パシャッ、というフラッシュの残像が網膜から消えるより早く、一条の警備網は完璧に作動した。「結衣を車へ!」 隼人の鋭い指示と同時に、私服警備員たちが結衣の小さな体を包み込むようにして防弾仕様の高級セダンへ退避させる。 一方、路地裏へ逃げ込んだフリー記者の荒木は、すぐさま待機させていた逃走用のバンに飛び乗った。「へへっ、天下の一条の新会長と、その隠し子……。特大スクープだぜ」 荒木は息を荒げながら、機材のモニターを開く。周囲の雑音を完全に遮断するアクティブノイズキャンセリング機能付きの高性能ヘッドホンを耳に当て、隠し撮りした結衣の映像を食い入るように確認し、下卑た笑いを漏らした。 だが、そのノイズキャンセリングの静寂が、自らの死角を作ったことに彼は気づいていなかった。 ドンッ! 突如、バンの後部ドアが外側から乱暴にこじ開けられた。「なっ……!?」 ヘッドホンをむしり取られ、荒木が振り返るより早く、屈強な男たちの手が彼の首根っこを掴み、アスファルトへ引きずり出した。「痛ぇっ! 何すんだ、報道の自由——」 喚く荒木の腕は背後に回され、関節を的確に極められる。抵抗を許さない、一条の特殊警備部隊による完璧な制圧だった。 男たちはカメラのメモリーカードを無造作に抜き取ると、冷酷な目で荒木を見下ろした。「一条の領域を侵した代償は、お前の人生すべてで払ってもらう」 *** 数時間後。一条財閥・地方支社の会長室。「兄さん。結衣ちゃんを狙った記者の身柄とデータは完全に確保しました」 凜がタブレットを手に報告する。「背後にいたのは三流週刊誌『月刊真実』。桐島典子が持ち込んだ嘘の悲劇を真に受け、特大のゴシップとして世間にバラ撒こうとしていたようです」「……そうか」 執務机に座る隼人の声は、底知れぬ凄みを帯びていた。「結衣を標的にした。その事実だけで奴らが、この世に存在する理由はなくなった」「承知いたしました。法務部および広報部、全権をもって対処します」 凜がタブレットをタップした瞬間、一条という巨大な権力機構が一介の出版社を社会的に抹殺するための歯車を回し始めた。 その日の昼過ぎ——『月刊真実』の編集部に、数十名のスーツ姿の男たちが雪崩れ込んだ。一条グループが誇る最強の法務チームだ。「な、なんだ、あんたたちは
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