私はベッドでこの数日間の出来事を振り返った。幸せの絶頂にいた私が、信じていた者たちの裏切りにより、一瞬で絶望の淵に突き落とされたあの日。生きる意味さえ分からなくなり、夜の街を彷徨った。その夜、偶然、桐生と出会った。初対面の私に対して、「恋人のフリをしろ」と無理難題を要求してきた桐生に、初めは嫌悪感すら抱いた。けれど、桐生の人柄に触れるうちに、私は彼を知りたいと思うようになった。愛だの恋だのは、もう懲り懲りだったはずなのに。桐生は私自身を見てくれた。そして、真っ直ぐに想いを伝えてくれた。私はスマートフォンの画像フォルダを開いた。このフォルダには、私と優一の8年間の思い出がつまっている。一番最後に撮った写真は、優一から婚約指輪を受け取った時だった。そこには、幸せそうに笑う私が居た。この時に戻れたのなら……なんて、私は微塵も思わなかった。数年前から始まっていた優一の暴力。あの頃は、私への愛情だと思い込んでいた。だけど今なら分かる。それは支配であって、愛なんかじゃない。私は桐生に出会って目が覚めたのだ。私は躊躇うことなく、優一との写真を一括消去した。私はふと思い立ち、ベッドから起き上がるとテーブルに置いてあるスケッチブックを手に取った。ページを捲ると、優一に見せようとしていた結婚指輪のデザイン案があった。私はそのページをスケッチブックから切り離した。それは、今の私に最も必要の無いものだ。なぜなら、二度と優一の元へは戻らないから。だからこうしよう。決別の意味を込めて、私はスケッチブックを破り捨てた。一連の作業を終えた私は、極度の疲労感に襲われた。知らず知らずのうちに、気を張っていたのかもしれない。私は翌朝のアラームをセットする気力もなく、そのまま深い眠りについた。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄「今、何時!?」私は飛び起きた。そして、枕元に置いてあるスマートフォンの時間を確認した。「6:00か……」私は、そのままベッドから起き上がった。確か、桐生の秘書の芹沢が8時に迎えにくると言っていたはず。私は身支度を素早く済ませ、リビングに向かった。「よし、作ろう」桐生が起きてくる前に、私は朝食を作ることにした。とは言うものの、この家のキッチンには最低限の食材しかない。キッチンのカウンターに置いてある食パンと、冷蔵庫に入っていた食材を使い私はサンドイッ
Última actualización : 2026-07-28 Leer más