「ルピナス様」翌日。珍しくダリアの方から声をかけた。ルピナスは驚いた。「どうしたの?」「少しお時間を頂けます?」「もちろん!」ダリアは少し言いづらそうだった。珍しい。いつも堂々としている彼女が言葉を選んでいる。人気のない中庭。二人だけになったところで。ダリアが口を開く。「本当に大丈夫ですの?」ルピナスは首を傾げた。「何が?」「全部ですわ」意味が分からなかった。全部とは何だろう。ダリアはため息をついた。「殿下のことです」ああ。そっちか。ルピナスは納得した。「大丈夫よ」「本当に?」「本当に」「強がりではなく?」「違うわ」ルピナスは笑った。前世なら。強がりだったかもしれない。でも今は違う。「ダリア」「なんですの」「私ね」ルピナスは空を見上げた。青空だった。「昔は誰かに好かれることばかり考えていたの」ダリアは黙って聞く。「嫌われたくなくて」「認められたくて」「必要とされたくて」「ずっと頑張ってた」ルピナスは少し笑う。「でも疲れちゃったの」その言葉に。ダリアの胸が少し痛んだ。ルピナスはいつも笑っている。明るい。元気。能天気。でも。時々だけ。年齢以上に大人びた顔をする。それが少し気になっていた。「だから今は」ルピナスが言う。「自分を大事にしたいの」ダリアは言葉を失った。それは。当たり前のことのはずだった。でも。貴族社会では難しい。特に王妃候補ともなれば。なおさら。「そうですわね」ダリアは小さく頷いた。「それで良いと思いますわ」ルピナスが笑顔になる。「ありがとう!」「近いですわ!」顔が近かった。ダリアは思わず押し返した。その時。後ろから声がした。「何をしている」フジだった。ルピナスは元気よく答える。「友情を深めてるの!」「そうか」フジは頷いた。ダリアは思った。この人達。本当に会話しているのかしら。するとフジが言った。「ルピナス」「なに?」「昼食は食べたか」またそれだった。「まだよ」「そうか」フジは鞄から包みを取り出した。サンドイッチだった。「え?」「厨房に作らせた」「私に?」「ああ」ルピナスは固まった。ダリアも固まった。なぜ作った。なぜ持ってきた。なぜタイミングが完璧なんだ。
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