「皇后がまた子を望んでおられる。お前は子を成しやすいゆえ、もう一人身ごもるがよい」ただ皇后の「子が欲しい」というその一言のためだけに、聞令儀(ぶん れいぎ)は十ヶ月身籠り、再び娘を産み落とした。へその緒が切られるやいなや、産婆は赤子の顔をひと目も見せることなく、そそくさと抱き去ってしまった。これで、二人目だ……後宮の誰もが噂している。もし皇后がかつて帝と共に戦場を駆け、その身を損なって石女にならなければ、この後宮に他の女が召されることなど、決してなかっただろうと。朝廷の重鎮たる太師(太政大臣と同等する)の嫡女(長女)、聞令儀。彼女はただ都合よく選ばれただけの、皇族の血脈を繋ぐための「器」に過ぎないのだ。三年前、聞令儀は第一皇子を産んだ時も、我が子の顔を見ることは叶わなかった。皇帝である蕭承璽(しょう しょうじ)は自ら赤子を抱き上げ、冷酷に言い放った。「この子は今日から皇后の嫡子となる。余計な気を起こすな」あの頃の彼女には、まだ泣き縋る気力が残っていた。寝台から這い出し、後を追おうともがいたが、侍女たちに力ずくで押さえつけられた。やがて彼女は後宮の掟を学んだ。毎朝、皇后の宮へご機嫌伺いに赴くのは、ただ衝立越しに聞こえてくる我が子の喃語を聞くためだけだった。帝も初めは黙認していたが、後に皇后が「皇子には静養が必要だ」と口にしてからは、我が子に会うことすら二度と許されなくなった。そして今、二人目の子供も奪われた。血と汗にまみれた産褥に横たわる彼女は、まるで魂を抜かれた抜け殻のように、もはや涙すら流せなかった。産後間もないうちに、皇后に仕える筆頭女官が、朝の挨拶に来るよう呼び出しの伝言を持ってきた。令儀は癒えきらぬ身体を引きずり、皇后の住まう鳳儀宮(ほうぎきゅう)へと向かった。皇后、慕容姝(ぼよう しゅ)は、生まれたばかりの姫君を抱いてあやしていた。令儀の青白くやつれた顔を見るなり、口角を微かに吊り上げた。「令儀が来たのね。随分と酷い顔をして、まさか私に何か不満でもあるのかしら?」「滅相もございません。私めにそのような不遜な心はございません」「なら、いいのよ」皇后は赤子を乳母に預け、ゆったりと袖口を整えた。「後宮に入ったからには、己の身の程を弁えなさい。帝がお前を娶ったのは、文官を束ねる太師の力
Read more