その夜。芙由は簡易鑑定の結果を受け取るなり、息を呑んだ。そこに記されていたのは、やはり滉と寧音に遺伝的親子関係はない、という事実だった。――滉さんの言う通りだった?まさか、会長は本当に……これはただ事ではない。芙由は自分の判断で抱え込める話ではないと悟り、すぐに野村家の邸宅へ向かった。挨拶もそこそこに、紗彩を書斎へ引き入れた。紗彩は結果を見た瞬間、目を見開いた。芙由は慎重に言った。「これはあくまで簡易鑑定です。3日や7日かける正式なものより、精度評価の面では一段落ちます。法的にも、採用されやすいのは7日鑑定のほうです。ただ、心構えだけはしておいてください。普通は、簡易と7日で結論が覆ることはありません」紗彩は呆然とした。「どうしてこんな結果になるの?寧音は間違いなく、私と滉の子なのに……」芙由は言った。「もうひとつだけ可能性があります。出生時の取り違えです。ですから次は、会長の検体と寧音さんを照合する必要があります」「分かったわ。できるだけ早く進めて」紗彩は目に見えて動揺していた。滉が何度も鑑定書を突きつけてきたことを思えば、もう彼の被害妄想だとは言い切れない。検体を芙由へ渡し、彼女が部屋を出ようとした瞬間、紗彩が呼び止めた。「芙由、私は滉を裏切るようなことはしていないわ。でも、もし一番悪い結果になったら、私はどうすればいいの?離婚なんてしたくない。滉を失いたくないの」芙由の胸がどくりと鳴った。やはり、何か隠していることがあるのかと直感した。それでも表には出さず、落ち着いた声で答えた。「仮に最悪の結果でも、滉さんは最終的にはあなたの事情を受け止めるはずです」紗彩は重い顔のまま黙っていた。芙由はさらに畳みかけた。「実際のところ、滉さんはあなたから離れられません。こちらへ来る途中でも改めて考えましたが、ここ数年の彼の病院での立ち位置は決して良くない。もう40歳ですし、あなたを離れたら、彼にはほとんど何も残らないはずです。現にこの数日だって、家を出たあとはホテルを転々とするしかなかった。今はただ、自尊心が傷ついて意地を張っているだけでしょう。頭が冷えれば、自然と戻ってきます」「そうね……」紗彩は少しだけ安堵した。2人で段取りを詰めたあと、芙由は再び動き出した。さらに1日が過ぎた。紗彩は役員
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