午後2時、いつもはレイスが嫌味を言われながら様々なことを学ぶ勉強部屋の空気はピリついていた。4人掛けのテーブルには、レイスとアルフレッドが向かい合って座っている。その間に、家庭教師の男が、2枚の紙を持って立っていた。「では、まずは問題の確認からしてください」 家庭教師は2枚の紙をテーブルの真中に並べる。紙にはそれぞれ算数の問題が書かれている。片方には10問、もう片方には15問。10問は同じ式だ。2桁の問題は3問程度で、残りは1桁の問題となっている。「本当に良いのか?」「えぇ、かまいません」 小馬鹿にするようなアルフレッドの目を真っ直ぐ見て、返事をする。その態度が気に入らないのか、アルフレッドは顔をしかめ、家庭教師を見上げる。「お前も聞いたな?」「はい。レイスお嬢様は同意なさいました」 家庭教師がうなずくと、アルフレッドは満足げな顔をする。レイスはうんざりしながらその光景を見て、自分の変化に気づく。記憶が戻る前なら、こんな提案もしないし、このような場面になったら、怖気づいていた。だが、今は心に余裕がある。玲海の負けん気が、レイスにも伝染したような感じがする。(不思議。今なら誰にも負けない気がするし、どこまでも努力できる気がする) アンナの笑顔が思い浮かび、今の自分は齢12歳にして、母の愛も持ち合わせ、それが力になっていることに気づく。「はやく始めましょう。父上はお忙しいのでしょう」「生意気な。だが、お前の言う通りだ。こんな茶番、さっさと終わらせよう。おい」「かしこまりました」 家庭教師が詠唱すると、ふたりの間に仕切が出現し、仕切の真上には砂時計が浮遊した。「制限時間は30分。砂時計の砂が落ちきるまでです。それでは、はじめ!」 家庭教師の合図と共に、砂が落ち始める。レイスはすらすらと問題を解いていった。小学1,2年生がやるような問題は、玲海の記憶を保持しているレイスには簡単すぎた。 レイスは5分足らずで問題を解くと、わざと音を立てて筆を置く。そうすることによって、終わったことをアルフレッドに気づかせ、焦らせる作戦だ。作戦はうまく行ったらしく、仕切の向こうから悔しそうな唸り声が聞こえてきた。(父上って、案外プレッシャーに弱いのね。なんか可愛い) 更に追い打ちをかけてやろうと、家庭教師を見上げ、にっこり笑う。家庭教師はぎょっとした顔
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