ANMELDEN若葉はまさか、自分のそばに犯人がいるとは思わず顔を真っ青にした。「若葉......大丈夫だから。家の中にいれば安全だから。少し深呼吸しよう」「ハァハァハァ......あらた......新ァ!」なんで自分ばかりこんな目に合うのだろうか。そう思うと若葉は涙を止める術がなかった。こんな痛々しい姿を見て、ここにいる全員が居た堪れない気持ちになった。新は若葉を抱きしめると、背中を優しくさすった。「大丈夫。大丈夫だよ。オレ達が、皆がついてる。それに絶対捕まえてみせるから。怖がらないで。ね?」「でも、皆に迷惑かけちゃう......!!」「あのな、若葉。今は迷惑とか考えなくていいんだぞ?むしろ頼れ!」「そうデスヨ!頼って下サイ!私達は皆ワカバのナイトデス!」「......こんなヤツ気にとめなくていいんだよ?僕らがついてるから。ね?」若葉は皆の励ましの言葉に胸が温まっていくのを感じ、流れる涙は次第に収まっていった。「ありがとう、皆。オレ、負けないよ。絶対ストーカーの思い通りにならない......!!」「そうだね。それじゃあ今日はもう休もうか。僕は父さんがついてくれるみたいだし帰るよ」「......来てくれてありがとう。浩兄」「それじゃあ、皆おやすみ」と言って浩史は自宅へと帰って行った。「オレァ、リビングのソファーで寝させてもらうかなぁ」「ナオミチがイヤでなければ、私と客間で寝ませんカ?」「いやぁ、おじさん人がいると寝れねぇんだわ」「とは言え夫婦の寝室はなぁ。」と言うので若葉は毛布を持って直道に渡した。「おじさん。コレ使ってね?暖房は入れたままでいいから」「おう。ありがとさん。お前ら風呂入ってないんじゃないか?」「「あ」」「まぁ、明日でいいだろう。今日はもう寝ろ」「分かった。それじゃあ、おやすみ。おじさん、ダニエル」「おやすみなさい」若葉と新は就寝の挨拶をして2人で若葉の部屋へと行った。そして若葉がベッドに入ると、それに続いて新も入ってきた。「ちょ、......新。狭いよ?」「大丈夫大丈夫。1人で寝るより温かいから。ね?」「ンーっ!もう!おやすみ!」「こーら。若葉。おやすみじゃないでしょ?」「えっ?......んン......」新は若葉をギュッと抱きしめるとキスをしてきた。いつもなら啄む様なものだったのに、今日はいきなり舌を
家に帰ると、留守番をしていたダニエルと浩史が若葉達を出迎えた。どうやら夕飯の支度をしてくれていたようで、とてもいい匂いがした。「おかえり、若葉。新君。夕飯作っておいたよ。」「わっ!嬉しい、ありがとう!」「ヒロシ、料理上手いデス!包丁さばき素晴らしかったデス!」「あはは。ありがとうダニエル君。ダニエル君もいい筋だったよ?」「将来の夢は料理人デスからネ!」ダニエルの言葉に若葉は驚いた。たしかに中学の頃に来たダニエルは若葉の母に料理を教わっていた。その時はまぁ、初心者の料理という感じで所々焦げていたりしていた。が、今日の夕飯はどうであろう。まるで一流ホテルのディナーの様な料理がズラリと並んでいた。「ダニエル君の腕前が凄かったから、感化されて張り切っちゃった(笑)」「私もデース!さっ!皆で食べまショ!」ダニエルに促され、若葉達は席に着いた。そして一斉に「いただきます。」と言うと料理を口に運んでいった。「凄い!見た目だけじゃなくて味も美味しい!お店のご飯みたいだよ!」「それは褒めすぎだよ、若葉」「嬉しいデース!」「本当にコレはお店に出せるレベルですよ」若葉と新の素直な感想に、ダニエルと浩史は照れくさそうにしていた。そして賑やかな夕飯を終えると、後片付けは若葉と新が担った。洗い物が終わった頃、玄関から"ピンポーン"とチャイムが鳴ったため、インターフォンをチェックすると直道が立っていた。「おじさん、いらっしゃい」「おう、若葉。浩史が邪魔してるようだな」「うん。夕飯ご馳走になったよ。浩兄とダニエルのご飯レベル高くてビックリしちゃったよ」「アイツも一人暮らしで自炊してるからな。オレも前食わせてもらったが、下手したら母さんよりも美味いかも......」「父さん、母さんが聞いたら怒られるよ」「......ハハッ。母さんには内緒で、な?」玄関先でやり取りしていると、ダニエルがやって来て、「まぁまぁ、ここではナンデスカラ!」と言って皆でリビングへと移動した。そして、直道から一通の手紙が手渡された。「これ、今日も入ってたぞ」「相変わらず差出人は不明ですね......今更ですけど、この手紙って送り先の住所も書いてないから、やっぱり犯人が直接投函してるって事ですよね?」新がそう言うと皆背筋が凍った。犯人の候補に上がっていた喜多川は若葉の家を知るはず
「新、1回家に帰った方が良くない?」「おばさんも心配してるだろ。」と若葉が言うと新は若葉と離れたくないと抱き着いて離さなかった。「新君。若葉に、"恋人"に迷惑をかけるのは良くないんじゃないかな?」「め、迷惑ではないけど......」「あ!それなら一緒にオレん家来てしばらくの荷造り手伝ってくれない?」「それなら......良いけど......」新は浩史に対してドヤ顔をして見せた。しかし、浩史は痛くも痒くもないという大人の余裕を見せつけてきたため、新はなんだか負けた気分になった。「浩兄、ダニエル。そう言う事だから少し留守番お願い出来るかな?」「分かったよ。気を付けてね」「アラタ!ワカバ独り占めズルいデス!」「まぁまぁ。すぐ2人で帰ってくるから。ね?」「......分かりマシタ」若葉はダニエルを説得させると新と2人で家を出た。「ハァ......。やっと若葉と2人きりになれた」そう言うと、新は若葉の手を握り歩き始めた。そして新の家へと向かうと丁度部活から帰って来た唯と鉢合わせた。「わ、わ、わ、若ちゃーん会いたかったよー!」「アハハ。おかえり、唯ちゃん」「おい、唯。若葉に抱き着くな」「男の嫉妬は見苦しいよ。お兄」「2人共...少し落ち着いて?ね?」「若葉が言うなら......仕方ない......」「でもどうして若ちゃんがお兄と一緒にウチに?」「冬休みの間、しばらく新にウチに来てもらう事になったんだ」若葉はストーカーの件は伏せ、ただ遊びに来ることになっているていで唯に話した。ちなみに新の母には報告済みである。「だから荷造りしに来たんだよ。いいから家入らせろ」「お兄ばっかりズルいぃ......!私も若ちゃんちに行きたーい!」「お前は部活に宿題があるだろ」「宿題があるのはお兄もでしょ!」「オレは若葉に勉強見てもらうから。ね、若葉」「......仕方ないなぁ」玄関先で賑やかにワイワイやっていたせいで母から、「いい加減家に入ってきなさい。」と言われた。そうして3人は家の中に入ると唯はリビングへ、新と若葉は新の部屋へと向かって行った。そして荷造りを進めていく。「これだけあれば、しばらくは大丈夫かな?」「勉強道具はちゃんと持った?」「ぐっ......!!持ちました......」「唯ちゃんに言った手前、きちんと勉強しなくち
「さっ、上がって上がって!新、ダニエル!紹介するね。直道おじさんの息子さんの浩兄......浩史さん!普段は京都のK大に通う大学2年生!」「K大?!メッチャ頭良いんですね......」「ハハッ。そんな事ないよ。えっと......新君、だね?」「は、はい」新は何故だか浩史に対して緊張してしまっていた。浩史は笑顔ではあるが、メガネの奥の瞳が笑っていないように見えたからだ。「新?どうした?」「ん?いや、なんでもないよ。大丈夫」今は若葉の不安を煽るべきでは無いと思い、新はなんでもない様を装った。「......浩史さんはいつからコッチに?」「僕?僕は先週からだよ。早く若葉に会いたかったからね」新は若葉は気が付いていないようだが、若葉を見る浩史の目には何やら不穏な物を帯びているように感じていた。「あ、オレお茶入れて来るね!浩兄も座って待ってて!」「私も手伝いマース!」「ありがとう、ダニエル」若葉がダニエルを連れキッチンへと入っていくのを見送ると、浩史はダイニングテーブルの席に着いた。それに倣って新も浩史の向かい側の席に着いた。「父さんから聞いたけど、若葉と新君は恋人同士なんだって?」「ひ、浩兄?!」「はい。オレは若葉とお付き合いさせてもらってます」「ふぅん......。君が、ね。」「......浩兄?どうかした?」「あぁ。いや、なんでもないよ?ただ、随分と人の良さそうな恋人をもらったなぁと思って」「......どうも」「私はまだ認めてませんケドネ!」「ちょ、ダニエル!」若葉は入れたお茶を持ってキッチンから出てくると、それぞれの前にお茶を置いていった。「ありがとう、若葉。それにしても...いくら父さんが夜来るからと言っても子供だけで暮らすなんて......心配だなぁ」「大丈夫だよ、浩兄。家事は皆出来るし、不用心に玄関を開けないようにするから」「そうだね。その方がいいよ。ちゃんと相手を確かめてからにするんだよ?」「もう!浩兄は心配しすぎ!」「大丈夫ですよ、浩史さん。オレ達ももう高校生で、そこまで言われる程子供ではありません」浩史の言葉に新は少し強めに否定するとお茶をすすった。若葉はなんだか新と浩史の間に溝がある事に気が付き、不安そうな顔をした。「新......?浩兄......?どうしたの?なんだか仲悪そうだよ?」「
そして、いよいよ若葉の両親が海外に旅立つ時が来た。若葉達は両親を見送るために空港へとやって来ていた。「それじゃあ、新君。ダニエル。若葉の事、よろしくね」「分かりました。おじさんとおばさんも気を付けて」「オジサン、オバサン!楽しんできて下サーイ!」「ハハッ。ダニエル。観光じゃないんだから。」「3人も気を付けてね?兄さん、子供達の事よろしくね」「おうよ、任せとけ!お前らが帰ってくる前にストーカー野郎をお縄にしといてやるよ!」「頼もしいです。お義兄さん、よろしくお願いします」そうやり取りをしていると、搭乗案内のアナウンスが流れて、両親と若葉達はそこで別れたのであった。「さ、お前ら。ラーメンでも食って帰るか!」「やった!直道おじさん大好き!ギョーザも付けていい?」「ハハハッ!もちろんいいぞ!」子供のようにはしゃぐ若葉を見て、新とダニエルは「何この可愛い生き物」と心の中で呟き、2人して若葉をギューギューに抱きしめた。「ちょ、なになに?!どうしたの、2人共!」「あー...まぁ、気持ちは分からんでもないがな」「え?おじさん、なんなの?」「若葉は分からんでも良いぞ。男心ってヤツだ」「オレも男だよ?!」若葉はそう反論したが取り合ってもらえず、「さー、行くぞー!」と言う直道に続いて若葉達3人も空港を後にした。その道すがらも新とダニエルは若葉の手を離すことはなかった。そして4人はラーメンを食べて自宅へと帰った。ラーメンとギョーザを食べてホクホクの若葉はデザートにコンビニで買ったアイスを食べていた。「若葉......。その細い身体のどこにそんなに入ってるの」「え?これくらい普通でしょ?」「いや、そうなんだけど......。若葉は華奢だからさ。しかもラーメンも大盛りだったからさ......」「オレも育ち盛りの"男"って事だよ」そうのんびりとした時間を過ごしていると、玄関から"ピンポーン"とチャイムが鳴った。「はーい!今行きます!」若葉がアイスを置いて玄関へと向かい扉を開ける。「こんにち、若葉。久しぶり」そこにいたのは直道の息子で若葉の従兄弟である"浩史"であった。「あれ?!浩兄?!久しぶりー!どうしたの?ウチまで来て!」「父さんが帰ってきたから、僕も顔出そうと思って。来ちゃった(笑)」「ハイ、コレ京都土産の八ツ橋」と若葉に土産を
お泊まりと言っても、家には若葉の両親とダニエルもいるので、夕飯や風呂を済ませると若葉と新の2人は若葉の部屋で2人きりの時間を過ごしていた。「それにしても良かったな。味方になってくれるような人達がいてくれて」「うん。安心した。......新もありがとう」「まだ油断は出来ないからな。気を引き締めていこう」新はそう言うと、若葉をそっと抱きしめた。「あ、新?!」「せっかく2人きりなんだから、これくらいは許して?」新に抱きしめられて若葉は顔を真っ赤に染め上げたが、おずおずと新の背中に手を回した。そして若葉は新の胸に耳を当てた。「若葉......?」「こうしていると凄く安心する。新の心臓の音を聞いていると」「そう?それなら良かった。...なんだか擽ったいけれど」「ふふっ。......新、そばに居てくれて、好きになってくれてありがとう」「どうしたの?急に」「別に?伝えたくなっただけ」「ハハッ。そっか。......若葉」新は若葉の名を呼びそっと頬に手を添えると、静かに口づけをしてきた。そして何度も何度も啄む様な口づけを繰り返すと、今度は舌を入れてきた。「んっ......ふ......んン......」「ハァ...若葉。大好きだ」「うん。......オレも」そう言い合うと互いの額をくっ付け合せ笑いあった。「これ以上は我慢がきかなくなるから。そろそろ寝ようか」「......うん。そうだね」そうして2人は「おやすみ」と言い合うと眠りについた。翌朝、若葉は目を覚ますと、新が目の前にいる事に安堵する。そして現状に驚き、動揺を隠せないでいた。なんと、気が付かない内に若葉は新に抱きしめられる形で眠っていたのだった。若葉は昨晩の出来事を思い出し気恥ずかしくなると、その恥ずかしさを紛らわせるかのように、新をポカポカと叩き起したのであった。「ん......若葉?どうしたの?」「どうしたの、じゃないよ!なんで、いつから抱きしめて寝てたの?!」「抱きついてきたのは若葉からだよ?」「?!う、嘘だ!」「嘘言ってどうするのさ。本当の事だよ?」新のことばに若葉はボンッと音が鳴るくらい顔を真っ赤にした。新はそんな若葉に「可愛いなぁ」と呟くと、抱きしめた腕に力を込めた。「新?!」「もう、本当に可愛いんだからなぁ。若葉は」2人は若葉の母が起こしに来るまで
13時を回る頃、若葉はクラス委員長に客引きへと行くように命じられた。衣装係の女子と共に着替え教室へと入り、準備段階から予定していたピンクのゴスロリ衣装へと着替える。着替えが終わり軽くメイク直しをしていると、先に客引きをしていた執事コスの男子生徒が入ってきた。「おつー。おう、桜ちゃんの出番ですか。マジ可愛いな(笑)この格好だとお姫様みたいでええやん!」「...今日だけはありがとうと言っておく。」「ホントは嬉しいくせにぃ。そだ、1枚写真撮ろーぜ!」「1枚につき1万な。」「高ぇ(笑)」男子生徒はそう言うとメイクをしていた女子生徒にスマホを渡し、2人のツーショットを撮ると、男子生徒は「サ
時刻は午前10時。学園祭"桜ヶ丘祭"の開始時刻である。桜ヶ丘高校の校舎には、老若男女様々な人々が集まってきている。校舎に入るとそこら中から生徒達の呼び声が溢れかえる。そんな中、早くも1-3は注目の的となっていた。1-3はコスプレ喫茶。男女様々なコスプレで接客をしている中、やはり人々の視線を引き付けたのはメイドのコスプレをした若葉であった。「いらっしゃいませ、お客様。ご注文はいかがなさいますか?」若葉が柔らかい笑みを浮かべ接客すると、女性も男性も顔を赤らめる。そして大半のお客はこう言うのだ。「あの!写真一緒にお願いできますか?!」普段の若葉であれば「こんな黒歴史、写真に残したくない!」
天気は快晴。見事なまでの学園祭日和。そんな天気とは裏腹で、若葉のテンションはどんよりと曇っていた。「...とうとう来てしまった...。せめて雨でも降って来客数減ってくれればよかったのに...。」若葉が誰にも気づかれないように本当に小さく呟いたのだが、地獄耳のクラス委員長がその呟きを聞き逃すハズがなく。「なんてことを言うの佐倉君!学園祭と言えば晴れと決まっているものよ!そして、この学園祭に来たお客さんを1-3に集客するのよ!そ・の・た・め・に!桜ちゃん!よろしくね!」「...ハァ...」クラス委員長の言葉をかわきりに、クラス中から「桜ちゃんよろしくね!」「期待してるぜ!桜ちゃん!」と
どこを見ても男、男、男。男子校とはむさ苦しく悲しい場所である。マンガの様に美人な若い女性教師が居るわけでもない。そんな中で3年間過ごすというのは、青春を送る若者には酷な話しである。授業中も落ち着きなく騒がしい中、新は回ってきたマンガの最新巻を読んでいた。すると、高校に上がってから仲良くなった斉藤が声をかけてきた。「新ぁー、お前、今月末の土曜ヒマか?」「土曜か...。なんも無いけど何?合コンでも開いてくれるん?」斉藤はこの辺りの高校に顔が広いため、よく合コンを開いたりしているのである。「いやいや。今回は合コンじゃなくて(笑)オレの中学の親友が桜ヶ丘に通ってんだけどさ。その日学園祭らしく