給湯室で「自分がいるだけで迷惑をかけているのが辛い」と涙をこぼすりとを残し、鷲尾は重い足取りで執務室へと戻った。 なんとかして彼女の濡れ衣を晴らさなければならない。上層部に掛け合い、この理不尽な決定を覆す手段を探ろうと焦る鷲尾を待ち構えていたように、葛城部長が声をかけてきた。「鷲尾くん。……少し、いいかな」 再び、ブラインドが下ろされた第一会議室。先ほどりとが座っていた席に、今度は鷲尾が座らされた。「結論から言う。……鷲尾くん、君は甘崎さんの件から完全に手を引きなさい」「……どういうことでしょうか。彼女は私の直属の部下です。あのような不確かな理由で業務から外されるなど、到底納得ができません」 食い下がる鷲尾に、葛城部長は厳しい視線を向けた。「君が彼女を庇いすぎているという声が、すでに社内から上がっているんだよ。……そもそも、二人は私的な関係にあるのではないか、とな」「っ……」「いいか。彼女は今、副業禁止規定の違反と、競合への情報漏洩の疑いで調査対象になっている。これ以上、君が私情で彼女に接触すれば、君自身にも疑いが向く。君のプライベートまで会社が徹底的に調査することになれば……困るのは、君自身じゃないのか?」 痛いところを突かれ、鷲尾は息を呑んだ。 自分が女風セラピストとして裏で副業をしていることが明るみに出れば、共倒れになる。りとを守るための力が、今の鷲尾には完全に封じられてしまっていた。「……わかり、ました」 膝の上で、手のひらに爪が食い込むほど強く拳を握りしめ、鷲尾は屈辱に耐えるように深く頭を下げた。 何もできない。ただ彼女が理不尽な悪意に晒されるのを、黙って見ていることしか許されない。己のあまりの不甲斐なさに、鷲尾は血が滲むほど強く唇を噛み締めることしかできなかった。 一方、りとは自分のデスクで、ただ意味もなく真っ暗なパソコンの画面を見つめ続けていた。 周囲からは、心ないヒソヒソ話が絶え間なく聞こえてくる。「夜の店で働いてたって本当?」「ヤオノードの社長とも知り合いだったらしいよ」「情報とか、流してたんじゃないの……?」 針のむしろのような空間。隣の席の依千は心配そうにこちらを何度も見つめていたが、彼自身が〝適切な距離感を保つ〟と決めた手前、安易に声をかけることができずに苦しそうな顔をしている。 りとの心は少しず
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