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媚薬ライフから始まる恋
媚薬ライフから始まる恋
مؤلف: 東雲桃矢

1話

مؤلف: 東雲桃矢
last update تاريخ النشر: 2026-06-17 16:43:37

 ここはバー・エリュシオン。静かな雰囲気で、30代以上の男女に人気がある店。今は閉店後の片付けをしている。

「アキトくん、今ちょっといい?」

「はい、美奈子さん」

 アキトと呼ばれた金髪の青年が、掃除の手を止めてカウンターに入る。彼の名は秋元修也。映画鑑賞と女遊びが趣味の大学生。ちなみにアキトというのは源氏名のようなもので、エリュシオンではストーカー対策で本名を呼び合わないようにしている。

「モクテル作ってみたの。味見してみてくれない?」

 美奈子はにっこり微笑んで水色のモクテルを差し出す。彼女は骨折したオーナーの代理で来ている。オーナーとは古くからの付き合いで、結婚する前に小さな飲食店を経営していたため、代理を頼まれたと言う。

「うわ、可愛い色ですね。女子好きそー」

「でしょ? 味も女の子が好きそうな味になったと思うんだけど、どうかな? アキトくんはモテるから、分かると思って」

「あっはは、買いかぶりっすよ」

 笑いながら、美奈子の胸元に目をやる。バーテン服に隠れた胸は、意外と大きい。私服姿を何度か見たことがあるが、手に収まりきらないほどのサイズに見えた。

(ちょっと年上だけど、たまには人妻とかも良さそうだよな)

 美奈子をどう口説こうか考えながら、モクテルを傾ける。モクテルはほんのり甘く、後から柑橘系の爽やかな香りが鼻腔を突き抜ける。

「美奈子さん、これ絶対女子ウケいい、……あ、れ……?」

 強烈な眠気が襲いかかり、立っていられなくなる。

(一服、盛られた、か……?)

「アキトくーん、大丈夫ー?」

 妖艶に微笑む美奈子の口元を認識するのと同時に、意識を手放した。

「て……、起きてください」

「う、うぅ……」

 誰かに体を揺すられ、目を覚ます。何度がまばたきを繰り返してから見上げると、見知らぬ男がいた。男は華奢で、薄茶色のふわふわした髪をしていた。白いワイシャツに黒いスラックスというシンプルな出で立ちだ。

(なんだ、コイツ……)

 寝起きで回らない頭で男の顔を見る。中性的な小顔で、小動物を連想させる。おそらく、年下か同い年。

「誰だ、テメェ……」

 体を起こし、あたりを見回してぎょっとする。自分と男は同じダブルベッドの上にいた。室内にはAVでしか見たことがないような拘束具があった。異様な光景に一気に目が覚める。

「な、なんだよここ!」

「僕にも分かりません」

 男は困惑した様子でうつむく。

「僕も少し前に起きて、気づいたらこのベッドで寝てて……」

「マジかよ……」

「まずは、自己紹介でもしませんか? それから状況整理でもしましょう」

「あー、だな……」

 特にほかに案があるわけでもない。修也は同意すると改めて男を見た。彼と同じように座ってみると、やはり自分より小さい。もっとも、修也の身長は186センチもあるので、大半の人間は小さく見えてしまうのだが。

「では、僕から自己紹介をしましょう。僕は臙脂朱音、小説家です」

「園児? 幼稚園?」

「ふふ、園児ではなく臙脂。色の名前です」

「へぇ……。よく分かんねーけど、本名じゃないことは分かった」

「はい、ペンネームです」

「エンジ、シュオンねぇ……」

(エリュシオンに似てんなー)

 修也は自分が働くバーのことを思い出した。そして、美奈子から受け取ったモクテルを飲んで眠くなったことも。

「あんのババア!」

 腹が立って声を荒げると、朱音が小さく肩を震わせる。

「自己紹介もせずにいきなり怒鳴らないでください」

「思い出したんだよ! 俺、エリュシオンっていうバーで働いててさー。美奈子っていうババアに、モクテルの味見頼まれて、それ飲んだら眠くなったんだよ!」

「そうでしたか……」

 修也の話を聞き、朱音は顎に手を添えて考える素振りを見せる。

「そう言えば僕も、渡されたドリンクを飲んで眠くなりましたね……」

「んだよ、誰かに仕組まれたってことか!?」

「えぇ、そうでしょうね。とりあえず、君の名前を聞かせてもらっても?」

 朱音に言われ、まだ自己紹介していなかったことに気づく。

「あ、わりぃ。俺は……、アキトだ。よろしくな」

 彼が本名を名乗っていないことが気になり、修也も源氏名を名乗ることにした。本名を明かさない相手に教える名前は、それしか持ち合わせていない。

「アキトくん、ですか。改めて、よろしくお願いします」

 朱音は手を差し伸べて微笑む。この状況に似合わない穏やかな雰囲気に飲まれ、つい握手に応じる。

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  • 媚薬ライフから始まる恋   33話

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  • 媚薬ライフから始まる恋   32話

     別荘に入ると、エリは冷たいお茶を出してくれた。「どういう相談?」「恋愛っつーか……」「あら、遊び人の君が珍しい」「俺も、らしくないとは思うんすけどね……。なんて言ったらいいのか……、その……。相手が相手で……」 相談しようと決めたのに、いざ言おうとすると怖くて口ごもってしまう。「ゆっくりで大丈夫。それに、相手がどんな人でも、私は笑ったりしないから」「やっぱ、エリさんは大人ですね……」 力なく笑うと、自分の両頬を軽く叩き、気持ちを切り替える。「その、俺が好きなの、男なんですよ」「そうだったのね」 思い切って打ち明けるも、驚いたり軽蔑したりしないエリに、修也の方が驚いてしまう。「驚かないんすね」「言ったでしょう。どんな相手でも笑ったりしないって。それに、私のまわりにも結構いるのよね、同性カップル」「そう、なんすか……」「それで、お相手とはどんな感じなの?」「俺、アイツのこと好きなのに、ずっと言えなくて……。それどころか、傷つけちゃったんですよね……」「謝ったの?」「謝りたいんですけど、電話にも出てくれないし、ラインもずっと未読なんすよ……」「具体的に、どう傷つけちゃったの?」「それは……」 修也は1ヶ月前の出来事を、包み隠さずエリに話した。エリはただ、相槌を打って大人しく聞いてくれた。「向こうからしたら、確かにショックね……」「やっぱそうっすよねぇ……。はぁ、どうしよ……」「修也くんとしては、どうしたいの?」「そりゃ、謝りたいですよ」「謝りたいだけ?」 核心を突く言葉に、息が詰まる。お茶を飲んで深呼吸をすると、エリをまっすぐ見つめた。「謝って、本当のことを言いたいです。どんな結果になるとしても、好きだって伝えたい」「なら、やるべきことはひとつじゃない」「でも、どこにいるか分かんないし、サイン会もまだ開きそうにないし……」「ファンレターを送ったら?」「ファンレター?」「修也くんが好きな人、作家さんなんでしょ? それなら、手紙に気持ちを綴って、ファンレターとして送ればいいのよ」「受け取ってくれますかね?」「大丈夫。向こうも、修也くんの本名は知らないんでしょう? それなら、気付かないで読んでくれると思うわ。ファンレターをちゃんと読む人ならね」「まぁ、読む人だとは思いますけど……。俺、手紙なんてほとんど

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    「アキトくんと過ごしたのはほんの数日程度ですが、それでも君が、用もないのに読みもしない本をわざわざ買って、長蛇の列を並ぶような男ではないことくらい、分かります。君は、良くも悪くも素直ですから」「へ、どーせ俺は単純だよ」「おや、せっかくオブラートに包んだというのに、自ら溶かしてしまうとは」「馬鹿にしやがって」「馬鹿になどしていませんよ。話を続けます。君は本に自分の連絡先を書いた紙を挟んだ。僕に用があると思うのは、自然でしょう?」「あー、その、なんだ。用ってほどじゃねーけど、また、ヤりてーなって思ってよ」 本来の目的はあの日々が現実だったか確認するためだったが、先程までの会話で分かっ

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