翌日。 空はよく晴れていた。 佳苗はいつもより少し早く家を出る。「行ってきます」 玄関でそう声を掛けると、雄吾がリビングから顔を上げた。「ああ」 いつものように頷く。 それだけかと思った。「終わったら連絡しろ」 その一言に、佳苗は思わず笑みをこぼす。「はい」 静かに頷き、ドアを閉めた。 電車へ揺られながら窓の外を眺める。 あの日、この街を泣きながら歩いた自分が嘘のようだった。 あの頃は何も持っていなかった。 仕事も。 自信も。 未来も。 でも今は違う。 だから、ちゃんと終わらせよう。 そう思えた。 約束の時間より少し早く着くと、三浦が先に待っていた。「おはようございます」「おはようございます」 三浦は穏やかに微笑む。「昨夜は眠れましたか?」 佳苗は苦笑した。「少しだけ緊張してしまって」「それで普通ですよ」 三浦は優しく頷く。「ただ、あまり構えなくても大丈夫です」「はい」「先方からは、こちらの条件に異論はないと聞いています」 佳苗は静かに息を吐いた。「もちろん、その場で細かな確認はあると思います。でも、必要以上に心配しなくて大丈夫ですよ」 その言葉に肩の力が抜ける。「ありがとうございます」 三浦は時計へ目を向けた。「そろそろですね」 その言葉とほぼ同時に、入口が開いた。 悟だった。 スーツ姿のまま、一礼する。 その後ろには、相手方代理人の弁護士が続いていた。 佳苗はゆっくり立ち上がる。 以前のような恐怖はない。 怒りもない。 ただ静かに頭
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