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アジアンロマンス ~私を平気で裏切ったあなたには、最高の罰で償ってもらいますから~
アジアンロマンス ~私を平気で裏切ったあなたには、最高の罰で償ってもらいますから~
作者: 天衣 琴音

冬の朝の来訪者

last update 公開日: 2026-06-08 20:56:28

悪い夫にはどこかで罰が下る。そう思う私は愚夫の妻。どこにでもいそうなありふれた女だ。

そして、夫も平凡を絵に描いたような、普通の会社員である。夫の性格は悪い。

「このクズ野郎!」

私は夫に怒りをぶつけた。

「なんだと。だれが稼いで飯が食えてると思ってる?」

夫は居直った。

「はあ? 何様のつもりなの? つまんねぇ昭和の台詞ね」

「つまらなくていい。こっちには仕事があるんだ。おまえを養う義務もな」

「思い上がっちゃって。そんなんで、よく浮気したわね」

「浮気はしてないよ」

夫は平然と否定し、首を振った。

「嘘つけ! 私には分かるわ。シャツにいつもと違う香りがしたのよ」

「だから言ってるだろ? 帰りの電車が混んで、知らない女の香水かなんだかがついたんだろって」

昨晩、夫の浮気でケンカになった。こんな風景は、我が家では日常茶飯事だ。

そして、ケンカが収まらず、二人とも相手を無視し、黙ったまま朝の支度をした。

そんな冬の朝のことだった。年も明けた一月八日。少し曇り、ときどき太陽が顔を覗かす。

夫はこちらを見向きもせず、バタバタと出て行った。

それを奥で確認し、私はIHコンロのボタンを押して加熱を止めようとした。

夫が出て行って、ゆっくりとリプトンの紅茶を飲もうとした。お湯は沸いていた。

「おーい。カオリ」

玄関で聞き慣れた声がした。

嫌な夫が戻って来た。

私はツカツカと歩き、玄関を覗いた。

玄関で夫は立ったまま、私に指示を出す。

「忘れ物をした。机の上のUSBメモリ、取ってきてくれ」

「知りません」

「こら! 急いでるんだ」

「自分でどうぞ」

「フン。分かったよ」

夫は玄関で靴を脱ぎ、ふてくされて上がり込んだ。

小さな机の上にノートパソコンが置いてある。そこに挿しっぱなしになったUSBメモリを、ピンと抜いた、

「バーカ」

夫の背中に悪口を浴びせた。

「行ってくるぞ」

じつに忌々しげな言い方だ。腹が立つ。 

「うるさい。早く行け!」

私は顔を背け、玄関を指さした。

玄関でバカな夫が、まだぶつくさと文句を唱えている。

「なにさ。おまえが悪いんだろ?」

そんな風に毒づきたくなる。

「今晩も遅くなるぞ。飯はいらないからな」

夫は飯か仕事のことしか考えてない。USBメモリも仕事で使うのだろう。家にまで仕事を持ち込まないで、と私は思う。

でも、コロナのときはひどかった。家の中でリモート会議をし、四六時中家にずっといた。そんな風にして居座られるのが、嫌でたまらなかった。家事がはかどらなかった。息抜きすらできなかった。

夫がバタンとドアを閉め、私は指で口を引っ張った。

「いーだ!」

やっと、つまらぬ相棒がいなくなってくれた。

「おっと、私としたことが」

ガラス窓を光で照らす朝陽の中、ゆっくりと紅茶を飲もうとして、お湯を沸かしていたのを思い出した。

慌てて、IHコンロのボタンを押し、加熱を止めた。充満していた蒸気は収まった。

お湯をティーカップに注ぎ、リプトンのティーパックをそこに浸す。

しばらくして、ティーパックを三、四度上げ下げし、小さな皿にティーパックを寝かせた。

やっと熱い紅茶をいただける。

テーブルにティーカップを置き、ゆっくりと紅茶を啜った。

しばらくは、自由なひとときが楽しめる。

てっきりそう思った。いや、会社員の夫が出て行ったのなら、どんな妻でもくつろぎの時間を過ごすだろう。夫を見送れば、朝は落ち着く。

ちょうど、いい具合に洗濯機が終了の音を鳴らした。

一つ伸びをし、いつも聞くラジオをかけた。

パーソナリティの声が耳に心地よい。夫もこれくらいにいい声で、穏やかだったらなぁ。

ラジオをかけながら、洗濯機から洗濯物を出し、ベランダに向かった。

冬の朝は少し肌寒い。

冬の空に朝陽がまぶしい。

ベランダの物干し竿に、洗濯物を丁寧にかけてゆく。

ふいに、冬空を割って、何かが一閃した。黒い鳥のようなものが、私めがけて猛突進で飛来する。

「と、鳥!」

イヤー! 手で顔を覆った。

強い痛みが額に走る。

と同時に、気を失った。

私は失神してしまった。

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