ローゼンは決意した。非常に。とても。ものすごく。決意した。負けられない。絶対に。何にとは言わない。だが負けられない。「殿下」側近が声をかける。「なんだ」「何をなさっているのでしょう」ローゼンは真顔で答えた。「焼き菓子を作る」側近は頭を抱えた。またである。最近の王子は厨房によく出没する。料理長から苦情が来る日も近い。王宮厨房。ローゼンは腕まくりをした。前回。サンドイッチは失敗した。惨敗だった。歴史的大敗北だった。しかし。今回は違う。焼き菓子である。材料を混ぜるだけ。簡単だ。たぶん。おそらく。きっと。料理長は不安しかなかった。一時間後。何かが完成した。「どうだ」ローゼンが聞く。料理長は見た。焼き菓子だった。ちゃんと焼き菓子だった。奇跡だった。「殿下」「なんだ」「前回より百倍良いです」「そうか」ローゼンは少し嬉しかった。ちょろかった。翌日。学院。中庭。ルピナス達は今日も集まっていた。「ダリアー!」「なんですの」「ケーキ!」「知っていますわ」「マーガレットー!」「なんですの」「ケーキ!」「意味が分かりませんわ」平和だった。その時。ローゼンが現れる。しかも。紙袋を持って。ダリアが嫌な予感を覚えた。マーガレットも覚えた。フジだけは平然としていた。「ルピナス」「なに?」「作った」ルピナスは紙袋を受け取る。中を見る。焼き菓子だった。しかも。普通に美味しそうだった。「え?」ルピナスが固まる。「本当に作ったの?」「ああ」「一人で?」「料理長が三回止めた」「止められてるじゃない」ローゼンは黙った。事実だった。ルピナスは焼き菓子を一つ食べる。もぐもぐ。もぐもぐ。沈黙。全員が見ている。判決の時間だった。そして。ルピナスが言った。「美味しい」ローゼンが固まる。「本当か」「本当よ」「本当に?」「本当に」ローゼンは天を見上げた。少し泣きそうだった。ダリアは呆れた。マーガレットも呆れた。王子が焼き菓子でここまで喜ぶとは思わなかった。その時だった。フジが一つ食べる。全員が見る。フジは数秒考えた。そして。「前回より良い」と言った。ローゼンは感動した。人生で初めて。フジに褒められた
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