เข้าสู่ระบบ「翼さん……/」「嫌だったらやめる」「ううん、嫌じゃない…///」桐生は自宅に入ると、玄関の壁に私を追い詰めた。桐生の吐息を感じながら、私は目を閉じた。すると、桐生は私の唇を貪るように何度もキスを繰り返した。いつも優しい桐生が、こんなにも激しく私を求めてくれる事が嬉しかった。「翼さん、ここじゃ……やだ……」「うん」桐生は私をいとも簡単に抱きかかえて、寝室へと運んだ。いつも、桐生が寝ているベッドはとても広々としていた。そこに、私はそっと寝かされた。「知英ちゃん、身体は平気?」「平気」「辛かったらやめるから」「我慢しないでって言った//」「知英ちゃん。あなたって人は……」「なに?」「何も知らないって顔して、いつも僕を煽ってくる」「私、そんなつもりは……んっ…///」桐生が私の口を無理やり塞いだ。すると、桐生の舌が私の口内に侵入した。慣れない感触に私の身体は痺れを感じた。「自分が今、どんな顔してるか分かる?」「え……?」私はキスの余韻で、頭がぼぉーとしていた。そんな私の頬に桐生は優しく触れた。「俺は君の前ではいい人で居たいんだ」聞き間違えではない。今、桐生は“俺”と言った。私の知らない桐生が目の前にいる。もっと桐生を知りたい。私は自ら、桐生のネクタイを引っ張りキスをした。「翼さん……」「君が望んだことだ」「はい」桐生はネクタイを解き、私の両腕を縛った。自由を奪われた私は、桐生のされるがままだ。桐生の指が私の身体をなぞった。桐生の視線が恐ろしい程に色っぽかった。「俺が怖い?」「ううん、怖くない」桐生が私の首筋に吸い付いた。甘い痛みが全身に走った。「ごめん、俺はもういい人でいられない」桐生が苦しそうに呟いた。どんな桐生であっても私を救ってくれた人には変わりない。私は桐生だから好きなのだ。桐生が与えてくれるものならば、全て受け止める覚悟はできている。「翼さんが好き。叫びたいくらい」私は桐生に微笑んだ。私の気持ちは桐生に伝わっただろうか。桐生はしばらく私を見つめてこう言った。「もう二度と傷つけさせない」「うん」「だから俺の傍を離れないで」私は頷いた。離れるわけがない。桐生が居ない人生なんて私には考えられない。桐生は私の腕を縛っていたネクタイを解いた。両腕にはうっすらと痕がついていた。桐生はその痕に丁寧に舌を
「よし、行こうか」「はい」桐生は私がシートベルトを締めたことを確認すると、ゆっくりアクセルを踏んだ。桐生の愛車は私でも知っている高級車だ。シートもふかふかで座り心地もいい。私は運転している桐生の横顔を覗きみた。言うまでもないが、桐生の横顔は彫刻のように美しい。「知英ちゃん、どうかした?」「ううん、なんでもない」桐生の横顔に見惚れていたなんて、恥ずかしくて言えない。すると、信号が赤になり、桐生が静かにブレーキを踏んだ。「僕には我慢しないで何でも話してね」「ありがとう。でも本当になんでもないの」「それなら良かった」信号が青になり、再び、桐生は前を向いた。「もう少しで八神さんの店に着くよ」私は車の窓から外を見た。あの日、もし、桐生と電話が繋がらなかったら。もし、八神の店が近くになかったら。私はどうなっていたのだろう。私の脳裏に、黒いキャップを被った男の姿が蘇った。はっきり顔を見たわけではない。しかし、その男の悪意は、確かに私に向いていた。私の身体は震え始めた。「知英ちゃん?」「翼さん、たすけて」私の異変に気づいた桐生は、近くのコンビニに車を停めた。「ごめんなさい」「大丈夫。水買ってくるね。すぐ戻るから」「うん」桐生が走ってコンビニに入っていく姿を、私はずっと目で追った。早く震えを鎮めたい。そう思うのに、震えは鎮まるどころか、酷くなる一方だ。それだけではなく、息まで苦しくなってきた。桐生に助けを求めたくても、苦しくて声が出ない。「知英ちゃん!!」桐生が慌てて車のドアを開けた。「知英ちゃん、ゆっくり息吸って」私は桐生に言われた通りに、息を吸った。苦しい。呼吸もまともにできないなんて、私はどうしてしまったのだろう。桐生は私のシートベルトを外した。そして、背中を優しくさすってくれた。「大丈夫だよ。僕が居る」「うん」桐生のお陰で、私は少しずつ落ち着きを取り戻した。全身の震えもいつの間にか止まっていた。「翼さん、ありがとう」「水飲む?」「飲む。喉乾いた」桐生はペットボトルのキャップを外し、ミネラルウォーターを私に手渡した。私は冷たいミネラルウォーターをごくごくと身体に流し込んだ。「知英ちゃん、ゆっくり飲んで」「うん」今日も桐生に迷惑をかけてしまった。私は俯いた。「今日は家に帰ろうか」「ううん、私のことなら大丈夫だ
翌朝、朝食を食べ終えた私は、桐生が迎えに来るまで病室で待つことにした。コンコンコン……「知英ちゃん、入っていい?」「どうぞ」病室に入ってきた桐生は、いつものスーツ姿ではなく、ラフな格好をしていた。初めてみる桐生の私服姿に私は思わず見惚れた。しかし、今日は平日だ。仕事はどうしたのだろうか?私は桐生に聞いてみることにした。「翼さん、仕事は?」「今日は休み。だから、一日中、知英ちゃんと一緒に居られるよ」私は桐生の顔を覗きみた。笑ってはいるけれど、目の下に薄っすらとクマがあった。桐生は今日、仕事を休むために、どれだけの仕事をこなしたのだろう。だが、桐生は私に疲れていることを気づかれたくないはずだ。私は心配する気持ちをぐっと飲み込んだ。「嬉しい」「行きたいところある?」「翼さんの家でゆっくりしたいな。やりたいこともあるから」「やりたいこと?」「うん。翼さんに手料理を振る舞えてないでしょ。今夜、一緒に食事がしたいなと思って」私が倒れなければ、その日、桐生に手料理を振る舞うはずだった。桐生に、食事の時間は決して寂しい時間ではないと知って欲しかった。桐生の傍にはいつでも私が居ると伝えたかった。「ありがとう、知英ちゃん」「どういたしまして。でも、あの日、食材をだめにしてしまって、ごめんなさい」「謝らないで。自分の身を守ることが一番大切なんだから。知英ちゃんが無事でよかった」桐生は私に微笑んだ。そこで、私はもうひとつ気になっていることを桐生に話した。「出来ればでいいのだけど、今日、八神さんのお店に行ける?」「うん。行けるよ」「あの日はちゃんとお礼を言えなかったから」「分かった。彼の店にも寄ろう。あとはスーパーにも寄る?」「うん。よろしくお願いします」「よし、決まり。退院の手続きしてくるから知英ちゃんはここで待ってて」病室を出ていく桐生の腕を、私は咄嗟に掴んだ。何から何まで桐生に頼りすぎだ。せめて、入院費は自分で払おう。「知英ちゃん、どうしたの?」「あの……」桐生は私が何を言おうとしているのか察したようだった。「そういう時は、ありがとうでいいんだよ」「……ありがとう」「そう。素直でよろしい」「翼さんは私を甘やかしすぎだよ」「そうかな?まだまだでしょ?」「え……?」「毎日送り迎えして、毎晩、ドライヤーして、寝る前はマッサ
「知英ちゃん、顔真っ赤だよ」「翼さんのせいだから//」「これでも我慢してるのに」すると桐生が私を優しく抱き締めた。「知英ちゃんは僕が守るよ」「ありがとう」こんなにも、誰かに愛されたことは初めてだ。桐生は私に初めてを沢山くれる。桐生と出会わなければ、あの日、私はどうしていただろう。信じていた人に裏切られた日、私は雨に打たれながら、生きる気力さえ失っていた。私は親の顔を知らずに育った。物心がついた頃には、既に施設で暮らしていた。だから、幸せな花嫁になることが小さい頃からの私の夢だった。私は幸せな家族を作りたかった。だけど、その夢は脆くも崩れ去った。恋人になった以上、桐生に私の生い立ちを話さなければならない。桐生のような立派な家柄の人と、私が釣り合うとは思っていない。それでも桐生が私を受け入れてくれるのなら、私はもう一度、人を信じられる気がする。「あのね、翼さんに話さないといけないことがあって……」「なに?」「私、両親の顔知らないんだ。施設で育ったから」「うん」桐生の反応が予想と違った。私の話を聞いても全く驚く様子がなかった。 「知ってた」 「え……?」「ごめん。知英ちゃんのこと調べた」「どうして?」「僕には敵が多いんだ。好きになった人でも、僕の敵じゃないか調べないと近づけない。そういう世界で生きてるんだ」「それでどうだった?」「知英ちゃんは素敵な女性だってことが分かった」桐生は私に微笑んだ。どうして、桐生はいつも私が欲しい言葉をくれるのだろう。不覚にも涙がにじんでしまった。「知英ちゃん、泣かないで」「翼さんが泣かせるから」桐生は私が流した涙を優しく指で拭った。こんな風に優しくされたら、私は桐生から離れられなくなってしまう。「僕は知英ちゃんだからいいんだ。これまで大変なことも沢山あったと思う。でも、これからは幸せなことしか起きないから。だから僕と一緒に居てほしい」桐生が私をまっすぐ見つめた。運命があるとするならば、それは桐生との出会いだったのかもしれない。「ありがとう。私、翼さんに釣り合う女性になれるように頑張るから」「今でも十分、素敵なのに?」「翼さんがすごく格好いいから/」「ん?なに?」「聞こえてたでしょ/」「ううん。だからもう一回言って?」桐生はずるい。そんな顔されたら断れない。私は恥ずかし
昼食を食べ終えた私は、鞄からスケッチブックを取り出した。もうすぐ社内コンペの締切だ。何としても、デザインを完成させたい。私はこのジュエリーを贈りたい人のことを頭に思い浮かべた。彼ならゴールドが似合う。派手すぎず、だけど気品を残したシンプルなデザインが彼の魅力を更に引き立てるはずだ。「そうか!」私は閃いた。足すのではなく、引くのだと。早速、私は新しい紙にデザインを描き始めた。今まで悩んでいたのが嘘のように、デザインが出来上がっていく。「できた……!」我ながら、自分史上、最高傑作ともいえるデザイン案が完成した。これで自信を持ってコンペに挑める。コンコンコン……「はい」「僕だけど入ってもいい?」声の主は桐生だった。私は慌ててスケッチブックを布団の中に隠した。「どうぞ」「知英ちゃん、ただいま。体調はどう?」「もうすっかり良くなったよ。ありがとう」「良かった」「お医者様が、明日には退院できるって」「分かった。明日、迎えにくるね」桐生は私に微笑んだ。だけど、桐生の表情がどことなく疲れているように見えた。私は両手で、桐生の頬に触れた。「翼さん、眠れてる?」「まぁ、それなりに」桐生は嘘が下手だ。今日も早くに仕事を切り上げて、私のお見舞いに来てくれたに違いない。しかし、桐生には社長としての膨大な仕事があるはずだ。寝る間も惜しんで、仕事を片付けているのかもしれない。私は思わず桐生を抱き締めた。「知英ちゃん?」「翼さんを充電させて」「いいよ。いくらでも」私は桐生の胸に顔を埋めた。桐生の体温を感じ、心音を聞くと安心する。それから匂いも。あれ?いつもの香水の匂いに混ざって、初めて嗅ぐ匂いがする。これはなんだ?「知英ちゃん、どうかした?」「ううん、なんでもない」私は桐生に悟られないようにそっと離れた。「え!?翼さん、手怪我してる」私は桐生の右手を見た。手の甲から血が出ている。どこかにぶつけたのだろうか。「あー、これくらい大したことないよ」「だめ!ちゃんと手当しないと。薬もらってくる」「僕がもらってくるから。知英ちゃんはここに居て」「分かった」桐生は私を病室から一歩も外に出したくないようだ。こんなにも心配をかけてしまっている事が、申し訳なくて堪らない。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄数分後、桐生が病室に戻ってきた。
ホテルの部屋で一人になった俺は、スーツの内ポケットから煙草を取り出した。そして、煙草を一本口に咥え、火をつけた。コンコンコン……「社長、私です。入ってもよろしいでしょうか?」声の主は芹沢だった。「入れ」「坂下友華を警察へ引渡しました。男は手足をへし折ればよろしいですか?」「おいおい、芹沢くん。そんな物騒なことは言うもんじゃないよ」俺は煙草の火を消し、一人掛けのソファーから立ち上がった。そして、カーテンの隙間から外を見下ろした。以前の俺ならば、迷わずに手足をへし折り、相手に痛みと恐怖を植え付け、二度と俺に刃向かえないように力を見せつけていただろう。だが今は、そのような穢れた手で知英を抱き締めたくはない。俺のことを信じて、笑顔を向けてくれる知英を手放したくない。「芹沢、これを」俺は知英を襲おうとした男の情報を芹沢に渡した。これがあれば、男も警察につき出せる。俺はあくまで合法的に二人を追い詰め、始末する。「この情報をいつの間に?」「酒屋の店主だ」「なるほど」芹沢は察したようだ。さすがは俺の秘書なだけある。「男もまぬけだな。八神の店の近くで犯行を行ったんだからな」俺には敵が多い故、命を狙われることもある。酒屋の店主は、腕利きの情報屋だ。以前、雇い主に追われ、死にかけていた八神を助けてから、彼は俺に何かと尽くしてくれている。だからこそ、あの時、知英を八神に託した。八神なら自分を犠牲にしてでも知英を救うという確信が俺にはあった。ブーブー……その時、俺のスマートフォンが震えた。メッセージを確認すると知英からだった。「今からお昼ご飯を食べます。翼さんはお仕事お疲れ様です。忙しくてもちゃんと休憩してくださいね」知英からのメッセージを見た俺は自然と笑みを浮かべた。早く知英に会いたい。「芹沢、戻るぞ」「はい」「できるだけ、仕事を詰め込んでくれ」「承知しました」「彼女が退院する日は一日休みにしてくれ」「スケジュール調整します」「いつもありがとう」「え?」芹沢が明らさまに驚いた顔で俺を見た。「どうした?」「いえ……その、社長にありがとうと言われたのが嬉しくて」「なんだ、そういうことか」「最近の社長は、とても表情が穏やかです」そうだとしたら、知英のお陰だ。知英に出会って、彼女に一目惚れしたあの日から俺の人生は変わった。