メスガキ無双〜気弱王妃の華麗なる反逆〜 のすべてのチャプター: チャプター 21 - チャプター 30

38 チャプター

21話

「この低俗なアバズレが。よくも俺を騙し、妻を侮辱してくれたな。衛兵、この女を捕まえろ!」「はっ!」 会場の壁際にいた数名の衛兵達は、メリンダを連行していった。「いやああぁっ! 私は何もしてない! 離して! 離しなさいよぉ!」 メリンダは精一杯叫びながら抵抗したが、護身術すら学んでいない娘が、鍛え抜かれた衛兵に勝てるわけもなく、彼女はそのまま連行されていった。 それで丸く収まるかと思ったが、そうは問屋がおろさない。人々は次期国王であるゲイリーに侮蔑の目を向け、声を潜めた。「私、最初から聞いてたけど、ゲイリー王子ったら、結婚してまだ半年だというのに、あのメリンダって女を側室にしようとしてたわ」「なんだって? あの聡明なレイス嬢を妻にしておきながら、側室を取ろうとするとは、なんて奴だ」「レイス様、お可哀想……」 この声はレイスとゲイリーにも聞こえた。彼らはゲイリーが睨みつけると黙ったが、侮蔑の目は相変わらずだ。(あーあ、だから私のほうが実質上だって、あれほど教え込んだのに) この6年ですっかりたくましくなったレイスは、呆れ返りながら傍観者の立ち位置を決め込んだ。 国王、つまり、ゲイリーの父親は、眉間にシワを寄せ、立ち上がる。「皆の者、うちの愚息が騒ぎを起こしてすまない。興ざめしただろう。本日はもう終いだ」 国王の一言で、人々は散り散りになる。ほとんどの衛兵達は、客人達の見送りをする。広い会場にいるのは、ふたりの衛兵、国王、ゲイリー、レイスのみ。「ゲイリー。それと、すまんがレイスよ。少々残ってくれ」 国王はゲイリーには険しい顔つきで、レイスには申し訳無さそうに言うと、ふたりの前へ進み、ゲイリーを平手打ちする。乾いた音とゲイリーのうめき声が、がらんとした会場に響く。「この愚か者が!」「何にお怒りなのですか、父上」「そんなことも分からんのか、貴様は! お前はレイスという妻がありながら、あのような騒ぎを起こしおって!」「お言葉ですが父上。あの女は赤髪だと判明し
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22話

 安定期に入り、つわりも治まったレイスは、学会に顔を出そうと考えた。未発表の数式も、いくつかまとめてある。これらを発表し、忘れられないようにしたかった。「ねぇ、ゲイリー。私、そろそろ学会に行こうと思うの」 レイスの言葉に、ゲイリーは顔をしかめる。「ダメだ。万が一のことがあったら困るだろう」「けど、しばらく顔を出してなかったし……。未発表の数式だって……」「レイス。今1番大事なのは、お腹の子と君の体調だ。学会には、出産して落ち着いてから行けばいい」「忘れられたりしないかしら?」「何言ってるんだ。あれだけ素晴らしい発表をしてきた君を、誰が忘れると言うんだ。君が発表してきた数式や理論で、この国は一気に効率よくなったし、便利になった。君は偉人となる人物だ」 ゲイリーが言う理論というのは、科学や化学を指している。この世界には化学も科学もなかったから、そう呼ばれるようになった。 彼の言う通り、レイスが発表してきた論理や算数・数学のおかげで、国はいい方向に変わっていった。以前は発光石と呼ばれる魔石に魔力を注いで光らせ、夜はその光で過ごしていた。発光石には欠点が多々あった。魔力が切れるまで光り続けるため、魔力を注ぎすぎてしまうと、就寝時も光り続ける。それに毎日魔力を注がなくてはならない。 だが、レイスが電球の仕組みについて発表してから研究や開発が進み、今では平民の富裕層までは電球で暮らすようになった。今は更に安い電球を作るために、研究が進められている。 レイスが開発した分度器や定規は大工や仕立て屋から好評で、以前より正確に建物や衣服を作れるようになった。他にも功績があり、数えだしたらキリがない。「頼むから、君はもっと自分を大事にしてくれ」「えぇ、そうするわ」 レイスがうなずくと、ゲイリーは安堵し、彼女を優しく抱きしめる。「分かってくれて嬉しいよ。さぁ、座って。君の仕事は、贈り物を開けることだよ」 ゲイリーはレイスを椅子に座らせる。テーブルとその横には、各国や国内の王族や貴族からの贈り物が積まれている。「あなた
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23話

 それからレイスは、最低限の公務と、魔法の練習代わりに、発光石に魔力を込めた。発光石自体は比較的安価で、子どものお小遣いでも買えるような値段だ。 レイスが魔力を込めた発光石は、電球を買えない平民達に、黒塗りのカップと共に配られた。発光石の光はそこまで強いものではなく、黒塗りのカップを被せてしまえば、ほとんど気にならない。 暇つぶしを主な目的とした慈善活動は平民達から大変喜ばれ、レイスの支持率はまた上昇していった。 月日が流れ、破水し、陣痛が来た。それはゲイリーとふたりでお茶をしている時に起きた。ゲイリーはバルトに医者を呼ぶように言いつけ、レイスの背中をさすり、手を握ってくれた。 波のような陣痛や、体が引き裂かれそうな出産の痛みを乗り越え、元気な女の子を出産した。「レイス様、元気な女の子ですよ」 助産師がレイスに産まれたばかりの赤子を抱かせてくれた。「あぁ、アンナ……!」 娘を抱きしめる幸福感は、前世にある記憶に勝る。この幸福を、すべての人に分け与えたくなるほどに幸せだ。「よく頑張ったな、レイス」「ありがとう……。あなたも抱いてあげて」「い、いいのか?」「王子も、是非」 助産師はレイスからアンナを受け取ると、ゲイリーに抱かせた。ゲイリーは恐る恐るアンナを抱き、嬉しそうに我が子の顔を見つめていた。(前世では、こんなに喜んでくれなかったのに……) ゲイリーが愛おしそうにアンナを抱く姿を、レイスは不思議な気持ちで眺めていた。 出産を終えたレイスは、寝室に運ばれた。王族や貴族は自分の城や屋敷で出産をすることが多い。そのため、すぐに慣れた寝室に行ける。「本当に、お疲れ様。ゆっくり休んでくれ」「えぇ、そうするわ……」 ベッドに横になると、一気に疲れが押し寄せ、そのまま眠った。 アンナは医師が健康状態を確認すると、あらかじめ雇っていた乳母が、一時的に預かることになっている。記憶が正しければ、乳母は1日3回、レイスの元へアンナを連れてきていた。そしてレイスが子育て
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24話

「ねぇ、あなた」「なんだ?」「こんなタイミングで聞くことではないのかもしれないけど、王位継承式っていつ頃するのかしら?」「あぁ、それなんだが、俺も分からなくてな」 ゲイリーは困り顔でため息をつく。「そうなの?」「あぁ……。ほら、メリンダの件があっただろう? それで父上が、『最低限でも、子供が産まれてレイスが安定するまでは王座はやれん』って言われてな。最低限ってことは、レイスが安定した後も、まだ王位継承しない可能性だって充分ある」「そうだったのね」「やっぱり、不甲斐ないよな……」 ゲイリーは肩を落とす。ほとんどの国は、王子が結婚したら王位を継ぐことになっている。ルシアーナもそうだ。結婚して1,2年してから継承式を行うこともある。その期間で父王は王子に王としての役割を教えるのだ。 だが、ゲイリーとは結婚してもうすぐ3年になる。彼としては面白くないし、羞恥もあるだろう。「いえ、そんなことありません。あなたは王子としても、夫としても立派です。その証拠に、私は今まで王位継承のことをすっかり忘れていたのですから」「では、何故今思い出したんだ?」「私の父にも、国王様にも、はやくアンナを見せたいと思って、ふたりのことを考えて気づいたのです」「そうか。レイス、お前は優しいな」 ゲイリーはレイスをそっと抱きしめ、額にキスをしてくれた。愛されていることを実感し、幸せを噛みしめるように目を閉じる。 扉がノックされ、返事をすると若い女性が入ってきた。女性は能面のように表情がなく、何を考えているのかまったく読めない。見たことのない女性だ。どうやらゲイリーも彼女を知らないらしく、困惑していた。「誰だ?」「まずは、ご出産おめでとうございます。私は乳母のジュディスと申します。アンナ様のお世話をさせていただきます」「乳母だと? セイラを雇ったはずだが?」「セイラさんのお子様が馬車に轢かれたそうで、看病をするために急遽辞退なさいました」「そんな話は聞いてないが、事情が
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25話

 30分もすると、ゲイリーが戻ってきて、本を数冊、サイドテーブルに置いてくれた。「フレアージュ公爵に使いを出した。父上に会う前に出したから、もう少ししたら来るだろう」「ありがとう、あなた」 ゲイリーの言葉通り、彼が寝室に戻った10分後にアルフレッドが来てくれた。手には赤ちゃん用の玩具を持って……。「レイス、よくやったな。この子が私の孫か。なんて可愛いんだ……」 アルフレッドははやくもアンナにデレデレで、緩みきった顔でゆりかごを覗いていた。「アンナっていうの」「アンナ! いい名前だ。ということは、女の子か。アンナ、お爺様だぞ」 小さなぬいぐるみを振りながら、アンナをあやす。「父上、お呼びしたのは、アンナを見てもらいたかったからなのですが、別に理由がありまして……」「なんだ?」「俺から話そう。君は水分を取って」 ゲイリーは水差しの水をグラスに注ぐと、レイスに手渡す。「ありがとう」 レイスは水をゆっくり飲みながら、アンナを横目で見る。「実は……」 ゲイリーは本来ならセイラというベテランの乳母が来るはずだったこと。自分達になんの知らせもなく乳母が変更し、あまりにも若いジュディスが来たこと。ジュディスの様子が怪しかったことを、アルフレッドに説明した。「ふむ、確かに怪しい話ですな……。そんな若い乳母、少なくとも貴族に相手にされんでしょう。友人や知り合いの赤子を見に行った時に様々な乳母を見てきたが、若くても30手前だ」「ゲイリーと父上には、ジュディスを調べてほしいのです。ふたりでそれぞれ調べて、情報を擦り合わせた方が、確信が持てるでしょう?」「あぁ、分かった」「必ず私が突き止めよう」「ありがとう、ふたりとも」 レイスがふたりに調査を頼んだのは、まだゲイリーを信じきれないからだ。今のところ良き夫で、アンナを愛しているようだが、好みの女性に流されやすい傾向があるような気がしていた。「ところで、アンナはどうするんだ? 
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26話

 翌日、ゲイリーは寝室の前に衛兵を置き、調査に向かった。レイスも短剣を枕の下に忍ばせた。いつジュディスが襲いかかってくるか分からないからだ。 おかげでアンナがいないというのに、まったく休まらない。虚しい休日だ。 だが、虚しい休日も1日で終わった。夕方に父のアルフレッドから魔便りが届き、ゲイリーも報告しに現れた。「レイス、もう大丈夫だ。安心してくれ」「ということは、分かったの?」「あぁ。それは、フレアージュ公爵の魔便りか?」「そうよ。あなたの話を聞いてから、こっちも確認してみましょう」「分かった。まず、ジュディスの正体だが、アマンジュ家の使用人だ」「アマンジュ家って、まさか……」「メリンダの家だ」 ゲイリーは苦々しい顔で言う。彼もメリンダをよく思っていないのだろう。半分は責任転嫁、半分は自業自得だが、メリンダが彼を誘惑していなかったら、とっくに王位に継いていたのだから。「ジュディスには、病弱の母親がいるらしい。だが、アマンジュ家の給料では足りなかったのだろう。アマンジュ夫人……。つまり、メリンダの母親の宝石を盗んで、それを売った金で薬を買ったり、生活費にしたりしてた。夫人は、使えると思ったのだろうな。ジュディスの給料を上げてまで、手元に置いといたんだから」「酷い話ね……」「あぁ、まったくだ。メリンダは投獄されただろう? その逆恨みで、アンナを殺すようにとジュディスに命令したようだ」「逆恨みもいいところじゃない……。けど、どうやって送り込んだのかしら? セイラはどうしたの?」「セイラだが、彼女の子供が馬車に轢かれたのは本当だ。だが、仕組まれた事故の可能性が高い。そちらは現在調査中だ」「人の子供を事故に遭わせるだなんて、どこまで自分勝手なの……」 怒りが沸々と沸き上がる。同時にアンナを殺された日のことも思い出してしまった。自分の子供を殺されるのがどれだけ辛いことか、レイスは痛いほど分かる。「にしても、調査はやかったわね」「苦手な催眠魔法で、ジュディス本人に吐かせた。た
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27話

 アンナが産まれた2年後、城内には王位継承式を見守るために、大勢の貴族が押し寄せた。 王位継承式は出会いの場でもあり、未婚の女性は小さな花束を持っている。結婚したいと考える女性は花束を持ったままだが、まだ結婚を考えていない女性は、新しい王に花束を渡す。 未婚の男性は胸に好きな花を1輪挿し、王位継承式の後に行われる立食形式の食事会で、花束を持つ女性に声をかける。また会いたいと思えば、花を交換する。 この風習はずっと昔からある。当時の王達が、「せっかく幸せの国と呼ばれているのだから、王位継承式では、皆に新しい幸せを手に入れてほしい」と考え、始めたと言われている。 今回も花束を持った女性や、胸に花を挿した男性が大勢いる。 談笑をしている貴族達で城内はにぎやかだったが、合図のラッパが鳴ると静まり返る。王の風格を感じさせる曲が演奏されると、立派な王冠をつけた国王が入場する。国王が壇上にある玉座の前に立つと、演奏が終わる。国王は貴族達を見回すと、口を開いた。「これより、王位継承式を始める」 再び演奏が始まると、ゲイリーとレイスが入場する。レイスはゲイリーの数歩後ろを歩く。こういった場では何が起こるか分からないため、ボリューム控えめのドレスを着て、腰にレイピアを装着している。「ゲイリー様がいよいよ国王になられるのね」「レイス様、とても凛々しくて麗しいですわ」 若い女性の声がレイスの耳に届く。(女性に褒められるのって、なんでこんなに嬉しいのかしら?) ちらりと声がする方を見ると、若い女性が目を輝かせながらレイスを見ている。軽く微笑んでみると、黄色い声があがった。(いつの時代も、かっこいい女性って人気よね。できればスラックス履いて男装の麗人になりたかったけど、王位継承式でそんな格好するわけにはいかないものね) 壇上に上がると、ゲイリーは国王の前に立ち、レイスは壇上の隅に置かれた椅子に腰掛ける。レイスの向かいには、木で編んだ椅子が置かれていた。「ゲイリーよ。幸せの国・ルシアーナの民を導き、より幸福にする覚悟はあるか?」「もちろん
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28話

 女性の取り調べは、レイスの師匠でもあるジェネロルが行うことになった。古びた狭い石造りの取調室で、ふたりはテーブルを挟んで向かう合う。女性は鎖で木製のボロボロの椅子に縛り付けられており、忌々しそうにジェネロルを睨みつけている。ジェネロルの斜め後ろには小さなテーブルがあり、記録係が記録魔法を発動していた。 レイスとゲイリーは、別室で魔鏡を使い、取り調べの様子を見守る。 アンナはハンスと彼女のお気に入りの侍女が面倒を見てくれている。「ゲイリー。本当に彼女を知らないの?」「見覚えはあるが、思い出せないんだ……。いったいどこで見たんだ……?」 ゲイリーは唸りながら、魔鏡越しに女性を見つめていた。「まずは名前から聞かせてもらおう」 ジェネロルが険しい顔で女性に問う。「シャーリィ・ホワイト。父は子爵です」 シャーリィが名乗った後に、レイスはちらりとゲイリーを見る。彼が未だに思い出せないらしく、小声でシャーリィの名前を繰り返しながら、眉間にシワを寄せていた。「何故、王位継承式で新陛下を襲った?」 ジェネロルの質問に、シャーリィの顔は悪鬼のようにおぞましいものになった。「あの男が私を裏切るからよ! あの人は昔、『妻にするなら、君のような子がいい』って言ってくれたのに……!」「あー!」 シャーリィが叫ぶように応えると、ゲイリーが声を上げる。その声量に、レイスは顔をしかめて耳を塞ぐ。「あ、いきなり大声を出してすまない」「思い出したの?」「あぁ、思い出した……」「私は! ゲイリー様と結婚するはずだったのよぉ!」 ゲイリーの言葉を遮るように、シャーリィが叫ぶ。「あなたの話は、取り調べが終わってから聞くわ」「あぁ……」 ふたりは魔鏡をじっと見つめる。「落ち着いてくれ。我々は真実を知りたい。何があったのか、ゆっくり話してくれ」 ジェネロルはテーブルの上にある水差しからグラスに水を注ぐと、拘束されているシャーリィ
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29話

「あの頃、父上が結婚を意識しろ、女性に言い寄ってみろと言ってたんだ……。その時の俺は、まだ13歳だったのに。それで、声をかけたのが彼女だったんだよ……」 ゲイリーは苦々しい顔で魔鏡を見つめたまま語る。「ある意味あなたも被害者ね……」 レイスは内心ハンスを軽蔑した。ゲイリーがメリンダを側室にしようとした時は、まさか彼が息子をそそのかし、乙女心を弄ぶような人だとは思いもしなかった。ハンスもおそらく、深く考えずに言ったのだろう。それがこんな事件を招くなど、誰が考えただろう。「このまま投獄されるなんて納得できない。レイス様は魔剣士と聞きます。私も、剣術は習ってきました。レイス様と決闘させてください」 シャーリィの願いに、誰もが絶句した。師匠も、夫も、レイス本人も。「私は、レイス様に剣術や、魔剣士の心得などを教えてきた。だから分かる。お前では彼女は倒せない。それに、お前は死罪となる罪人だ。王妃と会うことすら不可能だ」 ジェネロルはシャーリィを睨みつけ、咎めるように言う。「私、行ってくるわ」「行くって、取調室にか? やめろ」「このまま彼女が死罪になったら、彼女は一生浮かばれない」 レイスは制止するゲイリーを振り切り、移動魔法で取調室に入った。突如現れた王妃に、取調室にいた3人は目を丸くして彼女を見つめる。「シャーリィ・ホワイト。あなたの望み通り、決闘をいたしましょう」「王妃! いけません」 慌てて止めに入るジェネロルに、レイスは笑いかける。「師匠、やらせてください」「しかし!」「ルールは変えます。決闘と言っても、命を奪ったり、怪我をするようなことはしません。シャーリィ。あなたの取り調べの様子は、魔鏡で見ていました。陛下にも非があります。ですから、決闘を受けます。ですが、内容は私に決めさせてください」「自分に有利なものにするのでしょう?」「いいえ。一応確認ですが、あなたはどのような勝負をお望みですか?」「剣よ。私だって、剣術は学んできたわ」「へ
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30話

 紙製の剣と白い服は、その日の夕方に届けられた。紙製の剣は愛用しているレイピアの何十倍も軽く、扱うのが難しい。「相手に当てるだけなのだから、力を抜いて振った方がいいわよね?」 レイスは力を抜きながら剣を振ってみる。剣は風を切りながら振り下ろされ、折れた。「力加減の練習しないといけないわね」 苦笑しながら新たな剣を持つ。紙製剣のストックは、20本ある。それはシャーリィの元にも送られた。明日、必要だったら更に数本追加される予定だ。 そして3日後。闘技場にはレイス、シャーリィ、ゲイリー、ハンス。そして審判のジェネロルがいた。「ルールは紙製の剣を相手の体に当てたら1本。ただし、顔や飛沫はノーカウントとする。魔法の使用は禁止」 ふたりはお互いの魔法封じの石を交換し、互いに魔法が使えないことを確認すると、紙製の剣に塗料を塗っていく。レイスは青を、シャーリィは赤を塗る。 準備を終えたふたりは剣を構え、向かい合う。ゲイリーとハンスは、客席からその様子を見守った。「では、第1試合、はじめ!」 ジェネロルの声で真っ先に動いたのはシャーリィだ。彼女は剣を下から上へ斜めに斬り上げるように動かす。この攻撃は全面広範囲に届くため、下がるしか避ける方法はない。レイスはバックステップで避けると、シャーリィの腕が上まで振り上がった瞬間を狙い、剣を突きつける。 青い塗料が、シャーリィの脇腹に付着した。「くっ……!」「1本! 両者元の位置へ」 ジェネロルに従い、ふたりは再び定位置に立ち、剣を構える。「第2試合、はじめ!」 今度はレイスから仕掛ける。剣を振り上げると、シャーリィは防御の構えに入る。レイスはくるりと回りながら剣をシャーリィの剣に当たらないように動かし、彼女の脇腹に当てる。「……っ!」 シャーリィは言葉を失い、その場に座り込んでしまう。「勝負あり! レイス王妃の勝利!」 ジェネロルが声を張り上げると、客席にいたゲイリーとハンスは安堵の息をつく。「いい勝負でし
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