――聖帝国暦六四五年十月下旬。 星ヒンデンブルクを揺るがした反乱は、終結した。 聖堂周辺に残っていた旧教皇派の武装勢力も次々に武器を置き、首都ニデルではようやく銃声が途絶えていた。 ……が、平穏が戻ったわけではない。 帝国軍は今なおルドミラ領内へ侵攻を続けている。 さらに増援として、二個正規艦隊と十個師団もの惑星地上軍が向かっているとの情報も入っていた。 内乱に勝利したからといって、喜んでいる暇などなかったのである。 旧教皇庁の大会議室には、ルドミラの主要人物たちが集められた。 中央の議長席に座るのは、エロー枢機卿である。「では、始めましょう」 エローが静かに告げた。「旧政権は崩壊しました。しかし、国家そのものまで失ったわけではありません。我らは一刻も早く新たな統治体制を作り、旧帝国軍への防衛を継続せねばなりませぬ」 軍人、聖職者、地方領主、商会の代表者たちが頷いた。「問題は、誰を暫定政府の首班とするかですな」 一人の司教が口を開く。「エロー猊下では?」「いや」 エローは即座に否定した。「私では旧帝国軍を防げません」 その言葉に、室内が静まり返った。「我らだけで独立を維持できるという考えは、もはや捨てるべきです。旧帝国中央政府との国力差はあまりに大きい」「では、どうなさるので?」 エローは用意していた書類を机上へ置いた。「暫定政府の首班には、アストレア聖帝国皇帝ユリウス一世陛下に就任していただきます」 ざわめきが広がった。「外国の皇帝を首班にするというのか?」「それでは事実上の併合ではないか!」「事実上ではありません」 エローは淡々と言った。「併合されるのです」 今度こそ、会議室が沈黙した。「ルドミラ教国という国号は廃止します。我らの全宙域はアストレア聖帝国へ編入され、以後、この地域をルドミラ総管区と称します」「……そこまで話が進んでいたのですか?」「はい」 エローは悪びれなかった。「旧帝国軍に滅ぼされるか、アストレア聖帝国の一員となるか。私は後者を選びました」 一人の地方領主が腕を組んだ。「我らが宗教はどうなる?」「ルドミラ教会は存続します。信仰、典礼、寺院運営については広範な自治が認められます」「軍は?」「帝国軍へ編入されます」「税は?」「当面は現行制度を維持し、段階
Read more