Lahat ng Kabanata ng Lv1・Maxからのまちづくり: Kabanata 91 - Kabanata 100

148 Kabanata

第91話・子供たちに教えるために

 う~ん。 町をぶらぶらして見聞きしたことを思い出し、問題点を洗い出す。洗い出すほど問題点がたくさんあったわけじゃないけど。 今の状況だと子供問題を優先したほうがいいなあ。 子供が何もすることがないからあちこちを探検して回ってるわけだな。 探検が悪いとは言わないけれど、畑を踏み荒らされたり家畜を蹴られたり窯に入り込まれたりするのは困る。うん、とっても困る。 畑はまだ可愛いもんだけど、家畜蹴飛ばして蹴飛ばし返されたら大怪我だ。窯に入ってるの気付かないで火を入れたら大惨事だ。 そうなる前に手を打った方がいいなあ。 学問所を作ることは予定していたけど、早めたほうがいいかもしれない。教える人はファヤンスから来た人の中に学問所の先生をやっていた人が二人いたので任せるとして、何を教えるかをまだ決めてないし。何を教えるかは町の方針とか色々関わってくるので、ファヤンスの教え方で教えられても困るので後回しにしようと思っていたけれど、そういう状態じゃなさそうだ。 会議堂に帰って、二人の頭脳を呼んで、相談した。「そうか……子供が」 妻帯者のサージュ、難しい顔。「うん。町民の五分の一が成人未満。それが暇を持て余して町中走り回ってる。それはいいんだけど大事な場所や危ない場所にも行ってるんだ。牧草地で家畜に近付いたり、窯の中に入ったり」「それはまずいね」 アパルも渋い顔。「会議堂に入り込んでくるのも時間の問題だな」「うん。それで、学問所を早めに開ければ、と思ってるんだけど」「確かに、暇な時間を減らせばそれだけ走り回ることは少なくなるってことだ」「ただ、何を教えるか……」「先生も呼んできて一緒に相談しよう」 というわけで呼び出されたのが、ケンナリ・レーラール先生とチチェル・プルファソラ先生。「私たちの意見を聞きたいとのことですが……お役に立てるか」 ケンナリ先生渋い顔。「わたしたちは町長の命令で、陶器のことを教えさせられていたんです。ですが、ファヤンスを併合したからと言って完全に陶器の町で売るわけでもないのでしょう?」「うん。敢えて言うなら何でもできる町」 ぼくの言葉に、チチェル先生も難しい顔。「どういう方面を教えればいいのか、難しすぎます」「仕事の内容とかは要らない」 ぼくは天井を見上げて呟く。エキャルがバラン
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第92話・印のデザインは

 と。言うわけで。 翌日、陶器通り近くの印章彫刻家ダムガ師匠の所を訪れたぼくです。「その間抜けな格好は何なのかね、町長?」 気難しい顔でいきなりこういう師匠。 間抜け? あ、エキャルか。「すいませんこいつは訳あってあと二日は傍に置いておかなければならないんですこいつのことは無視してお願いします」「印章作りは下を向く。首が痛む」 ダムガ師匠はむっすりと言う。「更に頭に鳥が乗っていたらもっと首を痛める」「あ」 気難しい人かと思ったら、心配してくれていた。「エキャル、しばらく机の上に乗っててくれる?」 くぅ、と残念そうな顔をしてエキャルは机のぼくのすぐそばに着陸した。「それでいい」 師匠、頷いて、掌に乗るほどの四角い石を取り出した。「印章彫りに一番いい石、セーデン石じゃ」「へえ」 蒼い石を遠ざけたり近付けたりして見つめる。「まずは、どのような図柄にするか考える」 どんな図柄、かあ。町の印章はグリフォンだけど、ぼくの図柄かあ……。ぼく……。「面倒であれば自分の名をそのまま印にしても良い」 その手があったか!「町長印と違い過ぎると疑われるだろうが」 ……そうか。 う~ん……。 軽くほっぺたをトントンする気配。 ん? 誰? そっちを見ると、エキャルが心配そうな目でこっちを見ていた。「大丈夫だよ、エキャル……」 ……ん。 エキャルにすればいいんじゃないか? 町はともかくとして、ぼく自身はあんまり特徴がない。 アナイナと髪の色も目の色もパーツもよく似ているのに、アナイナは美少女だけどぼくは美少年ではない。むしろ特徴と言える特徴のない無個性な人間だ。 スピティやフォーゲルではこいつが本当に町長か扱いは当たり前だった。 町民でもぼくの顔を見てすぐ町長と分かる人間は半数いるかいないか。サージュやアパルが町長だと思ってる人もいるくらい。 そんなぼくが昨日注目を浴びたのは、頭の上のエキャル。 さすがに頭に伝令鳥を乗っけしている人間はグランディールでは町長であるぼく以外いない。 伝令鳥を乗っけて一日グランディールを歩き回ったから、エキャルと並んで覚えた人もいるんじゃないか。 そのぼくを表すのに伝令鳥は相応しいんじゃないかと思った。「こいつ、どうでしょう」 手を上げると、その上にエキャルが嘴を乗せて
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第93話・印完成

「では、このスケッチをこの大きさにせよ」 石の印を彫る面とほぼ同じ大きさの紙を渡されて、ぼくはスケッチのコピーを始める。 なるほど、この大きさの紙だからここまで描き込めたけれど、印にするとそこまで描き込めないな。 となると、かなり省かないと。 まずは輪郭だね……。 慎重に線を描く。 柔らかさを表現したかったんだけど、この羽毛の感じを再現すると彫るの大変そう。 ギリギリまで線を削ったほうがいい。 羽根のスケッチを見ながら、削れる線を確認して、羽毛のふわふわな感じじゃなくて風切り羽根のシャープな感じを出そうと頑張る。 それをエキャルが覗き込んでくる。「エキャル、どう?」 エキャルがまだ翼を広げる。「ありがとうな」 じっくり観察して、伝令鳥の羽根らしい鋭さを出そうとすると、より一層線が少なくなっていく。 一枚の羽根の有様を、線を絞って描き込んだ。「……お」 何か、良い感じ。「どうでしょう」「良いのではないかな」 師匠は紙を取り上げ、紙を遠く離して目を細めた。「翼の有様が、少ない線で良く描かれておる」 わー。 褒められた! ぼくはエアヴァクセンの学問所で褒められたことがない。地味だった。しみじみ言えるほど地味だった。一年経ってアナイナが入ってきたら余計ぼくの影は薄れた。アナイナはエアヴァクセンの学問所でやることなすこと褒められた。妹が褒められまくってぼくがどんどん影が薄くなっていって、妹に才能全部持ってかれたなとか言われて、でもアナイナはぼくが好きで、両親が拘りなくぼくも可愛がってくれたから。 町長の仕事……スキルで出来る仕事以外、こんな場所でプロの成人に褒められるなんてことは一切なかったから、とても、とても、嬉しかった。「では」 師匠は紙と石を、別の黒い紙を挟んで固定した。 ?「この紙に描いた線を強くなぞってみよ」 ??? 言われるがまま、石を固定してぐりぐりとなぞってみる。「もう少し強く」 何のために? だけど言われるがままぐりぐりぐり。 全部の線をなぞり終わって師匠に渡すと、師匠は固定してあった下書きの紙と黒い紙を取り除く。 石の表面に、黒く、翼の線が残っていた。「え?」「転画紙、と言う」 黒い紙をぴらぴらさせて、師匠は言った。「上から圧をかけると下に黒を残す。このような下書きを写すのに使
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第94話・教えること学ぶこと

 印は、四角い枠の中に朱色の羽根。線だけを全部残すんじゃなくて、羽根の内側は彫らなかった。そうすれば赤い羽根だって分かってもらえるだろうから。「良い」 師匠は一言で褒めてくれた。「町長の個人印としては十分合格点だ」 思わずガッツポーズ!「町長印のグリフォンと比べて遜色なく、並べて恥をかくようなことにはならんだろう」 よっしゃあああ! 空を見るともう夕暮れ。昼ご飯も食べずに集中して印を彫ってたんで、お腹空いた&喉乾いた。「師匠。町の子供たちが成人した時に、印の彫り方を教えてあげて欲しいんです」 ぼくは頭を下げた。「ふむ?」 師匠は難しい顔。「かなうなら、成人式の終了後に印を作る授業を」「……む、町の外へ出す者にもか?」 ……あ、まだ周知してなかった。「新成人は、スキルでどのような結果が出ても、それを理由に町の外へ出すことはありません」「む」「成人が町を出るのは、当人が望んだ時だけです。町で生まれた子供は生まれた時からこの町の者で、この町に住み続ける資格があります。犯罪を犯したり決まりを守らなかったりしなければ別ですが」「この町は町スキルが高いから、今はともかく将来的にはスキルで町民を選ぶかと思ったが」「それだけはしません」 ぼくは師匠の目を真っ直ぐに見て、断言した。「ぼくのスキルのレベルは1、上限が1です」「…………」「そのぼくが作る理想の町は、スキルなどで町民を選ばない……それが一番の原則です。町に住んで働きたい。そう思ってくれる、町に溶け込んでくれる人ならば、どんな人だろうと受け入れます」「……そうだな、でなければクイネほどの男を惜しげもなく食堂の親父になどしなかっただろうな」「だから、新しく成人となる人たちが満足できる印を彫らせてあげたいんです。あとで失敗したとかやり直したいとかいう人が減るように」「むう」「……ダメ? ですか?」「クレー町長」 ダムガ師匠は深々と頭を下げた。「新成人の印造りが失敗しないようにと言う心遣い、この儂の彫り方を自ら学びに来て、一町民にすぎぬ儂に頭を下げ、教えを乞うてくれる。ファヤンス……いやグランディールは良き町長を選ばれた」「師匠……」「いやいや、ダムガと御呼び捨てくださいませ。このダムガ・ミュヒュル、残りし人生を、町長に与えられた仕事に尽力いたしまし
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第95話・町長の外付け威厳

 ひっそりこの間の拉致監禁事件を突かれたので大人しく謝ってお……く……?「こらっ! エキャル!」 エキャルが猛然とサージュを突きに行ったのを慌てて抱きとめる。「ダメ! エキャル、気にくわないのを突いちゃダメ!」 バサバサバサッと翼を動かしてぼくの制止を聞かないでサージュを突こうとするエキャルを必死で抱きしめて、サージュから遠ざける。「……躾は?」「基本的に生まれつきやっていいことと悪いことは記憶しているみたいだけど、性格もあるって……」「アナイナが増えたようなものだな」 え。アナイナ?「町長がきっちり言い聞かさないと、エキャルが町民に嫌われ、ひいては町長が嫌われるぞ」 サージュの言葉に暴れていたエキャルがハッと息を飲んだように身動きした。「そう、アナイナ。エキャル、お前が町長のことが好きなのはよくわかったが、反対意見とか反論とかも聞かなきゃいけないのが町長というものだ。反対する人間を突いて回ると、町長の威厳が落ちるぞ」 人間の言葉がわかるという伝令鳥はしゅん、と首を垂れている。「だから、意見の違う程度の理由で突きに行ったらいけない。お前の飼い主は反対されるのが職業なんだから」 首がますます落ち込むように急カーブ。「お前は堂々と町長の傍に居ればいいんだ。反対意見言うヤツを町長の横で睨みつけてやればいい。睨むだけ。それだけで相手は威圧されるし町長にも威厳がつく」「伝令鳥で威厳になるの?」「なるともさ。伝令鳥……しかも高価なものを個人的に使うのは高ランク町のトップかギルド関連のトップしか持てない。エキャルラットは見た目で分かるほどトップクラスの伝令鳥だ。それがここまで懐くというのは、立派な人間であることとイコールになる。……無論、躾のなっていない伝令鳥が突いて回れば単に躾の出来ない情けない町長となる」 人間ならメモ取ってるような顔で、エキャルはうんうんと頷く。「しっかりと躾が出来た伝令鳥として、町長の威厳を上げる努力をしてくれ」 エキャルは首を縦に振る。 そして、机の上、ぼくの隣になるくらいの場所に位置取って、じろっ、じろっと周囲を見渡す。「そうそう、そういうことだ」「なら町長の左後ろ隣くらいに止まり木を作ったほうがいいんじゃ?」「そうだな。伝令鳥が睨みを利かすのにはそれがちょうどいい」
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第96話・晩御飯は出前で

「今日の話はこれで終わり?」 今日一日印を彫って、終わってすぐ会議堂来たから、もうお腹がスッカスカ。 水分は話をするからとサージュが薄めたワインを持ってきてくれたんだけど、お腹の方はもう何にもない。空いた、どころじゃない。空っぽ。「終わったんなら食堂へ行ってもいいかな……」「ああ、そろそろ来る」 その時、空間がねじれるような感覚がして、その隙間から白いものが姿を現した。「こんばんはです!」 独特のキーの高い声が届く。 ヴァリエ! ぼくを主と見做した女騎士(らしきストーカー)。久々に声を聞く気がする。確か食堂で働いていたはずだけど。「来たか」 白を基調とした清潔そうな服に身を包んだ、アナイナより結構年上のはずだけど若く見えるヴァリエが、大きな荷物を持ってきた。「……何?」 エキャルがすっ飛んでいこうとするのを、気付いて咄嗟に抱きとめる。 アナイナとの相性最悪なのに、ヴァリエと相性がいいとは思えない! そんなぼくの気配りに気付いたか気付かないか、エキャルはぼくの腕の中でじたばたしている。「わ……町長! 食事の出前を持ってきました!」「出前?」 ヴァリエが笑顔で入ってきて、机の上にとん、とん、とんと皿を置く。「ご注文のパンと、鶏肉とピーマンのナッツ炒めです!」 笑顔で言ってくれているけど、ぼくには初耳なんだけど……。「クイネが新しく始めたんだ。シエルとか陶器組とかが朝からこもって夜過ぎまでかかって食堂に来れないからどうにかならないかってんで、朝にヴァリエに注文して、時間にスキルで食堂から直で送ってもらうんだ」 ああ。 ヴァリエのスキルは移動系で、初対面の時ぼくたちを大いに驚かせた「追跡」。言葉を交わした相手の所に瞬間移動できる。うっかり喋っちゃったアパルが気付かないでグランディールに帰ってしまったものだから、空を飛んでいるグランディールまでやってきて来られてしまった悲劇。おかげで追い出せなくなった。 そのスキルを使って、言葉を交わした相手の所に食事を持って行くわけか。なるほど、上手い使い方。「ってか、いくつもの出前の注文があって、振り分けられるの? 行くところ間違えたりとか」「はい、スキルレベルを上げて、十二刻間即ち丸一日、会話の内容を覚えていれば間違えることはありません! ちなみに記憶ではなく、記録でも大丈夫です! 
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第97話・飛び立つ鳥

 会議が終わって、その翌日の夜。 会議堂の町長室に入って、ぼくは羽ペンを手に取った。 明日にはエキャルを飛ばして手紙を送れるようになる。だから、朝一番に手紙を送れるように、書いておこうと思って。 ペンをインク壺に突っ込んで、手を止める。 ……なんて書こう。 エアヴァクセンのミアスト町長は、そろそろグランディールの存在に気付いてるだろう。そしてファヤンスのデスポタ町長と並び立てるほど性格が悪い。自分が一番じゃないと気が済まないタイプ。成人式で追い出したぼくが噂の町の町長だと知ったら、絶対町を手に入れようとするだろう。お父さんお母さんをどうするか分からない。だから、町のことについては触れられない。 さて、どう書こう? しばらく考えて、ぼくは書き始めた。 お父さん、お母さん。 元気ですか? クレーです。 長い間連絡を取れなくてごめんなさい。本当ならアナイナがついてきた時点で何か連絡しなければならなかったのに。 アナイナも、ぼくも、元気です。 今は二人で、とある町で暮らしています。 町の名前とかは書けません。 でも、安全な場所で合法で平和に暮らしていることは間違いないので、安心してください。 お父さんもお母さんもアナイナのことが心配でしょう。ぼくもアナイナをエアヴァクセンに帰したいけど、事情があってそれも出来ません。 だけど、今ぼくたちは幸せに暮らしてます。 ちゃんとご飯も食べてるし、家もあってお湯にも入れてるし、キレイな服も着れています。ぼくは印も作りました。 優しい人たちに囲まれて、平和に暮らしています。 色々あったりもしたけど、ぼくたちは笑って元気で暮らしています。 お父さんもお母さんも、ぼくたちのことを心配しないでください。 もし手紙をくれるなら、この手紙を持って行った伝令鳥(エキャルラットと言う名前です)に、返事を持たせてください。もちろん、伝令鳥がぼくからの手紙を運んできたことはナイショにしてくださいね。 それでは、また手紙を書きます。 お父さんもお母さんも、お元気で。 クレー・マークンより。 最後に作った印を押して、手紙を何度も読み返す。 机の傍にいつの間にか出来上がっていた止まり木に止まっていたエキャルが首を伸ばしてくる。「これは明日お前に出してもらう手紙だからね」 エキャルの頭を
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第98話・手紙(マークン夫妻視点)

 高空を飛んでいた伝令鳥は、ゆっくりと下降を始めた。 眼下に見えるは塀の外にまで家があふれた町。数少ないSSランク、エアヴァクセン。 緋色の鳥はゆっくりとエアヴァクセンの上空に弧を描き、真っ直ぐに降りていく。 小さな家の窓につかまり、嘴で窓を叩いた。 イグニス・マークンは、その音で目を覚ました。「……なんだ……?」 長男が成人式直後に町を追い出され、長女がその後を追って姿を消してから半年以上。\\町長《ミアスト》の許可も出ないから娘を探すことも出来ない。 ずっとエアヴァクセンから出られない。 恐らくは成人前に姿を消した女など、戻ってきても受け入れはしないだろう。でも、スキルもない子供が町から出て生きていけるとは思えない。スキルに目覚めた長男も、レベル1で上限Maxになってしまい、これ以上の成長を望めず追放になっている。 もう二人とも生きていないかもしれない。 今日も、子供たちが何処かの森で倒れている夢を見た。 起きて横を見て、妻のヴォダがうなされているのを見て、そしてコン、コンと鳴り続けている窓を見る。 華やかな緋色。 黒い瞳の鳥が、窓を覗き込んで、嘴でノックしている。「伝令鳥……?」 実際に見たことがないが、その外見は噂に聞く伝令鳥でしかない。 窓を開けると、伝令鳥はふわりと入ってきて、机の上に留まった。「ヴォダ、ヴォダ」 妻を揺り起こす。美しい緋色の鳥は、首を前に突き出していた。「……ん……」 悪夢から揺り起された妻は、自分より先に伝令鳥を見たらしく、目を丸くして起き上がった。「伝令鳥……よね」 イグニスも頷く。「どう見ても、俺たちに手紙を届けに来たようにしか見えないんだが」 封入れを突き出している伝令鳥を見て、夫婦は顔を見合わせるけど、結局イグニスはそっと封入れを首から外した。 筒から封筒を取り出す。 印は鳥の羽根。恐らくは目の前にいるこの伝令鳥のもの。独特のシャープな風切り羽根。 開いてみる。『お父さん、お母さん。 元気ですか? クレーです。』「ヴォダ!」 イグニスは危うく手から滑り落ちかけた手紙を捕まえ直して、ヴォダを呼んだ。「クレーだ! クレーからだ!」「ええっ」 悲鳴を上げかけて口を押えるヴォダに頷きかけて、ベッドに腰かけて一緒に手紙を読む。『長い間連絡を取れなくてごめんなさい。本
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第99話・家族

「えーと、ここと、ここと、ここに、サインと町長印を。こっちは個人印で」 言われるがままにサインを書き、印を押す。 にしての自分の名前が短くてよかった。ヴァローレは確かヴァローレ・ヴィーゼンだったか。名前を書くのが面倒くさいとよく呟いていた。 短くても面倒なのには変わりないけどね。 もうこの一刻で名前を何回書いたか覚えてないよ! 町長って言うのは利き腕を壊す仕事だとよく言われた。やったら分かった。自分の名前を何回書いても書いてもすぐに次が来る。 印はそれほど力を入れなくてもいいけど、ぼく以外に町長印は押せないから手がくたびれる。 あ~手がおかしくなる。 そこへ、こんこん、と窓からノックの音がした。 そっちを向くと、エキャルが嘴で窓を叩いている。「エキャル?!」 出したのは昨日の朝なのに。ここからエアヴァクセンまで結構距離あるのに。翌日の夕方帰ってくるって早すぎるよ! アパルが近付いて窓を開けると、エキャルは優雅に飛んできて止まり木に留まった。「エキャル、そんなに急いで来なくてもよかったのに」 立ち上がってその頭をコリコリしてやると、エキャルは機嫌よさそうに首を伸ばす。「とりあえず休憩にするか。町長も手紙を読みたいだろうし」「ありがとう。手がヘロヘロだよ」 軽く右手を振って、グーパーして手の感覚を取り戻す。「エキャル。ぼくに急いで届けてくれたんだね。ありがとう」 エキャルは得意げに封入れが括り付けられた首を差し出した。 そこから手紙を引っ張り出す。 クレーへ、アナイナへ、と見慣れた筆跡でそれぞれ書かれた封筒二通。「アパルかサージュ……」 腰の軽いアパルが立ち上がった。「アナイナに渡してくるんだろう?」「ありがとう」 アパルにアナイナ宛の手紙を渡して、ぼくは手に馴染んできたペーパーナイフで封を切る。その間にサージュがお茶を淹れてくれた。 お茶を一口、口の中を湿らせて、封筒の中身を取り出す。『クレーへ。』 丁寧に書かれているこの字はお父さんのものだ。『無事でよかった。そして、お前を受け入れてくれる町があってよかった。どこの町にいるかは聞かないよ。父さんたちは元気だから安心しなさい。お前たちがいなくなったことで何かがどうなったわけでもないから。 それから、自分を受け入れてくれた町の人のためにしっかり働きな
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第100話・困ったトライアングル

 書類を終わらせて、行けとアパルとサージュが片付けをしてくれるので、ぼくは会議堂を挨拶もそこそこに飛び出した。 会議堂は、町の中心である元水汲み場、現水路広場の向かいにある。 食堂は門から水路広場に向かう大通りの一角。夜遅くまで明かりが灯っている。 酔客が歌いながら出て行くのと入れ替わりに食堂に入ると、ほとんど人のいなくなった食堂の一番奥の席で、アナイナは頬杖をついて待っていた。「ごめんアナイナ! 遅くなった!」「最悪の事態は避けられたからいいよ」 アナイナは嬉しそうな顔をした。「突然仕事入って来れなくなるって可能性も考えてたから」「……悪い」「いいよ。シートスとフレディにも言われたもん。お兄ちゃんは町を造った町長。町長のお兄ちゃんを独り占めしたら、町のみんなもお兄ちゃんも困るって」「うん。ありがとう。分かってくれて嬉しい」 笑って言うと、アナイナも笑って頷く。「でも、ちょっとでいいから……お仕事を離れた時は、わたしのお兄ちゃんでいてね」 そこに突き刺さる視線を感じて、ぼくは振りむ……かなくても分かった。 一つは今ぼくらが座ってるテーブルの端に陣取っていたエキャル。 もう一つはお冷を持ってきたヴァリエ。「いらっしゃいませ町長! 会いに来てくれて嬉しいです!」 レモンの果汁を一滴垂らした水がぼくの前に置かれる。 ……ヴァリエ、エキャル、アナイナの三角形に囲まれて……辛いです。 これが久しぶりに妹と食事しようという空気でしょうか。「……ヴァリエ」「はい!」「今日のお勧めは」 とヴァリエが言いかけた所にアナイナが割って入る。「炙り焼きチキンだって、お兄ちゃん」「お前は何か食べたのか?」「ううん。お兄ちゃんと一緒に食べようと思ってたから何も」「炙り焼きチキン二人前と、エキャル用に茹でた豆」 エキャルが顔を上げた。今までアナイナとヴァリエを威圧していたのが浮かれたように首がひょいひょい動いている。「はいかしこまりましたー」 途端にはっきり機嫌が悪いと分かるヴァリエの声。仲良くなったと思ってたけど、どうやら地雷を踏んだようだ。 ヴァリエが厨房の方に戻っていくと、銅鑼声がいきなりこっちにまで響き渡る。「今のがお客様に対する態度か! どんな理由があってもどんな相手であっても笑顔で出迎えるのがウェイトレス
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