「この低俗なアバズレが。よくも俺を騙し、妻を侮辱してくれたな。衛兵、この女を捕まえろ!」「はっ!」 会場の壁際にいた数名の衛兵達は、メリンダを連行していった。「いやああぁっ! 私は何もしてない! 離して! 離しなさいよぉ!」 メリンダは精一杯叫びながら抵抗したが、護身術すら学んでいない娘が、鍛え抜かれた衛兵に勝てるわけもなく、彼女はそのまま連行されていった。 それで丸く収まるかと思ったが、そうは問屋がおろさない。人々は次期国王であるゲイリーに侮蔑の目を向け、声を潜めた。「私、最初から聞いてたけど、ゲイリー王子ったら、結婚してまだ半年だというのに、あのメリンダって女を側室にしようとしてたわ」「なんだって? あの聡明なレイス嬢を妻にしておきながら、側室を取ろうとするとは、なんて奴だ」「レイス様、お可哀想……」 この声はレイスとゲイリーにも聞こえた。彼らはゲイリーが睨みつけると黙ったが、侮蔑の目は相変わらずだ。(あーあ、だから私のほうが実質上だって、あれほど教え込んだのに) この6年ですっかりたくましくなったレイスは、呆れ返りながら傍観者の立ち位置を決め込んだ。 国王、つまり、ゲイリーの父親は、眉間にシワを寄せ、立ち上がる。「皆の者、うちの愚息が騒ぎを起こしてすまない。興ざめしただろう。本日はもう終いだ」 国王の一言で、人々は散り散りになる。ほとんどの衛兵達は、客人達の見送りをする。広い会場にいるのは、ふたりの衛兵、国王、ゲイリー、レイスのみ。「ゲイリー。それと、すまんがレイスよ。少々残ってくれ」 国王はゲイリーには険しい顔つきで、レイスには申し訳無さそうに言うと、ふたりの前へ進み、ゲイリーを平手打ちする。乾いた音とゲイリーのうめき声が、がらんとした会場に響く。「この愚か者が!」「何にお怒りなのですか、父上」「そんなことも分からんのか、貴様は! お前はレイスという妻がありながら、あのような騒ぎを起こしおって!」「お言葉ですが父上。あの女は赤髪だと判明し
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