All Chapters of 性悪婚約者に見世物にされた私を連れ去ったのは、黒い噂の財閥会長でした: Chapter 51 - Chapter 53

53 Chapters

51話

 翌朝、百合は目を覚ます。多少寝不足ではあるが、ここで二度寝をしたら、昼過ぎまで寝てしまう気がして、無理やり起きて身支度を整える。 キッチンに行くと、ルリが百合の朝食を並べていた。言いたいことがあったのに、秋明の姿は見当たらない。「おはよう、ルリちゃん」「おはようございます、奥様。旦那様は今日から出張だそうですよ。少なくとも、2日は帰らないとおっしゃっておりました」「そう、ありがとう」 それこそ昨晩言うべきことではないかと思うが、本人がいないのに言っても仕方がない。百合は朝食を食べ終えると、自室でパンフレットを見た。 独立した式場もあれば、ホテルの式場もある。あの秋明が選んだのだから、どこも広々として豪華なのだろう。「ずっと家にいても仕方ないし、見学にでも行こうかしら」 百合は好みの式場をいくつか選ぶと、ネットで予約をした。最後の予約を入れようとしたところで、愛佳からメールが届く。『百合ちゃんどうして来ないの? 具合悪いの? 大丈夫?』 どうやら愛佳達には休んでいる理由は知らされていないようだ。「なんて返信すればいいのかしら……」 悩んだ挙げ句、『家庭の事情でしばらく休むことになったの、ごめんね』と送った。愛佳からは『大変だね。よかったら息抜きに付き合うから、その時は連絡して』とすぐに返信が来る。 百合はお礼のメールを送ると、スマホの電源を落としてからパンフレットに目を向ける。 それから2日、百合はドレスのアイディアが欲しくて式場の見学をしていたが、ピンと来るものがない。秋明のことだから、きっとラグジュアリーな式になるはず。そう思うと緊張してしまい、思い浮かばないのだ。 2日目の昼。式場から出ると聞き馴染みのある声がした。「あれ、百合ちゃん?」 振り返ると愛佳がにこやかに手を振っている。「愛佳ちゃん、どうしたの?」「今日はおやすみなの。百合ちゃんは、こんなところで何してるの?」 愛佳は不思議そうに式場を見上げる。「ちょっと時間ができたから、歩いてたの」 誤魔化そうと咄嗟に嘘をついたが、愛佳の不思議そうな顔はそのまま。「式場から出てきたけど?」 百合は必死に頭を回転させ、次の嘘を見繕う。「実は、知り合いからウエディングドレスとタキシードのデザインを頼まれてたのよ。今日はインスピレーションが欲しくて、式場に来ただけ」
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52話

 近くのファミレスに入ると、百合はパスタとドリンクバーを注文する。今のファミレスはほとんどがタブレット注文で、気楽でいい。「百合ちゃん、私飲み物取ってくる。百合ちゃんは何がいい?」「ありがとう。じゃあ、メロンソーダお願いしていい?」 普段は甘いものはあまり飲まないが、ほどよい甘みと炭酸は、気分転換にちょうどいい。「OK、氷は入れる?」「少しだけ」「分かった」 百合は愛佳がドリンクバーへ向かうのを途中まで見送り、スマホでドレスを画像検索する。大勢のセレブにお披露目するドレスだ、下手なものは作れない。 夢中でスクロールしていると、足音が近づき、グラスを置く音がした。顔を上げると、愛佳が青い液体が入ったグラスを持っている。「ごめーん、今メロンソーダのシロップっていうの? が、ないみたいで、店員さんに補充頼んだから。そのかわりに、はい、これ」 愛佳は百合の前に青い炭酸ドリンクを置く。小洒落た喫茶店ではよく見るが、ファミレスではほとんど見ない色だ。「これは?」「期間限定のブルーソーダだって」「へぇ、夏でもないのに、変わった期間限定ね」 ひと口飲むと、どこかで飲んだような味。炭酸ドリンクなんてそんなものだろうと、気にもとめずに喉を潤す。「そういえば、祐介くんがいきなり会社辞めちゃったんだよね。どうしたんだろ?」 どう切り出そうか悩んでいた話題を、愛佳の方から切り出してくれた。百合はこれ幸いと話に乗る。「そうだったの? そんな素振り、なかったけど」「百合ちゃんが休み始めたのと同じ日に来なくなったから、一部の人はふたりがデキてたんじゃないかなんて言ってたけど、そんなことあるわけないじゃない? 笑っちゃうよね」「えー、そんなことになってたの? ないない」「だよねぇ?」 安直な妄想スキャンダルに、ふたりで笑う。こういったスキャンダルを盲信しないのが、愛佳のいいところだ。 ひとしきり笑ったところで、配膳ロボットが料理を運んできた。それをきっかけに話題が変わる。だが、百合はそれどころではない。(なんでこんなに眠いの……?)「この前すっごい可愛いコスメ見つけちゃって、百合ちゃんもきっと気に入ると思うんだよね。まだ時間ある? よかったら食べ終わった後に見に行かない?」「うん……」「それと、百合ちゃんに似合いそうな服をたくさん置いてるショップ
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53話

「ん……」 目が覚めると百合は、ガーリーな部屋にいた。ゆっくり体を起こすとまだ頭がぼーっとする。どうやらベッドで寝かされていたらしい。 ぼんやりしながら室内を見回すと、ピンクのベッドに、ピンクのクッション。カーテンもカーペットもピンク。壁際のデスクは白とピンク。使われているモチーフはいちごやハートなど、愛らしいものばかりで、どこかむずがゆい。 可愛い部屋だが、壁紙が台無しにしていた。「なによこれ」 壁紙には百合の写真とラフがびっしり貼られている。写真は明らかに盗撮されたもので、百合以外の人物は黒く塗りつぶされていた。 それだけでも充分恐ろしいのに、ラフに描かれた人物は百合に似ている。「何よ、ここ……。私、どうしてこんなところに?」 百合は今日あったことを振り返ってみる。「確か、式場から出て、愛佳ちゃんと会って……」 ファミレスで強烈な眠気に襲われたことを思い出す。前にネットで見た、睡眠薬の知識と同時に。 睡眠薬は悪用を防ぐために、液体に溶けると青くなるように作られていると、ネットの記事やショー度動画で見たことがある。愛佳が持ってきたブルーソーダは、本当はメロンソーダだったのだろう。睡眠薬で変色していただけで。 状況からして、ここは愛佳の部屋だろう。「同性だからって、油断した……」 ひとつの謎は解けたが、新たな謎が発生した。もしこの推測が当たっていたとして、何故愛佳が百合を眠らせ、ここに連れてきたのか。 恨みを買ってしまったのかと思ったが、心当たりはない。愛佳とは喧嘩をしたことがないし、成績だって大きな差があるというわけではない。(もしかして、祐介くんのこと好きだったとか? それとも、秋明さんにキスされてるところ見られたから、嫉妬?) なんとかひねり出してみるが、どれも監禁する理由としては弱い気がする。それに嫉妬なら、自室と思われる場所に連れてくるというのもおかしな話だ。 そして、自室に百合の写真やラフを飾っているのも。「とにかく、ここから出ないと……!」
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