Todos los capítulos de 婚約破棄されたら、イケメン御曹司に拾われました: Capítulo 21 - Capítulo 30

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眼鏡の君

私はベッドでこの数日間の出来事を振り返った。幸せの絶頂にいた私が、信じていた者たちの裏切りにより、一瞬で絶望の淵に突き落とされたあの日。生きる意味さえ分からなくなり、夜の街を彷徨った。その夜、偶然、桐生と出会った。初対面の私に対して、「恋人のフリをしろ」と無理難題を要求してきた桐生に、初めは嫌悪感すら抱いた。けれど、桐生の人柄に触れるうちに、私は彼を知りたいと思うようになった。愛だの恋だのは、もう懲り懲りだったはずなのに。桐生は私自身を見てくれた。そして、真っ直ぐに想いを伝えてくれた。私はスマートフォンの画像フォルダを開いた。このフォルダには、私と優一の8年間の思い出がつまっている。一番最後に撮った写真は、優一から婚約指輪を受け取った時だった。そこには、幸せそうに笑う私が居た。この時に戻れたのなら……なんて、私は微塵も思わなかった。数年前から始まっていた優一の暴力。あの頃は、私への愛情だと思い込んでいた。だけど今なら分かる。それは支配であって、愛なんかじゃない。私は桐生に出会って目が覚めたのだ。私は躊躇うことなく、優一との写真を一括消去した。私はふと思い立ち、ベッドから起き上がるとテーブルに置いてあるスケッチブックを手に取った。ページを捲ると、優一に見せようとしていた結婚指輪のデザイン案があった。私はそのページをスケッチブックから切り離した。それは、今の私に最も必要の無いものだ。なぜなら、二度と優一の元へは戻らないから。だからこうしよう。決別の意味を込めて、私はスケッチブックを破り捨てた。一連の作業を終えた私は、極度の疲労感に襲われた。知らず知らずのうちに、気を張っていたのかもしれない。私は翌朝のアラームをセットする気力もなく、そのまま深い眠りについた。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「今、何時!?」私は飛び起きた。そして、枕元に置いてあるスマートフォンの時間を確認した。「6:00か……」私は、そのままベッドから起き上がった。確か、桐生の秘書の芹沢が8時に迎えにくると言っていたはず。私は身支度を素早く済ませ、リビングに向かった。「よし、作ろう」桐生が起きてくる前に、私は朝食を作ることにした。とは言うものの、この家のキッチンには最低限の食材しかない。キッチンのカウンターに置いてある食パンと、冷蔵庫に入っていた食材を使い私はサンドイッ
last updateÚltima actualización : 2026-07-28
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尽くされて、愛されて

「知英ちゃん、今日のお昼って時間ある?」「あるけど、どうしたの?」「お昼一緒に食べようか?」「もしかして、翼さん。私が居なくて寂しいの?」「うん」私は冗談のつもりで言ったのだが、桐生が真顔で答えたことで、私の方があたふたしてしまった。いつもの桐生とのギャップが堪らない。「ずっと一緒に居たい」「翼さん/仕事遅れちゃうよ//」「まだ大丈夫だよ」「でも……/芹沢さん8時に来るよ?」「そうだった。名残惜しいけど、仕事行かないと」桐生は私を抱き締めていた腕を解いた。桐生の温もりが離れてしまい、私は寂しさを感じた。「行ってらっしゃい。またお昼に」「11時頃、マンションに迎えにくるから」「ありがとう」 「それじゃあ、行ってくるね。またあとで」桐生は私の額にそっとキスをし、微笑んだ。______________________マンションに一人になった私は、リビングのソファーに寝転んだ。ソファーがふかふかで、このまま眠ってしまいそうだ。こんなにも快適な暮らしをしていいのだろうか?桐生は私の心も身体も甘やかし、満たしていく。このままでは、桐生なしでは生きられなくなってしまいそうだ。「あ、そうだった……」私は大変なことに気づいた。今日、桐生とランチをする約束をしているが、着ていく服がない。今、着ている桐生から借りた部屋着を着ていくわけにはいかない。となると、昨日、着ていた白色のワンピースになるのだが、びっしょりと汗をかいているため、洗濯せずに着るのは避けたい。私は最善策を見出せず頭を抱えた。ピンポーンその時、オートロックのチャイムが鳴った。私はモニターを確認し、通話ボタンを押した。「はい」「桜井知英様宛のお荷物を、お届けにあがりました」私宛?なんだろうか?私は解錠ボタンを押した。それから数分後、私は無事に荷物を受け取った。宛名には、確かに私の名前が書いてあった。そして送り主は桐生だった。私は箱に貼られている梱包用のテープを丁寧に剥がし、箱を開けた。「青色のワンピースだ、バッグもある。いつの間に……」箱の中には、涼しげな青色のワンピースが入っていた。その色味はまさに私好みだった。「このワンピースなら白い靴とも合いそう」まさか、私が今日のランチに着ていく服がないことを見越して、桐生が用意してくれたのだろうか?そこまで尽くしてくれ
last updateÚltima actualización : 2026-07-29
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希望の石

早速、私はワンピースに着替えた。私の為に仕立てられたと言っても過言ではないくらい、そのワンピースは私にピッタリだった。「桐生さんはセンスもいいな」私は姿鏡に映った自分を見つめた。折角、こんなにも素敵なワンピースをプレゼントしてもらったのだから、私も最高に可愛い姿で桐生に会いに行きたい。まずはメイクだ。今朝、簡単に済ませたが、もう少し目を大きく見せたい。私は化粧ポーチからつけまつ毛を取りだし、丁寧に接着した。そして、アイシャドウは、普段よりも色味が少し派手めのものを選んだ。仕上げに滅多に塗らない︎︎︎︎リップグロスを唇に塗った。次に、私はヘアセットに取り掛かった。洗面台の棚を開けると、ヘアアイロンが収納されていた。こんなにも必死にオシャレをするのは、いつぶりだろう。しかも、好きな人に可愛い自分を見て欲しいからという理由で。私は長い髪を少しずつ巻いていった。予想通り、このワンピースには巻き髪が合った。私はヘアセットを終えると、もう一度、姿鏡の前に立った。何か物足りない。そして私は気づいた。「確か、鞄に入れたはず。……あった!」私は鞄からネックレスを一本取り出した。シンプルなゴールドのチェーンに、アマゾナイトという淡いブルーの天然石をあしらったこのネックレスは、私が初めてデザインした記念すべきジュエリーでもある。アマゾナイトは、『希望の石』とも呼ばれ、当時の私は、夢に向かって頑張っている人への贈り物というメッセージを込めた。私は大事な瞬間には、いつもこのネックレスを身につけていた。全ての支度が終わり、私はスマートフォンの時刻を確認した。いつの間にか、10時半を回っていた。もうすぐ迎えが来る頃だ。緊張しているのだろうか?なんだか無性に喉が渇く。私はキッチンのウォーターサーバーでコップ一杯分の水を注いだ。そして私はその水を一気飲みした。私はもう一度、鏡の前に立った。今できる精一杯の私になったつもりだ。「よし、行こう」前を向くのだ。私はアマゾナイトの石を右手で握り締めた。ちょうどその時、インターホーンが鳴った。「はい」 「芹沢です。桜井様をお迎えにあがりました」 「ありがとうございます。今、行きます」 私はインターホーンでの会話を終えると、急いで芹沢の元へ向かった。「お待たせしてしまってすみません」 「いえ、お気になさ
last updateÚltima actualización : 2026-07-30
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一目惚れって信じる?

私と桐生は、会社近くのホテルのレストランに来ていた。案内された窓際の席に、私は桐生と向かい合って座った。まるで、初めて桐生と食事をした時のような光景に私は懐かしさを覚えた。あの日からまだ数日しか経っていないことが信じられない。「知英ちゃんと初めて食事をした時のこと思い出すなぁ」「翼さんも?実は私も思い出してた。まさか、またこうして翼さんと食事をしているなんてあの時は思わなかった」「僕はあの時も、知英ちゃんのことをまた誘おうと思ってたよ」 桐生は私の目を見て真っ直ぐ言った。桐生は自分の気持ちを正直に伝えてくれる。信じていた人達に裏切られた私にとって、桐生の嘘偽りない誠実さは何にも変え難い安心感を私に与えてくれる。「それで、知英ちゃん。一目惚れって信じる?」桐生は、あの時と同じ質問を私に投げかけた。もう二度と恋なんかしないと思ってた。誰も好きにならないと思ってた。だから、あの時の私は桐生の言葉を信じなかった。でも今は違う。「信じたいと思う」「そうか、良かった」ちょうどその時、桐生が注文してくれた料理が運ばれてきた。メインは肉料理だ。前菜も色鮮やかで、見ているだけで美味しいことが分かった。「翼さんって、素敵なお店たくさん知ってるね」「仕事柄、会食に行く機会も多いからね」桐生の言葉を聞いてふと思った。舌の肥えた桐生の口に、私の手料理は合うのだろうか?「あの……」「ん?どうした?口に合わなかった?」「ううん、料理はとっても美味しいのだけど……」桐生は私が次の言葉を発するのを待っててくれた。私は意を決して、桐生に不安をぶつけてみた。「翼さんはいつも一流のご飯食べてるでしょ?」「うん、まぁ」「私の作る料理でいいのかな?って」「その事を心配してたの?」「はい……」すると、桐生はゆっくりと口を開いた。それは私の知らない桐生の一面だった。「僕の家庭は両親共に仕事人間で、子供の頃は、ほとんど一人で食事をしてたんだ。僕は家庭の味を知らずに育った。だから、知英ちゃんが温かいご飯を作ってくれて、それを一緒に食べられたら僕はそれだけで幸せなんだ」「そうだったんだ。うん、分かった。これからは私が翼さんと一緒に食事する。約束する。だからもう寂しくないよ」「……」桐生が無言で私を見つめた。何か間違ったことを言ってしまったのだろうか。子ども扱いをした
last updateÚltima actualización : 2026-07-31
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不穏な影

「一人で帰れる?」「大丈夫。タクシー呼んでくれたでしょ?」「そうだけど」「翼さんは仕事に戻らないと。さっき、電話鳴ってたじゃない」トゥルルルルルル……タイミングよく桐生のスマートフォンが鳴った。「もしもし、芹沢。その案件か……ああ、すぐ戻る」どうやら電話の相手は秘書の芹沢のようだ。桐生は電話を切ると私と向き合った。「知英ちゃん、俺、戻らないと」「うん、仕事頑張って。私は料理作って待ってるから」「ありがとう。楽しみにしてる。マンションに着いたら連絡して」「分かった。行ってらっしゃい」私は会社に戻ろうとしない桐生の背中を優しく押した。私だって、桐生と一緒に居たい。だけど、桐生は会社の副社長だ。そんなことばかりは言っていられない。私は、颯爽と歩く桐生の背中を見送った。______________________マンションの前でタクシーを降りた私は、そのまま近くのスーパーへ向かった。スーパーは歩いて5分くらいの所にあった。そこは、外観もオシャレな高級志向のスーパーだった。私は買い物かごを持ち、店内に入った。珍しい野菜やフルーツが並んでおり、私は目を輝かせた。調味料の種類も豊富だ。じっくり店内を周りたい衝動を抑え、私は必要な食材を次から次へとかごに入れた。買い物を終えた私は、足早にマンションへと歩いた。歩いていると、背後に気配を感じた。怖くなり私は振り返った。しかし、そこには誰も居なかった。やはり、私の気の所為だったのだろうか?いや、違う。誰かにあとをつけられている。私はもう一度振り返った。そこには黒いキャップを被った男が居た。私は恐怖で手を震わせながら、鞄からスマートフォンを取りだし、桐生に電話をかけた。トゥルルルルルル……出て。お願い。私は心で叫んだ。「もしもし」「つけられてる」「どうした?」「誰かにつけられてる」「今、どこにいる?」私の会話を理解した桐生の声色が変わった。「マンションの近くのスーパーの帰り」「近くに酒屋あるだろ?」桐生に言われた酒屋を私は探した。すると、すぐ先にその店はあった。「あった」「そこ入って。オーナーと知り合いだから僕から話すよ」「ありがとう」「怪我はない?」「大丈夫」「良かった……そこで待ってて。すぐ迎えにいく」「でも仕事が……」「今は自分のことだけ考えて。僕のことはいいから
last updateÚltima actualización : 2026-08-01
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壊された日常

「知英ちゃん、本当に怪我はない?」 「大丈夫。ありがとう」 私は桐生の車の助手席に座り、シートベルトを締めようとした。しかし、手が震えて上手くできなかった。 「あれ?なんで……?」 すると桐生が私の手を握り、シートベルトを締めてくれた。 「ごめんなさい」 「知英ちゃんは悪くない。家に帰ろうか?」 「その前に私の家に寄って欲しいのだけど……」 上手く言葉にできないが、胸騒ぎがした。早く家に帰らなくては。私の心が叫んだ。 「……分かった。その変わり、僕も部屋に入っていい?知英ちゃんを一人にさせたくないんだ」 「うん。私も翼さんが居てくれた方が心強いから」 「さっきは僕に連絡してくれてありがとう」 「翼さんのことが、一番最初に頭に浮かんだの。でも仕事中だったよね?迷惑かけてごめんなさい」 「だから、知英ちゃんはもっと自分のことを優先していいんだよ」 「でも……」 「僕の前では遠慮しないで欲しい。知英ちゃんの頼みなら僕は喜んで叶えるから」 「ありがとう」 桐生と話すうちに、手の震えもすっかり治まった。今日、私にとって桐生が、どれほど大きな存在なのか改めて知った。 「それじゃあ、行こうか」 「はい」 「道案内頼める?」 「もちろん」 私の返事を聞いた桐生は、ゆっくりと車を発進させた。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 車を走らせること約15分。桐生の車は、私の自宅付近の交差点に来ていた。しかし、マンションには駐車場がない。そこで私は、近くのコインパーキングに車を停めてもらうことにした。 「駐車場が空いててよかったね」 「はい……」 「知英ちゃん、気分わるい?」 桐生が心配そうな表情を浮かべながら、私の顔を覗き込んだ。 「大丈夫」 「その顔は大丈夫じゃないやつだね」 「そんなことは……」 桐生は何も言わず、私を見つめていた。桐生は決して無理強いしない。けれど、私は桐生の前で自分を誤魔化すことが出来なくなっていた。 「……怖い。何故か分からないけど胸騒ぎがするの」 「うん」 「私ったら、確信もないのに馬鹿だよね」 「そんな事ない。今は用心するに越したことはないよ」 桐生は車を降りると、助手席側にまわり、ドアを開けてくれた。 「足元気をつけて」 「ありがとう」 「僕が傍にいるから」 「う
last updateÚltima actualización : 2026-08-02
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揺らぐ視界

「桜井知英さんですか?」「はい」「少々お話を伺ってもよろしいですか?」現場に駆けつけた警察官が私に問いかけた。私は隣に居る桐生を見た。桐生は私の肩をずっと抱いてくれていた。「はい」「どうやら、金目の物は盗まれていないようです。もしかすると、桜井さん自身を狙ったのかもしれません。何か心当たりがあれば教えていただきたいのですが」「今日の昼過ぎに男につけられました」「その男の特徴は?」「確か、170cmくらいで黒いキャップを被っていました」「そうですか。ご協力ありがとうございます。もし、何か思い出したことがあれば連絡ください」「分かりました」すると、止まっていた震えがまた始まった。今度は震えだけでなく、冷や汗も流れ出した。しかも目眩もする。視界が揺れる。「知英ちゃん!知英ちゃん!!」遠くで私を呼ぶ桐生の声が聞こえた。桐生が心配そうに私を見ていた。早く大丈夫だと伝えなければ。だけど、どうしても身体が動かない。それどころか、視界までぼやけていく。「つばさ……さん……」「知英ちゃん!しっかりして!」私はその場で意識を手放した。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「ん……ここは?」目を覚ますと、知らない天井が視界に入った。私は辺りを見回した。私の腕には点滴が打たれていた。昨日、桐生と自宅へ行き、部屋の惨状をみてからの記憶がない。桐生は何処にいるのだろう。私はスマートフォンを探すため、ベッドから起き上がった。「知英ちゃん!」「翼さん」その時、ミネラルウォーターのペットボトルを持った桐生が病室へ入ってきた。桐生は今にも泣きそうな顔で私を抱き締めた。「良かった……」「翼さん、私、どうしてここに居るの?」「昨日、警察との現場検証の最中に倒れたんだよ。医師は精神的ストレスだと言ってた。だけど、全然目を覚まさないから、僕は……」「心配かけてごめんなさい」「ううん、いいんだ。僕の方こそ知英ちゃんを守れなくてごめん」「そんな事ない。翼さんはいつも私を助けてくれてるよ」私は桐生の頬に流れた涙を指で優しく拭った。私のために、泣いてくれる人がいる幸せを噛み締めた。「あ!マンション。私が倒れたってことは、その後、どうなった?」「それは心配なく。処理したから」「何から何までありがとう」「どういたしまして」私はもう一つ、気になって
last updateÚltima actualización : 2026-08-03
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イケメン御曹司の本性

「翼さん、私なら本当に大丈夫だから。仕事行って?」 「でも、知英ちゃんの事が心配だよ」 「昨日も私のために早く帰ってきてくれたでしょ」 「それはそうだけど……」 「大丈夫。ここには翼さんが雇ってくれたSPの方もいるから」 知英は俺の手を握り、微笑んだ。本当は知英の傍をひとときも離れたくない。しかし、俺にはやらなければならない事がある。 「分かった。行くよ」 「気をつけて。行ってらっしゃい」 「仕事が終わったらまた来るから」 「うん、待ってる」 「僕が来るまで、病室から出ないように」 「うん。約束する」 俺は後ろ髪を引かれながら、目的を果たすために病室をあとにした。 ______________________ 病院の正面玄関に、芹沢の運転する車が待機していた。俺が後部座席に乗り込むと、芹沢はすぐに車を発進させた。 「彼女を襲おうとした奴の情報は?」 「こちらです」 芹沢は俺に封筒を渡した。俺は封筒の中身を出し、書類に一枚ずつ目を通した。 「坂下友華か。予想はしていたが」 「どうやら、桜井様を襲わせようとした男を坂下が金で雇ったようです」 「なるほど」 俺は優一が知英に接触してきたあの日から、優一の身辺調査をしていた。故に、坂下友華が優一の浮気相手であり、知英の元親友であることも把握していた。 「その女、人のものを盗るだけでは足らず、彼女まで傷つけるとは」 俺は怒りのあまり拳を握った。知英の日常を脅かし、知英を傷つけようとした奴らを絶対に許さない。俺を怒らせたことを後悔させてやる。 「その男を連れてこい。二度と彼女には近づかせない」 「承知しました」 俺は知英のためならば、悪にでもなる。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 俺はホテルのスイートルームに来ていた。このホテルは桐生グループが所有している。つまり、この部屋で起こることは、決して外部に漏れない。 「社長、失礼します。連れてきました」 俺の足元に、縄で縛られた男女が転がった。さて、どうやって彼らに苦痛を味わわせようか。 「桐生社長、どうかお許しを……私はこの女に言われてやっただけで、決して、危害を加えるつもりはありませんでした」 「ちょっと!私のせいにしないでよ!」 全く呆れる。この期に及んで、痴話喧嘩か?俺の事を舐めてやがる。俺は
last updateÚltima actualización : 2026-08-04
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イケメン御曹司の独占欲

ホテルの部屋で一人になった俺は、スーツの内ポケットから煙草を取り出した。そして、煙草を一本口に咥え、火をつけた。コンコンコン……「社長、私です。入ってもよろしいでしょうか?」声の主は芹沢だった。「入れ」「坂下友華を警察へ引渡しました。男は手足をへし折ればよろしいですか?」「おいおい、芹沢くん。そんな物騒なことは言うもんじゃないよ」俺は煙草の火を消し、一人掛けのソファーから立ち上がった。そして、カーテンの隙間から外を見下ろした。以前の俺ならば、迷わずに手足をへし折り、相手に痛みと恐怖を植え付け、二度と俺に刃向かえないように力を見せつけていただろう。だが今は、そのような穢れた手で知英を抱き締めたくはない。俺のことを信じて、笑顔を向けてくれる知英を手放したくない。「芹沢、これを」俺は知英を襲おうとした男の情報を芹沢に渡した。これがあれば、男も警察につき出せる。俺はあくまで合法的に二人を追い詰め、始末する。「この情報をいつの間に?」「酒屋の店主だ」「なるほど」芹沢は察したようだ。さすがは俺の秘書なだけある。「男もまぬけだな。八神の店の近くで犯行を行ったんだからな」俺には敵が多い故、命を狙われることもある。酒屋の店主は、腕利きの情報屋だ。以前、雇い主に追われ、死にかけていた八神を助けてから、彼は俺に何かと尽くしてくれている。だからこそ、あの時、知英を八神に託した。八神なら自分を犠牲にしてでも知英を救うという確信が俺にはあった。ブーブー……その時、俺のスマートフォンが震えた。メッセージを確認すると知英からだった。「今からお昼ご飯を食べます。翼さんはお仕事お疲れ様です。忙しくてもちゃんと休憩してくださいね」知英からのメッセージを見た俺は自然と笑みを浮かべた。早く知英に会いたい。「芹沢、戻るぞ」「はい」「できるだけ、仕事を詰め込んでくれ」「承知しました」「彼女が退院する日は一日休みにしてくれ」「スケジュール調整します」「いつもありがとう」「え?」芹沢が明らさまに驚いた顔で俺を見た。「どうした?」「いえ……その、社長にありがとうと言われたのが嬉しくて」「なんだ、そういうことか」「最近の社長は、とても表情が穏やかです」そうだとしたら、知英のお陰だ。知英に出会って、彼女に一目惚れしたあの日から俺の人生は変わった。
last updateÚltima actualización : 2026-08-05
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溺れる心

昼食を食べ終えた私は、鞄からスケッチブックを取り出した。もうすぐ社内コンペの締切だ。何としても、デザインを完成させたい。私はこのジュエリーを贈りたい人のことを頭に思い浮かべた。彼ならゴールドが似合う。派手すぎず、だけど気品を残したシンプルなデザインが彼の魅力を更に引き立てるはずだ。 「そうか!」 私は閃いた。足すのではなく、引くのだと。早速、私は新しい紙にデザインを描き始めた。今まで悩んでいたのが嘘のように、デザインが出来上がっていく。 「できた……!」 我ながら、自分史上、最高傑作ともいえるデザイン案が完成した。これで自信を持ってコンペに挑める。 コンコンコン…… 「はい」 「僕だけど入ってもいい?」 声の主は桐生だった。私は慌ててスケッチブックを布団の中に隠した。 「どうぞ」 「知英ちゃん、ただいま。体調はどう?」 「もうすっかり良くなったよ。ありがとう」 「良かった」 「お医者様が、明日には退院できるって」 「分かった。明日、迎えにくるね」 桐生は私に微笑んだ。だけど、桐生の表情がどことなく疲れているように見えた。私は両手で、桐生の頬に触れた。 「翼さん、眠れてる?」 「まぁ、それなりに」 桐生は嘘が下手だ。今日も早くに仕事を切り上げて、私のお見舞いに来てくれたに違いない。しかし、桐生には社長としての膨大な仕事があるはずだ。寝る間も惜しんで、仕事を片付けているのかもしれない。私は思わず桐生を抱き締めた。 「知英ちゃん?」 「翼さんを充電させて」 「いいよ。いくらでも」 私は桐生の胸に顔を埋めた。桐生の体温を感じ、心音を聞くと安心する。それから匂いも。あれ?いつもの香水の匂いに混ざって、初めて嗅ぐ匂いがする。これはなんだ? 「知英ちゃん、どうかした?」 「ううん、なんでもない」 私は桐生に悟られないようにそっと離れた。 「え!?翼さん、手怪我してる」 私は桐生の右手を見た。手の甲から血が出ている。どこかにぶつけたのだろうか。 「あー、これくらい大したことないよ」 「だめ!ちゃんと手当しないと。薬もらってくる」 「僕がもらってくるから。知英ちゃんはここに居て」 「分かった」 桐生は私を病室から一歩も外に出したくないようだ。こんなにも心配をかけてしまっている事が、申し訳なくて堪らない。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
last updateÚltima actualización : 2026-08-06
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