メスガキ無双〜気弱王妃の華麗なる反逆〜 のすべてのチャプター: チャプター 11 - チャプター 20

38 チャプター

11話

 午後2時、いつもはレイスが嫌味を言われながら様々なことを学ぶ勉強部屋の空気はピリついていた。4人掛けのテーブルには、レイスとアルフレッドが向かい合って座っている。その間に、家庭教師の男が、2枚の紙を持って立っていた。「では、まずは問題の確認からしてください」 家庭教師は2枚の紙をテーブルの真中に並べる。紙にはそれぞれ算数の問題が書かれている。片方には10問、もう片方には15問。10問は同じ式だ。2桁の問題は3問程度で、残りは1桁の問題となっている。「本当に良いのか?」「えぇ、かまいません」 小馬鹿にするようなアルフレッドの目を真っ直ぐ見て、返事をする。その態度が気に入らないのか、アルフレッドは顔をしかめ、家庭教師を見上げる。「お前も聞いたな?」「はい。レイスお嬢様は同意なさいました」 家庭教師がうなずくと、アルフレッドは満足げな顔をする。レイスはうんざりしながらその光景を見て、自分の変化に気づく。記憶が戻る前なら、こんな提案もしないし、このような場面になったら、怖気づいていた。だが、今は心に余裕がある。玲海の負けん気が、レイスにも伝染したような感じがする。(不思議。今なら誰にも負けない気がするし、どこまでも努力できる気がする) アンナの笑顔が思い浮かび、今の自分は齢12歳にして、母の愛も持ち合わせ、それが力になっていることに気づく。「はやく始めましょう。父上はお忙しいのでしょう」「生意気な。だが、お前の言う通りだ。こんな茶番、さっさと終わらせよう。おい」「かしこまりました」 家庭教師が詠唱すると、ふたりの間に仕切が出現し、仕切の真上には砂時計が浮遊した。「制限時間は30分。砂時計の砂が落ちきるまでです。それでは、はじめ!」 家庭教師の合図と共に、砂が落ち始める。レイスはすらすらと問題を解いていった。小学1,2年生がやるような問題は、玲海の記憶を保持しているレイスには簡単すぎた。 レイスは5分足らずで問題を解くと、わざと音を立てて筆を置く。そうすることによって、終わったことをアルフレッドに気づかせ、焦らせる作戦だ。作戦はうまく行ったらしく、仕切の向こうから悔しそうな唸り声が聞こえてきた。(父上って、案外プレッシャーに弱いのね。なんか可愛い) 更に追い打ちをかけてやろうと、家庭教師を見上げ、にっこり笑う。家庭教師はぎょっとした顔
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12話

「レイスお嬢様は、20問すべて正解でございます」「なんだと!? 見せてみろ!」 アルフレッドは、家庭教師からひったくるようにレイスのテストを奪うと、まじまじと見る。怒りで真っ赤になっていた顔は、みるみる間に青ざめていく。「た、確かにあってる……。い、イカサマだ! イカサマをしたに違いない!」「いえ、それはできないかと……」「何!?」「レイスお嬢様は、アルフレッド様より先に問題を解いてしまいました。それに、11問から20問は、アルフレッド様のテストにはございません」 それでも納得できないのか、アルフレッドは鬼のような形相でレイスを睨む。「ご納得されないのでしたら、私が考えた数式を解いてみてください」「なんだと!? 馬鹿にしているのか!」「いいえ、違います。私のテストの裏を見てください」「裏だと?」 アルフレッドは怪訝な顔をしながら、テストをめくる。裏には掛け算と割り算の問題が、それぞれ5問ずつ書いてあった。「なんだ、これは」「私も見たことがありません」「私が考案した数式です。この数式を使えば、今までの計算がもっと楽になります」「馬鹿馬鹿しい。お前にしか解けない式では、勝負にならん!」「もちろん、解き方はお教えします」「いい加減にしろ!」 我慢できなくなったアルフレッドは、テーブルに拳を叩きつける。これにはレイスも恐怖を覚え、固まってしまう。「レイスお嬢様、是非ともご教授願えますかな?」  助け舟を出したのは、以外にも家庭教師だった。彼は興味深そうにレイスが書いた数式を見ている。「おい」「お言葉ですがアルフレッド様。勝負はすでについておられます。何より、レイスお嬢様はこのように新しい数式を発明しました。人に教える立場として、新しい知識は吸収せねばなりません」 アルフレッドは舌打ちをするも、レイスの数式に目をやる。「では、まずこちらの掛け算から説明します。この×というのは、左側の数字を、右の数だけ倍にします。ですので、この3×4=という式は、3が4つで、答えは12となります」「なんと革新的な!」「まさか、お前がここまで優秀だったとは……」 掛け算の説明を聞いただけで、ふたりはすっかり感心しきって、レイスを称賛した。「次に割り算ですが、左側の数字の中に、右の数字がいくつあるか計算するものです」「それがいったいなん
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13話

 父から許可をと協力を得ることに成功したレイスは、今まで以上に習い事に力を入れた。今まではやる気がなかった馬術もひとりで馬に乗れるまで成長し、魔法も基本的なものさえ習得できればいいと考えていたが、アンナの件で、それだけではないと学び、なんとか中級魔法まで使えるようになった。ちなみにレイスの年齢で中級魔法を扱えるのは、10人にひとりほどの割合だ。 問題は剣術だった。まずは木刀で練習をするのだが、この木刀が意外と重く、一振りするのも一苦労。見かねた師範・ジェネロルは、短刀を模した木刀に変えてくれた。 短刀になることで、レイスでも簡単に振るえるようになったのはいいが、今度は相手との距離が近くて怖くなってしまう。「ごめんなさい……。ジェネロル様……。私、剣術向いてないのでしょうか?」 母としての愛情や痛みを分かっているとはいえ、まだ12歳。思うように上達せず、挫けそうになる。「謝ることはありません、レイス嬢。あなたはよくやっています。私はあなたを誇らしく思いますよ」「え?」 予想もしてないジェネロルの言葉に顔を上げると、彼は優しく微笑んでいた。「剣を握ろうとする女性はほとんどいません。貴族となると、なおのこと。ですから、私はレイス嬢が興味を持ち、懸命に学ぼうとしてくれるだけで充分嬉しいのです。それに、木刀といえど、重たいのですから、今のあなたには、数回素振りが出来ただけでも充分」「それでは、いけません」「レイス嬢?」「私は、守りたい者がいるのです。そのためにも、強くならなきゃ……」 再び木刀を握ろうとすると、ふわりと抱きしめられる。その体温は高く、少し汗臭い。ジェネロルは小声で何か言ったが、聞き取れない。「ジェネロル様?」「あなたは、あなた様は、なんて気高いのでしょう。まだお若いのに、そのような覚悟を持っていたとは……。このジェネロル、必ずやあなた様を立派な魔剣士にしてみせます」「ジェネロル様……!」 感動で胸が震える。兵士はざっくり2つにわかれる。ひとつは剣や盾などの武具のみで戦う騎士や剣士。そして、武器と魔法を駆使して戦う魔剣士。 魔剣士は魔法が使えればなれるというわけではない。魔法を使いながら戦うのは、右手と左手それぞれ別の絵を描くような難しさがある。大半は魔法か剣術のどちらかに傾いてしまい、中途半端な戦い方になって命を落とす。 
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14話

 公爵家令嬢というのは、人前で完璧に振る舞うことを求められる。テーブルマナーはもちろんのこと、些細な所作まで見られる。だから大半の令嬢は現代でいうマナー講師をつけているのだが、レイスはそれを断った。 アルフレッドは何か言いかけたが、レイスが紙とペンを見せると押し黙った。 レイスのすることに口出しをしないと約束をしたものの、世間体を気にするアルフレッドは、過去に1度だけ口出しをした。やはり剣術は必要ないのではと言われたのだ。 その時、紙とペンを出し、「私に解けない問題が出せるのなら言うことを聞きます」と言ったら、彼なりに問題を出した。だが、レイスにとってその問題を解くのは、赤子の手をひねるよりも楽な作業だった。問題をすらすら解かれて以来、アルフレッドが口出しをしようとする度に、こうして紙とペンを見せるようにしたというわけだ。 前世の記憶でマナーや所作が完璧なレイスは、ますます剣術や魔法の修行に力を入れる。 フレアージュ家の使用人達は、レイスは人知れず努力してマナーなどを学び、習い事をこなしていると思い込み、レイスを尊敬したり心配したりした。「レイスお嬢様、たまにはお休みになられたらいかがですか?」 そう声をかけられたのも、1度や2度ではない。少しでも早く上達したいレイスは休むつもりなどなかったが、ジェネロルまで休むように言ってきた。師範に言われては、休むしかない。 だが、大人しく部屋で休んでいるようなレイスではなかった。 休日、レイスはノートや筆記用具を持って、王立図書館へ足を運ぶ。王立図書館に立ち入ることができるのは王族と貴族のみ。 小説の類をあまり置かないせいか、王立図書館の常連は学会に赴くような中高年男性が多く、まだ15歳にもなっていない少女のレイスは浮いていた。(あの辺がいいかしら) 数や数式について書かれた本が並ぶ本棚に目をつける。そこには先生と呼ばれるような人物が何人もいる。おまけに、本棚の近くにはテーブルが置いてあった。 レイスはテーブルに座ると、ノートを広げ、式を書いていく。答えがマイナスになる引き算、この世界にはない筆算や掛け算。そして因数分解。 2ページ分ほど書くと、その問題を解いていく。「失礼、お嬢さん。それは何かな?」 初老の男性は、立派なあごひげを撫でながら、興味深そうにレイスのノートを覗き込む。その男の名は
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15話

 13歳になったレイスは、友人達とお茶会をする。そこに予期せぬ人物が現れた。将来側室となるメリンダだ。メリンダは装飾過多なドレスを身にまとい、誰よりも目立っていた。 彼女はレイスを見つけると、ニヤニヤしながら近寄ってきた。「あなたが才女と噂のレイス? なんかぱっとしなぁい。同じ公爵家の娘でも、こんなに差があるのね。メリィは愛されてるから、こんなに素敵なドレスや宝石をパパとママにもらってるけど、あなたといったら、なにその貧相なドレス。平民かと思ったわ。きっと、愛されてないのね。だから必死に勉強してるんでしょ?」 メリンダはレイスのつま先から頭のてっぺんまで見て、クスリと笑う。メリンダに同調するかのように、周りの少女達もクスクス笑う。(侮るなよ、日々SNSでレスバをし、新古問わず様々なアニメや映画でネットミームの元ネタ作品を網羅してきた私のレスバ力を) この頃になると火野玲海の記憶はすっかり馴染み、自分の記憶と認識していた。「メリンダ、あなた何歳?」「え?12歳だけど? なに、おばさん」 メリンダのおばさん呼ばわりにくすくす笑う。「うっわ、着飾ってばっかで頭わるーい♡ てか、12歳なのに自分のこと自分の愛称で呼ぶとか、はずかしー♡ きんもー。中身空っぽなの見え見え♡《あなたのご両親は、着飾ることばかり覚えさせて、肝心の中身を育てなかったのですね。自分のことを名前や愛称で呼ぶのが可愛いとされるのは、5歳まででなくて?》」 静かに微笑みながら返すレイスに、メリンダはゆでダコのように顔を真赤にして怒る。「なによ、おばさん!」「はぁ? おばさん? まだ13歳だし、あんたとひとつしか変わらないんですけどー? そもそも結婚できる歳でもないし。《おばさん? あら、では来年あなたはおばさんね。それに私達、まだ結婚できる年齢でもありませんのよ? 同じことを、あなたのお母様に言えるのですか?」「ママは関係ないじゃない」「ぷぷ、公爵家の娘なのに、親のことまーだパパママって読んでるの? だっさぁ♡ 未熟を若さと思い込んでるとか、勘違い乙でーす。《あなたの言動には、幼稚さが滲み出ていて、とてもひとつ下の令嬢と話している気分にはなれませんわ。4,5歳の子供を相手してる気分になります。私のお友達に公爵家令嬢は他にも何名かおりますが、ご両親をパパママなど、甘えた呼び方を
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16話

 魔術師の先生と馬術の先生から太鼓判を押されたレイスは、時間が出来た。その出来た時間でお茶をしつつ、これからどう動くべきかを考える。 この世界は、前世と少し違った動きをしている。ほとんどが記憶通りなのだが、メリンダと1年も早く会ったのは予想外だった。もしかしたら他にもそういった異変が起きるかもしれない。なら、どう対策を取るべきか? 何かいい策はないかと、火野玲海の記憶を手繰り寄せる。 数学、アニメ、映画などでごった返した火野玲海の記憶から、とあるゲームのワンシーンが鮮明に浮き出る。「味方を増やそう」 思い出したのは、有名なRPGシリーズだ。主人公パーティにいる姫が、実は赤子の頃にすり替えられた偽物だと判明し、兵士達に追いかけられる。そんな姫を救ったのは街の人々。姫は慈善活動に力を入れ、人々の暮らしを豊かにしていった。そうした功績が国民の心を動かし、危険を犯してまで姫を助けた。「幸せの国と言われてても、きっと何か不満はあるはず」 レイスは簡単な設計図を書いて部屋を飛び出すと、敷地内にある小屋を訪ねた。「ファベル、ちょっといい?」「おぉ、レイス嬢ではありませんか」 小柄で小太りの老人が、人懐っこい笑みを浮かべる。彼はファベル。屋敷のメンテナンスをしたり、物を直したり作ったりしてフレアージュ家を支えている。「実は、作って欲しいものがあるのよ。これなんだけど」 レイスは先程書いた設計図を見せた。設計図に描かれているのは箱。上に長方形の穴が空いており、後ろの面はスライド式で開閉できるようになっている。「作るのは構いませんが、この箱はなんですかな?」「目安箱よ」「めやす、ばこ?」「そう。ここに、領地の人達に改善してほしいことを書いた紙を入れてもらうの。それで少しでも皆の暮らしを豊かにできたらいいなって思って」「おぉ、なんと素晴らしい! うーむ、そうですなぁ。そんな大事な箱なら、ここはスライド式で開くのではなく、ドアのように開閉できるようにして、鍵をかけてはいかがですかな?」「確かに。それなら大事な皆の声を
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17話

 翌日、午前中に学会で化学の基礎を発表し終えると、噴水広場に行った。「わぁ、すごい……!」 目安箱は見違えた。テーブルに屋根と壁をつけたような小屋が建ち、目安箱はそこに設置されていた。目安箱はテーブルに置かれ、隣には箱がおいてある。「これなら、目安箱がうっかり噴水に落ちることなんてないでしょう」「本当にありがとう! ところで、この箱は?」「その箱には紙と鉛筆が入ってるのさ。わざわざ家で書いて入れに来るのもめんどうだからね」 昨日の中年女性が言う。きっとこの箱も、彼女が用意してくれたものなのだろう。「皆、本当にありがとう! 私、この領地をもっと快適に暮らせるように頑張るから」「お礼を言うのはこっちの方さ」「そうそう。公爵家の娘さんが、ここまで考えてくれるなんて、思いもしなかったからな」「頼んだぞ、お嬢ちゃん」 彼らの声に胸がいっぱいになる。自分のために始めたことだが、今は彼らのために頑張ろうと心から思える。 目安箱を設置してから、レイスの生活はまた少し変わった。午前中は魔剣士になるための修行、午後は目安箱の確認や、実現させるべきものを見極めたりする。時折学会に顔を出しては数式や化学、科学の基礎を発表していった。 レイスの名は貴族間、平民、学会に轟き、彼女の名を知らない者はほとんどいなくなった。その噂はもちろん王族にも届いたらしい。レイスが学会から返ってくると、父のアルフレッドが興奮気味に話しかけてきた。「すごいぞ、レイス。王子が是非ともお前に会いたいと言っている。ほら、招待状だ」 招待状を受け取ると、明日の午後2時に城に来るように書いてあった。(こっちの予定も考えないで、横暴なんだから) 明日の午後は目安箱を見に行く予定だった。だが、いくら知名度が高いレイスでも、断れば罰せられる可能性が高い。それに目安箱なら、行く前に回収して馬車の中で確認すればいい。「分かりました。明日、城に行ってきます」「あぁ、行ってきなさい。そうだ、今から明日着ていくドレスやヒールを買ってや
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18話

 城に着くと、執事のバトラが出迎えてくれた。(この人は……!) 忘れもしない。忘れられるわけがない。前世でレイスとアンナを引き離し、まだ生きているアンナを、焼却炉に放り込んだ張本人だ。できることなら今すぐ殴ってやりたいが、問題を起こすわけにはいかない。何より、彼はアンナのことなど知る由もないのだ。「レイス・フレアージュ様でいらっしゃいますね? ご多忙の中、足をお運びいただき、ありがとうございます。ゲイリー王子がお待ちです。どうぞこちらへ」 バトラの案内で応接室に行く。中に入るとゲイリーが本を読んでいた。(抑えろ抑えろ抑えろ……) ゲイリーには、バトラ以上の殺意が湧く。長年レイスとアンナを苦しめ、我が子を見殺しにした男。どう考えても、幸せの国の王にふさわしくない。「君がレイスか。噂は聞いているよ。様々な数式を発表したり、自分の領地に住む住人達がより快適に過ごせるよう、努力しているそうだね」 「領主の娘として当然のことをしているだけですわ」 なんとか殺意を抑え、作り笑いをする。実質3度目の人生とは言え、まだ精神が未熟だ。感情を抑え込むのに苦労する。 「謙虚さも兼ね備えているとは素晴らしい。是非、君と結婚したい」 「お言葉ですが、ゲイリー王子。私達はお互いをよく知りません」 「政略結婚というのは、そういうものだろう」 レイスの言葉に、ゲイリーは不思議そうな顔をする。 「えぇ、ですが、すぐには決められませんわ。私にも選ぶ権利がございますから」 「なんだと?」  ゲイリーの目に怒りが滲む。貴族の娘達は王子と結婚したがる。だから、断られるなど微塵も思っていなかったのだろう。何より、王族の申し出を断る自分を許せないのだろう。ゲイリー・バーネットとは、そういう男だ。 「少し成果をあげたからって調子に乗るなよ。この俺が結婚してやると言っているのだから、喜んで受け入れればいいんだ」 「で、出たー。モラハラ男♡ 原始人並のお古思考♡ 幸せの国の次期国王が男尊女卑とかみっともなぁ♡   平民以下♡ 名ばかり王子♡《結婚とは、男女が支え合うものです。幸せの
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19話

 数日後、レイスは魔法で使用人のひとりに変身したゲイリーと共に、学会へ赴くことになった。百聞は一見に如かず。お互いのことを知るのなら、お互いの生活に触れるのが手っ取り早いということになった。 1回目はゲイリーがレイスを知るために、学会に着いてきたというわけだ。今日のゲイリーは王子という身分を一時的に捨て、レイスが発表してきた数式や科学などに興味を示した遠い親戚のリードという青年ということになっている。「コネサンス様。こちらは遠い親戚のリードです。私が発明した新しい数式などに興味を持ち、遠路はるばるやってきてくれました。彼に良い席を用意してもらえますか?」「もちろんですとも。ささ、リード殿。是非こちらにおかけください」「ありがとうございます」 コネサンスは嫌な顔ひとつせず、リードを最前列に座らせた。講義が始まるまで、まだ時間がある。レイスは控室へ行き、今日発表する数式のおさらいをした。 時間になると、再び講義室へ向かう。コネサンスはリードに話しかけている。ここからではほとんど聞こえないが、熱心なコネサンスのことだ。きっとリードに今まで学んできたことなどを教えているのだろう。「皆様、本日もお忙しい中お集まりいただき、感謝します。私が本日発表するのは、角度についてです」 レイスは紙で作った大きな分度器を黒板に貼る。手元に見本がなくても、正方形の紙さえあれば作れるものなのだ。「分かりやすくするために、皆様の分も作ってきました。今から配りますので、そのまま座ってお待ち下さい」 レイスは彼らのために用意した手のひらサイズの分度器を配っていく。これは1種のパフォーマンスだ。本来なら、魔法で一瞬で配り終える。それをわざわざ手間をかけて配ることで、尊敬の念を集めた。「おぉ、レイス様自らが教材を作り、お配りしてくださるとは……!」「なんと素晴らしい。家宝にさせていただきます」 彼らは神からの施しを受けるかのように、恭しく頭を下げ、両手で紙製分度器を受け取る。リードは怪訝そうな顔をしながらも、彼らを真似て受け取った。「ではまず、角度とは何か、どういったことに使え
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20話

 月日は順調に流れ、レイスが18歳になると、彼女はゲイリーと結婚した。 この時既に、レイスは魔剣士として認められ、学会経由で世界に名を轟かせていた。その知名度や支持率は、ゲイリーを遥かに上回っていた。レイス側の出席者も、学者や剣士が多く、ゲイリー側の出席者達は軽くどよめいていた。 ここまで来るとゲイリーのメンツ潰しもいいところではあるが、この男にはこれくらいがちょうどいい。 すっかり紳士になったゲイリーとの生活は、前世の記憶と比べると遥かに快適だった。ゲイリーも使用人達も、レイスに嫌がらせをすることがない。今のレイスにはある意味王族よりも力があった。もしレイスが嫌がらせをされたと零せば、学者や彼女の領地の人間はもちろんのこと、世間が許さないだろう。 幸せの国と言われた国の次期国王が、妻を不幸にしていたとあっては、大問題だ。他国からの信用を失い、貿易が止まる可能性もある。そういったことをほのめかしたおかげか、ゲイリーも使用人達も、レイスを貴重な壊れ物のように丁寧すぎるくらいに扱ってくれた。 だが、人の根本はそう簡単に変わらないらしい。結婚して約半年後、社交パーティーでレイスが学者と話をしていると、メリンダがゲイリーに近づいていた。ゲイリーは彼女を突き放すどころか、馴れ馴れしくメリンダの肩を抱いていた。 それに気づいたレイスは、学者との会話を切り上げ、ふたりに近寄る。「ゲイリー、何をしているのかしら? 私、結婚する際、浮気も側近を作ることも許可しないと言ったはずですが?」「いや、これは……」 おどおどしているゲイリーの隣で、メリンダはクスクス笑う。「やだぁ、嫉妬なんて醜いわ。それに、側室を作るのは、少しでもお世継ぎを残す可能性を増やすためでしょう? それを禁止するって、時期王妃失格じゃない?」 メリンダは言ってやったと言わんばかりのドヤ顔でゲイリーの腕に抱きつき、レイスを見下す。(忘れたようだな、私のレスバ力を) メリンダを言い負かすことなど容易い。だが今回は、それ以上に面白いものを、レイスは握っていた。「それに、ゲイリー王子と私が子を作れば、
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