数日後。 佳苗は朝から請求書の確認に追われていた。 月末が近い。 取引先ごとに金額と締め日を確認し、不備があれば担当部署へ戻す。昼休みまであと十分というところで、営業部から一通のメールが届いた。「……金額、違う」 添付された発注書と請求データが一致していない。 佳苗はすぐに担当者へ連絡した。「この案件、発注書は八十六万円ですけど、請求データが九十六万円になってます」『え? あ、本当だ』「このまま処理できないので、確認して修正お願いします」『今日中?』「締めが今日なので」『分かりました』 電話を切り、該当箇所に付箋を貼る。 その様子を見ていた同僚が笑った。「榊原さん、相変わらず細かいですね」「十万円違いますから」「まあ、そうですけど」 佳苗は次の書類を手に取った。 すると別の社員が、冗談めかして言う。「でも榊原さんにとって十万なんて、もう誤差みたいなものでしょ?」 佳苗は顔を上げた。「どういう意味ですか?」「旦那さん社長だし」「会社のお金と私の夫は関係ないですよね?」「あ、いや、そういう意味じゃなくて」「十万円違ったら困るから確認してるんです」 相手が気まずそうに笑う。「真面目だなあと思って」「仕事なので」 それだけ答え、佳苗は作業へ戻った。 ◇ 午後、修正されたデータが届いた。 確認すると、今度は問題ない。 処理を終えたところで、上司に呼ばれた。「榊原さん、さっきの件ありがとう。危なかったね」「いえ。締め前に気づけてよかったです」「最近ちょっと処理件数増えてるけど、大丈夫?」「はい。ただ、急ぎの依頼が重なると厳しい日もあります
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