「本当?」若葉も自分のことのように顔をほころばせた。「いつ決まったの?どうして教えてくれなかったの?」「今日。若葉が帰ってくる少し前に、先方から連絡があったばかり」まだ電話で採用の連絡を受けただけで、正式なオファーは届いていない。それでも佳奈は、ほぼ決まりだと思っていた。先に話して、若葉を安心させてもいいだろう。「どんな会社?規模は大きい?深津市では有名なの?」実際には、設立されたばかりの小さな法律事務所で、この業界にいた佳奈でさえ名前を聞いたことがなかった。だが就職活動を始めて以来、自分を本気で採用しようとしてくれた唯一の職場だった。これまでの就職活動の手応えを振り返れば、おそらくこれが唯一のチャンスだった。これまでにも、面接の手応えがよく、高く評価されたことは何度かある。ところが決まって、必要書類を提出する段階になると、相手からぱったり連絡が途絶えた。最初は理由がわからなかった。同じことが何度か続いたあと、親切な面接担当者がそれとなく教えてくれたことで、ようやく気づいた。誰かが裏で、自分の就職を邪魔している。誰なのかなど、考えるまでもなかった。目的もわかっている。佳奈を追い詰め、若葉を動かすためだ。だが佳奈は、二度と相手にそんな材料を与えるつもりはなかった。だから、このことは若葉には一切話していない。今回の職場も、先行きはわからない。経営が軌道に乗らず、すぐに立ち行かなくなるかもしれない。今はまだ宗介の影響力を知らず、あとから事情を知って解雇される可能性だってある。それでも佳奈は、今は考えないことにした。チャンスがあるなら、まず飛び込んでみる。先のことは、そのとき考えればいい。どんな道も、歩いてみなければ先はわからない。見える景色が違うだけで、最初からどちらが正解かなんて誰にも決められない。「悪くないところだよ。法律事務所なの」佳奈は若葉に答えた。「詳しいことは、また今度ゆっくり話すね。今日言ったのは、若葉にもう、自分のせいで私の仕事まで駄目になったなんて思ってほしくなかったから。私にはちゃんと経験もあるし、仕事だってできる。ほら、次もちゃんと見つかったでしょう?」「佳奈なら大丈夫って、ずっと思ってた」若葉は心から喜んでいた。「時間ができた
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