「それに、母親が病気で、今は何かとお金が必要な時期だ。簡単に会社を辞められるはずがない。たとえその問題が全部解決しても、若葉は離れていかない。結婚した当時のことは、お前も知ってるだろ。あいつは何年も俺に想いを寄せていたうえに、子どもも産めない。ようやく俺と一緒になれたんだ。よほどどうかしていない限り、俺のもとを離れるなんて絶対にあり得ない」「そう。それなら安心したわ」「運転手に家まで送らせる。今日はもう仕事をしなくていいから、帰って休め」「ええ、分かったわ」涼香を見送ったあと、宗介は若葉をオフィスへ呼び出した。若葉が入るなり、宗介は激しい口調で怒鳴りつけた。「ずいぶん図に乗るようになったな。涼香には近づくなと言ったはずだ。それなのに、突き飛ばすなんて何を考えてる?しかも、悠人のことを持ち出して脅したそうだな。全員の報奨金を取り消されたいのか?約束を破ることには、ずいぶん慣れているらしいな」確かに若葉は先ほど悠人のことに触れたが、涼香を牽制するために言っただけで、本当に何かするつもりはなかった。だが、涼香を突き飛ばした覚えはない。やってもいないことを認めるつもりもなかった。「私は突き飛ばしてない」若葉は冷ややかに答えた。「この目で見たんだ。まだ言い逃れするつもりか?」ただでさえ濡れ衣を着せられて苛立っているのに、あまりにも馬鹿げた話だった。若葉はうんざりした口調で尋ねた。「それで、私にどうしてほしいの?」「涼香に謝れ」その言葉を聞き、若葉は心底うんざりした。どうして毎日のように謝罪を求められなければならないのだろう。前は悠人、今度は涼香だった。「謝るつもりはないわ。警察を呼びたければ、呼べばいい」「何だと?」宗介は信じられないという顔をした。「聞こえなかった?」若葉は隠そうともせず、あからさまに呆れた顔をした。「今すぐ110番して、私を逮捕してもらえばいいと言ったの」「若葉」宗介は明らかに腹を立てていた。「いい加減、わがままもほどほどにしろ」わがまま?若葉は思わず笑った。宗介は若葉のことなど気にもかけていない。だから若葉が何を求めても、彼にはすべて身勝手なわがままにしか見えないのだ。幸い、若葉ももう何も気にしていなかった。「警察を呼ぶの?呼ば
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