「予約してるんですけど、もう一度確認してもらえますか? オ・ジュハです」朱夏は困ったような表情でそう言った。けれど、困った顔をしているのは、朱夏よりも店員のほうだった。朱夏は仕方なく口をつぐむ。一週間は遠出できそうにないから、せっかく予約までして来た店なのに、予約名簿に名前がないなんて。それなりに貯めていたお金を思い切って使おうと決めて来たのに。朱夏は隣で一言も口を挟まず立っている道赫を、ちらりと見上げた。「ごめん。他のお店にしようか?」「どうして謝るんですか。そんなことしないでください。もう一度確認してくださるそうですから」道赫は朱夏ではなく、店員をじっと見つめていた。冷や汗を流しているその男には、どこか見覚えがあった。はっきりとは思い出せない。でも、一度くらいどこかで見た顔だ。どこだっただろう。そんなことを考えている間に、男は道赫の言葉を聞くなり深々と頭を下げた。「は、はい……! も、もう一度確認してまいります……!」そう言うと、逃げるように奥へ駆けていく。もしかすると、道赫が男を思い出すより先に、男のほうが道赫に気づいたのかもしれない。気づいていようが、気づいていまいが、そんなことはどうでもよかった。朱夏を困らせるものなら、何であっても片づけるつもりだった。「も、申し訳ございませんでした! 本当に手違いでございました……! こちらへどうぞ!」ほどなく戻ってきた店員は、何度も頭を下げながら席へ案内する。朱夏は、どこかで似たようなことがあった気がして首をかしげた。
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