「二階堂颯真。専門は心臓外科。現院長の一応次男。兄はそこにいる神楽。あんまり似ていないのは、連れ子同士の他人だからってことで……」結局……流れで外科病棟まで案内するかたちになった紅。颯真は仕事中なのもかまわず、あっさり外科病棟のスタッフを集め、自己紹介をはじめた。噂のマトになりやすい、プライベートなこともしっかり絡めて。「何かは質問は?」コソコソ喋りだす看護師たち。紅は隣で苦虫を噛み潰したような顔をした神楽を見上げた。「……そのくらいにして、希望者は颯真を誘って酒でも飲みに行って話せ」低い声で呟いた神楽の言葉に、一番に反応したのは颯真自身だった。「いいね!……それじゃ、俺の歓迎会やってよ。えーっと、そこのアオムシの君!」「……は?」指先がしっかり紅を指す。……嫌な予感がバッチリ当たった。それになんだアオムシの君って……神楽まで、白けた顔で見下ろした。「……それじゃ細かいことはまた話し合って決めましょう。ね?片桐さん」「はぁ……」看護師長がその場をおさめるように言ったにすぎないが、これで幹事が誰か知れ渡ったような格好……でもこの場面でうなずけないわけにいかない。歓迎会なんて面倒くさいもの、どうしてやってほしいなんて思うのか。……私だってやってもらってないのに。「アオムシの君とは?……颯真とどこで会った?」外科病棟の医局。奥にある神楽の部屋に戻ったところで聞かれた。「あ……その、先ほど分院に行った帰りに裏庭を通りまして、そこで声をかけられたんです」「裏庭……」「植物にアオムシがついてたんです。それを取れって言われて……」しどもろもどろで説明するも、途中で笑われてしまった。「……俺も見たことある!綺麗に咲いてるな、と思ったらでっかいアオムシがクネってて!あいつ、それを君に取れって言ったのか……?!」「そう、なんです。すごい太った虫で、とてもじゃないけど触れないし、なのに颯真先生が後ろから押すから」……ややウケどころか爆笑だ。手を叩いて笑う神楽。こんな100%の笑顔、高校時代にも見たことがない。「……眩しい」初めて見る神楽の笑顔は、眩しいという言葉がぴったりだった。「ん?……なんか言った?」「いえ、」母親の連れ子として育ったとしても、颯真と同じ教育を受けさせてもらい、こんなに立派な病院を任せてもらっている…
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