All Chapters of Lv1・Maxからのまちづくり: Chapter 71 - Chapter 80

102 Chapters

第71話・駆け引きの裏側

「ほほぅ、これはお若い」 グランディール町長として訪問したぼくを見て、開口一番彼はそう言った。「ええ、よく言われます」 ぼくは町長の仮面をつけて微笑む。「しかし、出来たばかり、ランクもついていない町で、スピティのトラトーレとデレカート二大商会と取引されているとは」「町民のおかげです」「なるほど、町長に忠実な町民がいるということですか」「ええ」 忠実な町民。 町に住む人のことをどう思っているのか。 苦虫を千匹は噛み潰したいところだけど、町長の仮面は優秀で、そんなぼくの内心を見事に覆い隠している。「うらやましい限りで」「おや、デスポタ町長はそうではないと?」 ファヤンス現町長、デスポタ・ティランノは、ぼくを尊重するようで見下しているのが見え見えの態度で言う。「そうなんですよ、お若いクレー町長にはまだお分かりにはなりませんでしょうが」「町長の先輩であるデスポタ町長をそこまで悩ませる町民がいるとは」「町民ではなく、町民たち、ですよ」 デスポタ町長は苦笑い。その顔をしたいのぼくなんですけど。「教育し直してやらなければ」「教育、ですか」「そう。町のために役立つという意識を植え付けてやらねば」「なるほど。そういう方法があるんですね」 感心した声で言うと、デスポタはにっこりと醜悪に微笑んだ。「ええ、いずれクレー町長も必要になるかも知れない」 ぼくは心の中で拳をぐっと握りしめながら、穏やかに頷いた。     ◇     ◇     ◇ 工房で一人絵付をしていたクイネは、微かな音に気付いて顔をあげた。 微かに……叩く音。ノック? 絵付け中は誰も来るなと町長ですら寄せ付けるなと言いおいてあるのに。 嫌な仕事を無理やりやらされている不快感をその相手にぶつけてやろうと、クイネはドアを開けた。 ……ん?「おま……!」「シッ」 ドアの隙間から滑り込んで後ろ手に閉めた男は、すぐにクイネの口に掌を当てた。 真剣な目で、無言のジェスチャーをする。 ……ポルティア!(なぜ……お前が、ここに) ポルティアは鍵がかかったのを確認して、工房の真ん中まで来ると、そこでようやく口を押える手を離した。「助けに来たぞ」「本気で……? 食堂の親父として?」「ああ」 だけど、この町は町長の方針で出入りが厳しい。そんな中にどう入って来たかは
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第72話・人ごっそり

 会議堂の高い階からは、壮観な光景が見えた。 町のあちこちから集まる、人の群れ。 「町を出て別の町に出たい人間は今すぐ出てこい」と言う通達に、出て来る人間は半端なかった。 町の半分は覚悟してたけど、少なくとも百人はいるなこれ。 ぞろぞろずらずらとやってくる人間が、一斉に消えるということを、町の役人や上層部は理解してない。 何故なら、陶土とそれから作った陶器を見せたからだ。 ポトリーが「自分の手でも今のファヤンストップクラスの陶器が作れる」と保証しただけあって、陶土はそりゃもうすんばらしいもので、それから作った見本に、町の上層部は呆然として見とれた。 だから、この人の波を見てはいない。 重さを量る計算官が、出荷する陶器の重さを量る装置で一気に五人ずつくらい計算していく。 もう人の確認すらできない。家畜連れの人もいるけど、面倒だから家畜ごと量っていく。「人の名簿は後程こちらからお知らせするということで……?」「え、ええ」 陶土を撫でながら頷くデスポタ。「出て行く人間が多いのでは……」「構わん! 出て行く人間が多ければそれだけこの陶土を手に入れられるのだ、どう考えても人間が出て行ったほうが得だろう! 残った連中にこの土で陶器を作らせれば、あっという間にB……いや、Aランクだ!」「そ、そうですな」 更に面倒になって荷物ごと量っている。 その中にポルティアを見つけて、ぼくは頷きかける。 ポルティアの横で深く帽子を被っているのがクイネだろう。よく見ると指先に土や色がこびりついている人も多い。陶器職人の人たちだろう。 ファヤンス側が「町を出たい奴は全員出て行け」と言い出すのは簡単に予想がついた。宣伝鳥を送った結果、町を出たいと思っている人が予想以上に多いことも分かっていた。今朝、その人たちに出る機会があるかもとも通達はしてあった。 だから、町を出たい町民は出る可能性があると予測できていたのだ。 だから、計量の大渋滞は目に見えていた。 ファヤンス側の担当官も出て行くのを見張っているはずが、子連れの女性とアイコンタクトしていた。家族だなあれは。「後で私も計算に入れてください」 ぼそっと言って来た。 役人までこれだからなあ。本当にごっそり持ってけるなあ。 中には肉屋とか家畜売買とかもいて、自分の商品も持ってきたいと家畜を連れてきたり
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第73話・何をしてもいい町

「家とかは出来るまで待つ場所は?」「あー、家は出来てる」「出来てる?」「ていうか出来る。町スキルで」 町スキルがそういうものなのなら、と人々は納得する。 ぼくは空を見上げて手をかざした。 空は曇っていて薄暗いけど、それが更に暗くなり、巨大な……巨大な物体が浮いている。「まさか……」「そう、あれが、グランディールだ」「空飛ぶ町?!」「落ちないの?!」「落ちない」 ぼくはまっすぐにファヤンスの町民たちを見る。「もちろん、不安なら戻ってもらっても構わない。グランディールが空飛ぶ町と言うことさえ明かさなければ、ファヤンスに戻るなり別の町に行くなりしてくれて構わない」 ざわざわと囁き合う声で空気が揺れる。「とりあえず、何が何でもファヤンスに戻りたくないという人から、署名と押印をしてくれ」 ポルティアの横で帽子をかぶっていたクイネが、帽子をグイと脱いで前に出る。 クイネだ……あいつも町を出たのか……と言う声が鼓膜を微細に震わせる。「食堂の親父をやらせてくれるというのは本当か?」「ああ」 ぼくは大きく頷く。「信じられないというんなら町の印で契約書を結ぼうか」「本気か?」「本気だよ。そもそもポルティアがあなたの話をしなかったら、ぼくたちもここまで派手なことはやらなかった」 クイネはぼくを睨みつけるように見てくる。 視線をそらさず、ぼくも真っ直ぐ見返す。「契約書を」 ぼくはサージュから受けとった、前もって町長の名と印を記した契約書をクイネに渡す。 クイネは食い入るように契約書を睨んで、ぼくに視線を移した。「絵付けはやれと言われてもやらないぞ」「うん。全然かまわない。やりたいことをやりたい人がやる、がグランディールの流儀。スキルに合ったことをやっても、趣味でやっても全く全然かまわない」「おかしな町長だ」 ふぅ、とクイネは息を吐く。「9000レベルのスキルと合わないことをやってもいいとは……まあそれは自分も望むところ。ありがたくやらせてもらう」 クイネはサインを書き、自分の印を押してぼくに返す。「ぼ、僕も、いいですか」 恐る恐る前に出てきたのが、ヴァダーやぼくなんかと同年代の成人。「ピェツ・バーケです……何がやれるのかわからないけど、何でもやってみます……何とか役に立つから、だから、ファヤンスに戻さないで……」
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第74話・正しいランクの上げ方

「やっぱりわたしのお兄ちゃんは最高のお兄ちゃんだ」 ぼくの腕に絡みつくようにしながら、アナイナは笑う。「町を追い出された人、町に住めない人を集めてこんなすごい町を造っちゃうんだもん!」「みんながいるからだよ」 これは間違いなくぼくの本音。「ぼくだけだったら、ここまで立派な町にはなっていなかった」 ヴァローレに「鑑定」してもらったところ、グランディールは現在Cランクだそうだ。 主な理由は知名度が低いこと。設備とか人数とか出来ることは十分Aランクなんだと。 スピティに家具を卸しているだけじゃ知名度はなかなか上がらない。 知名度を上げるにはどうすればいいか。 何処か大きい町にグランディールで乗り付けるのが一番だとは思うけど、グランディールの力を知られたら流血沙汰を起こしても手に入れたいという人間が、エアヴァクセンのミアスト町長を含めて大勢いるだろう。 ランクを上げる手っ取り早い手段が、近くの町を併合して一つの町にしてしまうことだ。ぼくらが実行した手だ。 ただ、これは普通は大きい町が近くの小さい町に仕掛けるもの。 遠くの町を併合したところで、移動手段や連絡手段がなければそのうち関係も途切れ、元通り二つの町になってしまう。そして、小さな町が大きな町に行えば、余程事前の手回しがない限り、併合された方の生活雑貨や食料を売る店がそっぽを向いて町として先行かないようにしてしまう。結局小さな町は町を維持できず手放すことになる。 ぼくらが成功したのは、ファヤンスから出たいという人数をある程度以上把握していたこと、デスポタ町長の目を陶土で逸らせたこと、そして人数分広がるグランディールの特性があったから。 この町の正体がバレてみろ。目につく町片っ端から町民を強制的に引っ越させて町民にしてしまえる。特産の材料もほぼ無償で手に入れられる。つまり楽勝でSSSランクに行ける。 卑怯だよ。我がスキルながら反則だ。 だからこそぼくはただSSSランクを目指すのではなく、町民全員が満足して幸せに暮らせるSSSランクを目指すんだ。 ミアスト町長やデスポタ町長の同じ轍を踏みたくない。 水路の行き交う空を見上げたぼくの腕にアナイナが絡みついた。「何考えてるの、お兄ちゃん?」「いや……何でもない」「何でもない顔じゃないよ」 相変わらずアナイナは観察眼がすごい。 ……
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第75話・食堂にて

「とりあえず食事に行こうか?」「行こうかって?」「クイネが、まずぼくに食べてもらいたいって言ってるんだ。行く?」「行く!」 会議堂の近くにある食堂に向かう。 それまでは自分の家で料理をしていた。……と言っても料理を作れる人はあんまりいなかったので、料理が出来る人の家に行ったり、ただひたすら暖炉で焼いたり。 だから、クイネが作りたいと言った食堂は、本当にありがたかったのだ。 ついでに言うと、同じくファヤンスから来てくれたアルトス・フリエーブもありがたい。 彼はパン職人。スキルもまんま「パン」で、パンを作るのが好きな人。これまでグランディールにはパンを作れる人がいなかったので、スピティとかから買ってきていたのだ。小麦粉はあるのにね! で、アルトスが来てくれて町の人間分を賄えるパンを焼いてくれるので、パンに困ることはなくなった。 最初のメニューはなんだろな。楽しみにしながら、食堂のドアを抜ける。「すいません、まだ営業は……。あ、わが……町長!」「ヴァリエ?!」 自称騎士なヴァリエが、エプロン姿で出迎えてくれた。「給仕の職に就いたの?」「はい! 剣が使えようと忠誠を誓おうと、騎士のままではこの町に何も出来ていないのと同じですので……練習で」「練習」「はい! 町長に「入れるんじゃなかった」と思わせるようではいけないと、そう思いまして」「ヴァリエ! 立ち話するんじゃない!」 奥からクイネの声が飛んでくる。「町長がいらしたのか?」「はい!」「練習通りに席へ案内するんだ」「あ、こ、こちらへどうぞ!」 窓際の席に案内してくれる。「今日食べられるのは?」「豚のジンジャー焼き、です!」「じゃあパンとそれを二人分」「はい! ありがとうございます!」 ヴァリエは深々と頭を下げて奥へ引っ込んで行って、水とお手拭きを持ってきた。「本当はわたしもやってみたかったんだけど」 アナイナは水を一口飲みながら言った。「成人じゃないからダメだって」「そうだな、お前は来年にならないとな」 アナイナは町のことによく口を突っ込んで来るので忘れがちだけど、まだ成人には半年くらいあるのだ。 未成年用の学校もいるなあ。 考えながら料理を待つ。 しばらくして、何とも食欲をそそる香りと共に、味付けされた豚肉が運ばれてきた。「パンに挟んで食べても美味
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第76話・デレカートの警告

 スピティに行く日。 ヒロント長老と他のみんなに町を頼んで、ファーレに馬車を作ってもらって、家畜売買のゾーオン・ジヴォートナイに馬を用意してもらって、今度こそちゃんと荷馬車で行ける! がたがた、かっぽかっぽと荷馬車は進む。 今回はぼく、アパル、サージュ、アレ、ヴァローレ、リューの六人。いざとなったら逃げだす準備満々のスキル準備。 だってなあ、ピーラーとデスポタ、どっちか一人だけでも厄介なのに、二人揃って待ってる可能性があるんだぞ。最悪の想像をすれば二人が手ェ組んで手ぐすね引いて待ってるかもしれないんだぞ。 気も重くなる。 ぼくとヴァローレが馬車の中、アレが御者台で、残りが御者台や幌から周りを警戒している。「今のところは?」「何もない」 後ろを見ているサージュの返事。「こっちも」 右を見るアパルの返事。「今ン所ないっす」 左を見るリュー。「まあ今は出てこないだろう」 サージュが呟く。「あっちもスピティともめ事を起こしたくないだろうからな。来るとしたら帰りだろう」「はあ~あ……」 吐く溜息までが重い。 人数が増えた今、お金なしで町をやっていくことは難しい。ちゃんと働いた人にはお給料を出さなきゃだし、町民が町の外と商売する時にも必要だし。 だから、サージュ曰く「外貨がいる」んだそうで。 町で勝手にお金を作ってやり取りするんじゃなくて、ちゃんと世界で通用するお金を町の中、外で流通させなければならない。そうじゃないと町と認められない。Cランクの理由は通貨が通用していないところにもあるらしい。 外貨を手に入れるためには外と物を売買することで、今のところ売れるのは家具だけ。そのうち陶器も売れるようになるだろうけど、ファヤンスとガチぶつかりになるのは今は避けたい。 は~、町って厄介厄介。 ミアストやデスポタがスキルで町民を使っていた理由も何となく分かってきた。 スキルは、本人のやる気の有無に関わらず、確実に評価できるものが作れる。だから、町長は町民をスキルで割り振る。確実に成果が出るからだ。 やらされてる方はたまったもんじゃないだろうけどね。 クイネやピェツのように嫌がっている人もいる。 ぼくはそんな人を出したくない。 やりたい仕事をやって、成果を上げて、みんなで喜べるような。 そういう町にしたいと思ったから。 だから
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第77話・急いで帰ろう

 取引で得たお金と、次の注文を受け取って荷馬車へ戻る。待っていた三人は緊張と安心の入り混じった微妙な顔で出迎えてくれた。「近づいたり、何かしようとした人は?」「いないっす。時々ヴァローレに「鑑定」もしてもらったっすけど」 リューが答える。 ふー、と息を吐く。 今のところ仕掛けては来てないか。「じゃあ、さっさと帰ろう。今回は買う物もないし」 本当は伝令鳥を一羽欲しかったけど。 ちなみに、伝令鳥を買うか買わないか悩んだ頃に教えられたことがある。 伝令鳥はスキルを持った鳥なんだって。そのスキルで特定の人物の場所を突き止めて物を届け、戻ってくる。そして、そのスキルは他のスキルとは「合わせ」られない。伝令鳥の居場所を特定するスキルなどを伝令鳥や運ぶ荷に仕込んだり、追いかけたり、場所を特定しようとしたりすると、伝令鳥は目的の場所に荷を運べなくなる。宣伝鳥も同じく。だから伝令鳥で場所バレすることはないのがありがたい。 だから、直接「匂い」をつけられないよう自分たちが気を付けるしかないんだって。便利なのかそうでないのかよくわからない。     ◇     ◇     ◇「で? 何かいい情報は入ったんすか?」「いい情報と言うか……警告をもらった」 三人がこっちを見る。「スピティじゃグランディールの居場所に懸賞金をつけてるんだと」「げ」「うわ」「本気っすか」「デレカートが嘘を教えるとは思えない。懸賞がどれくらいかは分からないけど、尾行してくる奴はいるだろうね」「いるね」 金の瞳で幌から背後を見ているヴァローレが言う。「五人。明らかにこっちをつけている」「大物……強力なスキル持ちは来てない?」「まだ」「馬車に異常は」「ない」「じゃあ、さっさと消えるか」 ピーラー辺りはこっちにスキル移動の手段があることに気付いてるはず。そして移動手段があってそれを使っても誰にも文句言われる筋合いはない。「頼む」「OK」 グランディールはスピティの近くにはない。周りを探しても出てこない。そしてアレは低上限レベルの「移動」だ。ついてこれるもんならついてこい。「じゃあ、行っていいか?」「ああ。頼む」 まとめて~。 「移動」!「消えた?!」「まさか」「スキルか?」「おい、どうするよ」 五人の追手は、顔を見合わせた。「町の居場所突き止め
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第78話・ヴァローレの気がかりが気になる

 でも、気になるなあ。 あのヴァローレがあそこまで気にしていた……本人は解決済みと言っているけれど、それでも町一番の「鑑定」使いが気にすることだ、町長としては放置できない。 とはいえ、ぼく一人じゃ何にもできないし……。 グランディール町長と呼ばれ、ある町では敵視され、ある町では警戒されているその正体は、「まちづくり」のスキルがなければ何もできない十五歳。シエルやクイネのようなスキルとは別の才能は……多分、ない。 ああ~このもやもやを抱えて湯処や食堂に行けない~! うろうろと門の辺りを歩き回っていると、ぽん、と後ろから肩を叩かれた。「アレ? リュー?」 旅姿から着替えてもいない二人が、真剣な顔で立っていた。「やっぱ気になるんすね、ヴァローレの気がかり」「きみらも?」「当然だろ。あのヴァローレが気にしたことで外れたことはほとんどないんだ。本人は珍しく疲労でそれ以上の追及を諦めたようだけど、あいつと長いこと一緒に行動してた人間としては、ちょっとな」 アレが眉間にしわを寄せている。「あいつのスキル以上に、あの勘でヤバイことから逃げられたことも多いんすよ。そんな俺たちがあいつのあの発言を見過ごせるはずないっす」 リューが熱弁する。「……確認したほうがいい、ってことか?」 うん、と二人が頷く。「スキルは様々っす。スキルで出来ないことはないとも言われてるっす、俺のように居場所を特定できるスキルもあれば、アレのように長距離を一瞬で移動するスキルもあるっす。特に俺みたいなスキルでレベルが高かったりしたら、空の上にあるグランディールに気付く可能性もあるっす」「そしてこの町を手に入れようと画策する、か」 頭が痛い。 本当はヴァローレについてきてもらいたいけど、あの疲れ様だと連れていくのは難しそうだ。 とはいえ、ぼくら三人だけと言うのも厳しいよなあ……。「不安なら、サージュに頼んでみるっすか?」 リューが、ぼくの顔色を見たんだろう、こう提案してきた。 サージュかあ……。 確かに、この町では一番スキル学に詳しくて、「知識」で正しい知識を手に入れられるサージュなら、付いてきてもらうにはもってこいだ。 でも……。「……ぼくら結構、サージュに頼ってるよな」「……そうっすね」「町の運営とか、動向とか、結構任せてるよな」「……ぼくらだけで、調
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第79話・拉致監禁

 ……痛い。 意識を取り戻して見れば、後ろ頭のズキズキと、気持ち悪い沼に引きずり込まれるような感覚。 異常事態。 一体、何が……。 落ち付け。 頭が痛いのは辛いけど、今は状況を把握しなきゃ。 アレとリューと一緒に町を降りて、ヴァローレの気がかりの元を探しに行って。 そして、後頭部に強い衝撃を感じた。 リューが目を見開いて、「町長危ない」と言っていた。つまり、後ろから誰かがぼくをぶん殴ったってことか。 そして、今の状況……。 ズキズキに耐えて、薄目を開ける。 真っ暗い場所。何処だろう。少なくとも場所はあそこから移動されている。 人の気配はない。 だけど、誰かが……。 誰かがこっちを見ている感覚。 まだ動かないほうがいい。まだ気を失ったままだと思わせたほうがいい。 後ろ頭がズキズキと痛むけど……。 痛い素振りを見せてはいけない。心の中で町長の仮面をつけて、気絶していると思わせる。 アレとリューの気配もない。上手く逃げたか、捕まって別の場所にいるのか。 一番理想的なパターンは、逃げたにしろ捕まったにしろ二人が同じ場所にいること。「場所特定」と「移動」があれば例え何処であっても逃げ出してぼくの居場所を特定して逃げられる。 最悪のパターンは……三人とも捕まって、別々の場所に囚われてるってとこだな。 その場合、グランディールからの助けを待たなければならなくなる。 町を出る時にアナイナに事情を話せたのは良かった。心配性のアナイナなら帰りが遅いと思ったらすぐにでも会議堂にすっ飛んでいく。そうすれば捜索隊が出るだろう。元ファヤンス町民の中にも探索系のスキルの持ち主はいた。ヴァリエと話したのは三日前、「追跡」は効くだろうか。 とにかく、現状を把握しなければ。 今転がされているのは木の板か? 土の上か? 石か? ……どれでもない。 とすると、誰かのスキルが関わっている? スキルで閉じ込められたんだったら話がもっとややこしくなる。スキルを「合わせ」るのではなく「ねじ伏せ」るのはそれこそレベル勝負になる。 とにかく、今のぼくに出来るのは時間稼ぎだ。 気絶したままなんだ。本当は痛くて頭抱えて転げ回りたいけれど、町長の仮面は弱みを外へ出さない。傍から見れば気絶して起きないように見えるだろう。「……まだ起きないのか」 声。 だけど、
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第80話・口喧嘩をBGMに

 さて、何処からともなく聞こえる口喧嘩で、大体の状況は分かった。喧嘩はまだまだ続くだろうけど好きにやっててくれ。長ければ長いだけありがたい。 後ろ頭は痛いけど、今すぐに考えなきゃいけないことはたくさんある。 まず、現在の状況。 ぼくは今、デスポタのスキルで、何処かに閉じ込められている。逃げ出すことも、スキルで発見することも出来ないらしい。 だけど、リューとアレは逃げることが出来た。 ぼくが拉致られたことは二人からグランディールに伝わるはず。 問題は、その時、ピーラーあるいはデスポタどちらかの顔を見ていたか。 見ていたなら、アレが逃げるのに「移動」を使ったとしても、そう時間もかからずに誰かがここを見つけ出す。 見て居なかったら……サージュやアパルが判断してくれるのを待つしかない。 グランディールに明らかに敵対というか恨みを持っていて町長を拉致するほどのことが出来るのは、ピーラーとデスポタだと判断してくれるだろうか。いや、アパルとサージュは頭がいいし、元ファヤンス町民の皆様だったら町長がそういうことをやりかねない男だと知っているだろう。これは期待してもいいと思う、うん。 そして、今ぼくのやれること。 それは、時間稼ぎ。 ひたすらこっちに集中させて、グランディール側が動いていることに勘付かれてはならない。 このまま気絶しているふりでもいいかもしれないけど、口論中の二人の頭がいつ冷えるかもわからない。二人とも頭が悪いように思えるけど、世界一の俳優と立派な町の町長だ。まだ他に打つ手があるかもしれない。 頭が冷えてろくでもないことを考え出す前に、こっちから仕掛けた方がいいかもしれない。 グランディールからすれば、町の存続に関わる事件に、とんだ足手まとい。 ここは、ぼくが何とかしなきゃ。 ……ぼくが勝手にやらかした失敗。 ぼくが取り戻さなくてどうするよ。 腹具合から考えて、ぼくが殴られて気絶してから恐らく二刻以上は経っている。予想だとそろそろ捜索隊が出されるか。 だとすれば、この空間から出なければならない。 にしても、町長のスキルが、人を真っ暗闇に閉じ込めるスキルだなんてなあ。そりゃあスキルと町長職は何の関わりもないけれど、クイネが言ったことを思い出すと、何とも。 ファヤンスで町長の陰口を叩いたり悪口を言っ
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