All Chapters of ボスの密やかな秘密 ~冷酷なボスは私にだけ甘すぎる~: Chapter 41 - Chapter 50

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第042話

彼は平然としたふりをしながらも。朱夏が疲れないよう、体勢を支えていた。だから。彼女がさらに力を込めると。道赫は少しだけ身構えたような表情になる。……次に何が来るのか。もう分かっている人みたいに。――やっぱり今日も、勝手にイっちゃうんだろうな。朱夏はそんな予感がした。「ぁっ……!イ、イきます……っ!」彼なりに必死で耐えていたのだろう。それでも結局。あっさり自分の意思だけで果ててしまうものだから。少し腹立たしいような。少し誇らしいような。そんな気持ちだった。「ほんと、人の言うこと聞かない。」朱夏は心底悔しそうな顔をした道赫を見て、くすくす笑う。正直。酒なんて飲まなくても平気だったかもしれない。白道赫は。脱がせるだけで他のことなんてどうでもよくなるくらい、色気のある男だから。きっと最初から大丈夫だった。……次からは、お酒はいらないかな。そんなことを思いながら。朱夏はペニバンをすっと引き抜いた。「も、もう少し……ゆっくり、抜いて……!」抜ける時の感覚がどれだけ変なのか。知っていたら絶対そんな抜き方はしない。そう思いながら。道赫はうんざりしたように息を吐く。朱夏は聞いているのかいないのか。返事もせず、そのままベッドへどさりと腰を下ろした。している最中は興奮して気づかなかったけれど。終わってみると。あちこちがじんわり痛い。普段まったく運動しないせいだろう。「運動って、一日どれくらいしてるの?」
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第043話

「誰が嫌だなんて言った?」「おやすみ」「……俺にも、チャンスはくれるんですよね?」道赫はそろそろと距離を取りながら、不安を少し滲ませた声で尋ねた。朱夏は布団を頭までかぶると、くすくすと笑う。その笑い声を聞いた道赫は、思わずしばらく見惚れてしまった。こんなふうに笑うこともあるんだ。そんなことを思っていた矢先、続いた朱夏の一言に、彼は大人しく隣の部屋へ引き下がるしかなかった。「たぶんね」──ちゃんと言うことを聞いたら。そういう意味だった。どれだけ従えるのか、見てあげる。そんな意味を含んだ一言。道赫はベッドに入ってからも、なかなか眠れなかった。けれど、その時間は少しも長く感じなかった。頭の中で、朱夏の笑い声を何度も思い返していたから。―――翌朝、ホテルで先に目を覚ましたのは道赫だった。もともと早起きが身についている。目を開けるとすぐ、部屋のバスルームで軽くシャワーを浴びた。寝る前にも一度浴びていたが、朱夏がいると思うと、どうしても気になってしまう。朱夏が目を覚ましたのは、ちょうど道赫がシャワーを浴びている頃だった。普段ならこんなに早く起きることはない。けれど酒のせいか、ひどく喉が渇いていた。目を開けると、シャワーの音が聞こえる。彼女はしばらく天井を見つめた。――あ。家じゃない。そこでようやく思い出した。昨日の出来事を、静かに振り返る。……やっちゃったな。思い返せば返すほど、その結論しか出てこない。それでも、不思議と気持ちは整理できていた。もう逃げないと決めたから。この広いホテルも。あの大きな男も。流れに任せて生きてみよう。そう決め
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第044話

「……は?」朱夏は平然とした道赫の顔を見つめながら、混乱した頭を必死に整理した。とんでもない話を聞かされた。なのに、その話をした本人があまりにも平然としているせいで、余計に現実味がなかった。「……組織を継いだって? 誰から……?」誰かから受け継ぐということは、その誰かが持っていたものを譲られるということだ。そして、それは受け継いだ人間のものになる。ただの幹部や現場責任者の座を「受け継いだ」なんて言い方はしない。道赫ははっきりと、「組織を受け継いだ」と言っていた。「祖父が作った組織で、父が継いで……そのあと俺が受け継ぎました」「…………幹部とか、そういう話じゃなかったの……?」その言葉でようやく道赫は気づいた。どこから食い違っていたのかは分からない。だが、二人の認識には決定的なズレがあった。つまり朱夏は、最初から最後まで、自分がボス本人だとは一度も思っていなかったのだ。生まれた頃から、いつか自分が継ぐと分かって育ち、その通りになった道赫とは、前提そのものが違っていた。「……俺が代表だって言ったのに、どうしてそう思ったんですか?」騙していたわけではない。それだけは伝えなければならなかった。昨日、自分は全部話したつもりだった。隠す気なら、今さらわざわざ打ち明ける理由などない。「……名ばかり社長みたいなものかと思ってた」朱夏もまた、どこで勘違いしたのだろうと考え込む。さっきまで「なるようになれ」と腹を括ったばかりだった。なのに、こんな情報を急に突きつけられたせいで、余計に頭が混乱してしまう。「まあ、最初は組織でしたけど、今はもう
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第045話

あの日を境に、二人は以前よりずっと気楽に接するようになった。道赫は、もうあの件で自分が捨てられることはないと分かった。朱夏は、あんな人間でありながら、自分にここまで尽くしてくれる男なのだと知った。だから朱夏は、ますます遠慮なく道赫を扱うようになり、道赫はそんな態度をまるで気にしなかった。むしろ、嬉しそうですらあった。「次はいつヤってくれるんですか」なんて、自分から口にするほどに。二人は週に一度は体を重ねる関係になっていた。同じホテルの部屋で、ベッドを移りながら。もちろん、挿れるのは最後まで朱夏のほうだ。彼女は、道赫を犯すのが結構好きだった。道赫もそれを楽しんでいるように見えたかと聞かれれば、正直まだよく分からない。彼は今でも、自分を狙う猛獣だった。どれだけ一度も本気で怒ることなく飄々と笑い、「挿れてください」と甘えてきても。自分のモノがどうだこうだと軽口を叩いていても。それでも朱夏は、もうそんなことは気にしなかった。どれだけ自分を狙っていようと、隙を与えるかどうかを決めるのは、結局自分なのだから。「明日の夜、一緒にご飯でも食べる?」「いつも忙しいのに珍しいですね。明日って平日ですよ?」体を重ねるのは、たいてい土曜か日曜の夜だった。朱夏は大学生活が忙しく、普段はせいぜい家まで送ってもらう時くらいしか会えない。あとは、朱夏が用事を言いつける時くらいだ。いったいいつになったら卒業するんだろう。そんなことを待っている自分が少し不思議だった。けれど、そんな疑問を抱く余裕もないほど、道赫は朱夏に夢中だった。「明日、課題を一つ提出するんだ。そういう日は、あたしも少しくらい休みたいし」「ご主人様のご都合がよろしければ、俺はいつでも」あまりにも素直に従うものだから、朱夏は時々、道赫が猛獣だったことを忘れそう
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第046話

「こんなところで何してるんですか?」車を降りるなり、道赫は駆け寄るように朱夏を支えた。彼女は泥酔していた。こんな状態で、よくメッセージなんて送れたものだと思うほど。道赫の顔を見るなり、朱夏はへらっと笑った。ここまで酔った彼女を見るのは初めてだった。学校で用事があると言っていたのに、飲み会だったのか。道赫は思わず表情を曇らせる。酔って笑う朱夏は可愛かった。それでも、一緒になって笑う気にはなれない。近づくと、ふわりと酒の匂いが鼻をかすめる。甘いような、それでいて強いような。いつもの朱夏からはしない匂いだった。「大丈夫ですか?」「だいじょばなぁい……ふらふらするぅ……へへ……来るの早かったねぇ……ちょっと寄りかかるぅ……」──ちょっと、どころじゃない。最初から道赫が支えていなければ、立ってすらいられない状態だった。腰を抱いていなければ、とっくに倒れていただろう。喋り方もひどく間延びしていて、酔っていることが嫌でも分かる。道赫はもう迷わず、朱夏を横抱きにした。それでも「ふらふらする」という言葉が気になって、体が揺れないよう細心の注意を払うことだけは忘れなかった。軽い体だった。それでも、酔った人特有の力の抜け方がある。彼はそのまま車へ向かい、助手席へ寝かせるように座らせた。朱夏は終始、にこにこと笑っていた。「……」誰と飲んでいたんですか。その言葉が喉まで込み上げる。俺との約束を簡単に断るほど、大事な予定だったんですか。どうしてこんなになるまで飲んだんですか。そう聞きたかった。でも結局、何も言えなかった。
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第047話

「違うの?」「違います」否定すればするほど、余計に拗ねているように見える。なんだか少し可愛くて、朱夏は吹き出しそうになるのを必死で堪えた。道赫といると、笑いを我慢する場面が多い。もう慣れたものだ。それに、少しだけ申し訳ない気持ちもあった。笑いを押し込め、一度小さく息を整える。もともと朱夏も、一方的に約束を破るような人間ではない。ただ最近は道赫と過ごす時間が増えすぎて、大学の人間関係を少し疎かにしていた。昨日は先輩に飲みに誘われてしまい、断るのも少し難しかった。また断れば、大学生活そのものに支障が出そうな気もした。そんな事情を一つひとつ道赫へ説明する気にはなれなかった。朱夏にとっては大切なことでも、道赫には大したことではないように思われそうだったから。……とはいえ、それは結局言い訳だ。自分が道赫を気安く扱ってしまった自覚は、ちゃんとある。だからこそ、機嫌くらいは直してあげる義務があった。「そう? 拗ねてるなら、おっぱいくらい触らせてあげようかと思ったのに」「人を何だと思ってるんですか。俺が胸を見たら理性を失うような獣じゃあるまいし……」そう言いながら、道赫の視線は無意識に朱夏の胸元へ落ちた。それを見た朱夏は、とうとう笑いを堪えきれなかった。正直で、可愛い猛獣。道赫はそんな彼女を見て呆れたような顔をする。自分を思春期真っ只中の十六歳男子か何かだと思っているのか。視線が動いたのは、ただの反射だ。意識して見たわけではない。そういう意味だった。「あ、そう? じゃあやめとく」朱夏が肩をすくめる。すると道赫は、ほとんど反射で口を開いた。「いや、触らないっ
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第048話

「……」すぐ目の前まで近づいてきた道赫の息遣いが、少し大きく聞こえる。朱夏はまた笑いそうになるのを必死に堪えた。組織のボスなんて肩書きなら、女の胸くらい今までいくらでも触ってきたんじゃないの?そんなことまで思ってしまうくらい、その手つきは慎重だった。下着に手が届くまででさえ、ずいぶん時間がかかる。それでも朱夏は急かさなかった。ここで急かしたら、彼は本当に飛び上がるほど驚いてしまいそうだったから。「……触りますよ?」「うん」少し前だったら。このホテルで初めて体を重ねた日の道赫だったら、きっとこれを絶好の機会だと思っていただろう。むしろ自分から服を脱がせて、どうにか誘惑しようとしていたはずだ。そんな変化は、朱夏にも道赫にもよく分かっていた。だからこそ朱夏も、わざわざ道赫を煽るような真似はしたくなかった。こうして大人しくしていてくれるなら、たとえそれが演技だったとしても、騙されてあげてもいいと思っていた。「……」……もっとも。この慎重すぎる手つきまで演技なのだとしたら、彼は別の世界へ行くべき才能の持ち主だろう。朱夏は服を脱ぐのはやめて、背中へ手を回し、ブラジャーのホックだけ外した。このくらいはしてあげないと。道赫がまた少し緊張したように見えた。やがて温かな手が、彼女の胸をそっと包み込む。笑わないつもりだったのに、どうしても笑いが込み上げてくる。「くくっ……」道赫は、その笑いの意味くらい分かっていた。けれど、手いっぱいに広がる柔らかな感触だけで、もう
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第049話

その日の夕方、朱夏と道赫は約束通り一緒に夕食を食べた。特別なことは何もない。それでも道赫は、それだけで十分満たされていた。食事を終えると、彼は朱夏に尋ねる。このあと、どこへ行くのか。今までは用事だけ済ませるか、ホテルへ行くか。そんな時間ばかりだった。「デパートでも行きます? それとも展示会とか」「デパートでぶらぶらしよう。もう遅いし、展示会は週末に行こうよ。どう?」道赫が断るはずもない。週末の約束まで増えた。一度に二つも約束ができたようなものだ。それだけで十分嬉しかった。彼は気楽な様子で車をデパートへ走らせる。朱夏は大学で使う文房具でも見ようと思っていた。デパートを選んだ理由は単純だ。快適そうだったから。夕食を食べ終えた頃には外も暗くなっていたし、近くにちょうどデパートがあった。「お車はこちらでお預かりいたします。本日は何階をご利用のご予定でしょうか」──こんなの、聞いてない。朱夏は今日初めて知った。デパートにはVIP専用の駐車サービスなんてものがあるらしい。当然のように案内を受ける道赫を見て、なんとなく居心地が悪くなり、辺りを見回した。「何階をご覧になりますか?」その質問は、いつの間にか道赫ではなく朱夏へ向けられていた。こんな雰囲気の中で、「ボールペンは何階ですか」なんて聞けるはずもない。少し迷ったあと、「……とりあえず見て回ります」と曖昧に笑った。歩いていれば、ボールペンくらい見つかるだろう。そう思ったのだ。けれど案内された先で、朱夏は道赫と二人きりになってしまった。誰もいない広い部屋。「ごゆっくりご覧ください」
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第050話

「じゃあ、そろそろ――」もう十分見たし、帰ろう。そう言いかけたところで、道赫のスマートフォンが震えた。マナーモードだったが、二人きりの静かな空間では振動音もよく響く。「少し失礼します」そう一言断ってから、道赫は画面へ目を落とした。「外で電話だけ済ませてきます」「ここで出て」朱夏はじっと彼を見つめながら言った。その一言に、道赫の動きがぴたりと止まる。彼女が何を言いたいのかは、すぐ分かった。――何も隠さなくていい。そういう意味だ。嬉しかった。同時に、少しだけ緊張もした。朱夏が怖いわけではない。余計な失敗をしないか、それだけが少し不安だった。それでも何も言わず、彼はその場で電話に出る。電話に出た瞬間、朱夏は気づいた。いつも浮かべている笑みが、一瞬で消えたことに。「何だ」『代表。少し問題が起きました』「何」朱夏は道赫をじっと見つめる。「いや」「今は無理だ」短く、必要最低限だけ答える。学科の同期・素静と話している時の声なら、もう何度も聞いていた。でも、今の道赫はまた違った。「適当に処理しておけ」そう言いかけたところで、朱夏と目が合う。すると彼は、彼女へ向かってふっと笑った。いつも通りの笑顔。いつもみたいに、安心させるための笑顔。朱夏は笑い返せず、コーヒーカップで口元を隠した。ここで電話に出ろなんて言わなければよかったかもしれない。普段はあんなに大人しい獣なのに、こういう時だけは猛獣そのものだった。
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