「なんだ、これ……」 帰宅後、紅は神楽と封筒を開けた。 中には、古い通帳のコピーやトオキ屋の株主構成がわかる資料、そして…… 「芹沢専務……それからさつきさんとも、」 にこやかに肩を組んで笑う芹沢の表情は完全にビジネス向きのそれだ。秘書をしていたからわかる。 でも…… 「この写真、まだ新しいな。あの別荘で写したものだと思うが……」 「この夏、あの別荘に来たんですね」 海外進出を決めたことを祝って?……いいえ、お互いにとって得だと判断しなければそもそも手を組んだりしない。そして手を組んだら、これまでの苦労を労い合ってお祝いの席を設けるなんてこと…… この2人がするとは思えなかった。 だとしたら、 「どうして芹沢専務があの別荘に?」 父はあの海辺の別荘に、家族か家族に準ずるものしか入れたがらない。 だから今回、プールサイド社員が集まっていたのを見て珍しいと思ったのだ。 「……それに、これもな」 さつきと父の濡れ場の写真だった。 「明らかな不倫の証拠。これだけでも離婚の理由にはなりますね」 写真はどれも、アングルから隠し撮りしたと思われる。 父のそばには必ず美沙がいたことから、これは彼女が撮ったものだと思うのが自然。 けれど、美沙がなぜ…… 長年片桐家の家政婦で、父の信頼はさつきに対するものより高かったかもしれない。 大人しく、見ざる言わざるを貫けば、絶大な信用に値する退職金を支払われ、平和に余生を過ごすこともできたのに。 「紅、もうひとつ封筒が入ってるぞ」 封筒のなかに、さらに封筒? ひと回り小さいそれの封を開けてみると、そこに意外な書類を見つけた…… 「……何を考えてる?」 「神楽さんのこと……」 「……嘘ばっか!」 美沙に渡された封筒を確認して、難しい顔をする紅から封筒を奪った神楽。 一旦終わりにして食事にし、入浴を済ませてベッドに横になったところだ。 神楽がバスルームに行ったあと、紅はもう一度封筒を確かめ、美沙からの小さなメモ書きが一緒に入っていたことに気づいた。 「奥様を助けてください。旦那様は昔から、奥様の名前を勝手に使っています」 その証拠が、同封されていたあの書類? 開いた書類の一番上には母の名前があった。……債権者、片桐咲子
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