妙な感覚だった。体つきも声も、まとっている空気まで、以前どこかで会ったような気がしてならなかった。「先ほどの方は、一ノ瀬さんのお友達ですか?」若葉は司の遠ざかる背中を見ながら、遠慮がちに尋ねた。「お話の途中でしたよね。邪魔をしてしまったでしょうか?」なにしろ、あの男性は若葉が来るなり立ち去り、こちらを振り返りもしなかったのだ。「いえ、とんでもない」昭夫が答えたのは、後の質問だけだった。最初の問いには、さすがにどう答えたものか迷う。勝手に宮本社長の友人だなどと言えるはずもなかった。「それならよかったです」若葉もそれ以上は追及せず、ここへ来た用件を切り出した。「母から、一ノ瀬さんもお見舞いにいらしていると聞いたので。せっかくですから、ご挨拶しておこうと思って」昭夫は内心ほっとした。さらに聞かれたら宮本社長のことをどう説明したものかと気を揉んでいたが、若葉はそれ以上踏み込んでこなかった。どこまで尋ねていいのか、そのあたりの加減をきちんとわきまえていた。「お母様は治療の効果もよく出ています。担当医にも確認しましたが、このままあと数クール抗がん剤治療を続ければ、移植も視野に入れられるそうです」「一ノ瀬さんが助けてくださったおかげです」本当は宮本社長のおかげなのだが、本人から口止めされている以上、昭夫が勝手に話すわけにはいかない。そこで話題を変えた。「そういえば、今日は初出勤でしたね。どうでしたか?何か困ったことはありませんでしたか?」「特には。今のところ順調です。ただ、いつ頃から本格的にプロジェクトに入れるのか、それだけ知りたくて」「本来なら、あと数日は職場に慣れていただいてからと考えていました。ですが、ご希望でしたら調整しましょう。明日から正式にプロジェクト会議を始めるというのはいかがですか?」「もちろんです。まったく問題ありません」若葉との話を終えて会議室へ戻ると、司はソファに腰を下ろしていた。昭夫が入ってくるなり、何でもないことのように尋ねた。「何を話していた?」機嫌がよくないと察した昭夫は、若葉とのやり取りを最初から最後まで包み隠さず説明した。それでも司の口調は冷ややかだった。「それだけの話で、ずいぶん時間がかかったな」そこでようやく、昭夫にも察しがついた。どうやら、自分が若葉
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