馬した。  これは神様からもらった「人よりちょっと優秀」さの恩恵か?  敵騎兵のホルスも同じ状態になっているはずだ。「撤退! 急げ!」 鋭く命令して、こちらの軍を混乱から立て直す。  ん?  背後からガンガン音が鳴ってるけどなんだ?  町の方へと振り向くと物見櫓の上でザイーダが指を指している。  改めて指差す方へと視線をあげると、燃える柵の煙とは違う煙が遠くに上がっている。  あれは!  オギン達が兵糧を焼くのに成功したに違いない。  と、同時に
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